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こんな夜更けに出歩いていた彼はどんな姿をしているのだろうと考えてみる。

父より少し若いくらいだろうか、それとも恐れるものなどなにもない大男か―――

夜が明けると、ようやく木の隙間から光が差して、隣にいる男性の姿もはっきりと見えるようになった。


「意外と若い…」

整った目鼻立ちに肩まで着かない程度の短めの髪、落ち着いた雰囲気の黒っぽいコートを着ている。


彼の姿が暗闇でいたときの想像とは違ったので、軽く失礼なことを口走ってしまう。

慌てて口を塞ぐも時既に遅かったようで、彼はこちらと目を合わせない。


「すみません。」

姿を見て落胆したと思わせてしまったのだろうと思い、その事を謝った。


「いや、気にはしていない」

それにしても彼はどんな理由があって暗い森を一人で歩いていたのだろう。


「貴方はなぜこの森に?」

私が出歩いていたことを問題視するならば彼も同様の事をしていたことを黙視は出来ない。


「俺も屋敷を逃げてきた」

大の男が何から逃げたというのか、この冷静さから考えると強盗でもなさそうだ。


「魔王という存在は知っているか?」

彼の問う存在を知らないわけではなかった。

魔王とは人ならざるもので変わり者、森の奥深くに住んでいると聞く。

今その話をしたのは、魔王と彼が関係あるからだろうか、いやそうとしか考えられないことだ。


「貴方は魔王と関係する何かで逃げて来たのですか」

これは問いかけ、というよりも確認であった。


「ああ、父に魔王の座を譲られそうになってな」

父親が魔王、つまり彼は魔王の息子というわけなのだが、それほど驚きはなかった。


それにしても魔王にも世襲制があるなんて。

私は勝手に魔王は弱肉強食であると想像していた。


物語の魔王と、現実の魔王は根本が違うのかもしれない。


「夜が開けた事だ俺は、一旦様子を見てくる」

せっかく逃げてきたのに戻ってしまう、それはなんだかまずい気がする。

それに私が彼の立場なら二度と顔を出せない。


彼をこのまま行かせてよいものか、しかし私が行った所で状況は変わらないだろう。


「お前は帰らないのか」

誕生日が終わっていないから帰らないのではなく、道に迷って帰れないのだ。


「帰らないのか帰れないのか、俺には判らない。送る事を拒まれたとは言え、ここに一人で置いていくわけにもいかない…」

確かにここに残ると、また夜になった時に再び危険になる。

一度断っておいて送ってほしいと頼むのは道理に反する。

残る、帰ることができないのならば、私も彼についていく。

その方がきっと安全だろう。

だがしかし彼の父は、魔王と呼ばれるほどの男だ

警戒したほうがいいのは確かだろう。


「いない様だな」

よかった魔王はここにいないのか。


「誰が?」

背後から声をかけられ、驚きのあまり飛び退いた私。

そこに平然と立っていたのは彼と似た顔立ちの金髪の青年である。

つまり兄弟か親戚なのだろう。


「俺の二番目の弟だ」

「そうですか」

ということは彼は長男、で三男の他に次男もいるということか。


「ところで兄さんは、その人とどこに行っていたんだ…」

彼はどう答えるのだろう―――――。

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