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ついサラリと受け入れてしまったが、この年配の男性は、魔王の息子・ワーレンに父上と呼ばれた。


つまりこの男は魔王ということになる。

それなりに貫禄はあるが魔王、というにはその名のとおり人ならざるもので人を力で支配する魔物のような禍々しさはない。


一見してみても人間と変わりないので、やはり魔王という伝説的な存在を意味したものではないように見える。


もう役職名や(くらい)の名称のようにすら思えてきた。


「父が言いたい事はわかるな?」

魔王はワーレンを険しい表情で威圧する。

流石の彼も、父には敵わないのか、目を反らす。


「いえ…」

ようやく返答できたようだがあまり言葉を返せないようだ。


「この際だ無理に魔王を告げなどとは言わん…そもそもお前には魔王の素質がないようだからな」


魔王の素質とはどんなものだろう。

魔法使いや魔女のような力なのか、それとも魔物らしく強靭な体力があることか。


「お話の最中失礼致します父上」

リングドースが横から話を遮った。


「レイツー兄上の所在は掴まれておいでなのでしょう?」

先ほどワーレンから教えられた次男の件、聞くだけなら後でもいい筈で割り込む必要はないと思う―――――


「どこでそんな話を…。」

もしや兄であるワーレンを心配してなのだろうか。


「優秀なレイツー兄上がいるのです。

ワーレン兄上が継げなくとも僕に“魔王を告げ”など、申し上げられませんでしょう?」

そんなにまで魔王はなりたくない役職なのか、リングドースが必死に申し開きをしている。


「ふむ、確かにそうなる。されば後継ぎの話は今すべきではないな」

父や弟に信頼されているのか、都合よく扱われているのか、当の次男はここにはいない。

知らぬが仏とも言うが、これは知らないほうがいいだろう。

ただ知らぬ間に後継ぎにされる次男は気の毒とも言える。


「無駄な話をしてしまったな…ワーレン」

つかの間はワーレンから注意が逸れてはいたが、やはり簡単には場を切り抜けられないようだ。


「平民の人間ならまだしも、名家のご令嬢を勝手に連れ出すとは、何を考えているんだ」


私がついてきたせいで彼が叱られている。

それを見た私は思わずワーレンの前に飛び出した。

普段の自分なら損をするような利己的でない事はしなかったのに。


唖然とした魔王と向かい合う。


「恐れながら申し上げます魔王様。」

私は臆すことなく淡々と話してドレスの裾を持ち上げ挨拶する。


「全ての罪の一因は私にあります彼をワーレン様をお責めになるのはお止めください」

相手は人から恐れられる魔王。

本来ならこんな事を言えるような相手ではないというのに、私はどうしてしまったのだろう。

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