入学式・・・その後
なんだかんだ言って他の作品も続かなかったので、完結するまで出来るかわかりません。気まぐれで投稿するつもりですが良かったら見てやってください。
ここの中学校は創立十年のとても新しい学校だ。校舎も綺麗でエレベーターまである。不自由ない学校である。
「・・・いや、不自由がないってのは違うかもなぁ」
俺の声は誰もいない教室にむなしく消えていく。なぜ誰もいないかって?
それは俺が、この笠井 賢吾《かさい けんご》が会議室登校をしているからだ。こんな広く、長机が並んでいる部屋に一人だ。
しばらく引きこもっていた俺は人と接することが下手になっていた。もしかしたらできない、と言った方が妥当かもしれない。
他に考えられる理由とすれば、俺は山のほうに澄んでいて少人数の小学校で生活していて、大人数になれていなかったか。
なんにせよ、世に言うコミュ障と呼ばれるやつだろうか・・・。
実際やらかしてしまってもいる。
◇◆◇◆◇◆
さかのぼること一週間、中学校の入学式の後の教室。当然机が二席ずつ並んでいるわけで、隣に座ってるのは女子だったというわけだ・・・。
そうして隣なった女子がこう言った。
「隣の席である時間は少しかもしれないけど、よろしくね!!」
満面の笑みである。天使かこやつは・・・と思ってしまった。で、俺が返した言葉は・・・
「え!? あぅ、えぇ・・・ッ」
そして思いっきりゲホゲホとむせてしまった。ずれた眼鏡をクイッとなおした。なんてこったい、これほど女子に免疫がなかったとは・・・。
後から知ったことなのだが、学年でかなり人気のある女子らしい。しかし、俺にはラブコメ展開なんて期待するほどの余裕は無かった。
とにかく数人の友達はなんとかできたがその中に女子がいないことは仕方ない。
その日は友達と帰ることも無く、一人で家に帰ったのだった。
◆◇◆◇◆◇
時間は進み今にいたる。授業にはたまに出ているが、緊張しているのか・・・それか大人数が嫌いなのか、すぐに体調が悪くなってトイレか保健室行きだ。
ならばいっそのこと、ということで会議室で勝手に勉強していることが多い。やっぱり一人のほうが落ち着く。
ふと時計を見ると四時限目の終わり二分前だった。次は昼食の時間。教室で食べてもいいが、やはり会議室が落ち着く。
チャイムの鳴る前にせっせと勉強道具をまとめると机の端におしやった。ジジッっと鞄を開け、弁当をとりだす。
「さすがに手だけは洗っとくかなぁ」
人になるべく会いたくない俺は、チャイムのなる前に手を洗おうとトイレへむかった。
ここまでは人に出会ってはいない。さぁ手を洗ってミッションコンプリートだ、と鏡に映る自分を見てニヤリと笑った。
ガチャン・・・ギィィ
まさか!?と思ったときには目の前に水の滴る何者かの手が・・・
「冷てぇ!!! やっぱりおまえか・・・松田《まつだ》。便所でサボりかよ」
顔についた水滴を拭きとる。眼鏡へのダメージが大きかったか・・・眼鏡拭き持ってきてねぇよ。
「会議室で完全に自主勉強してるやつに言われたくねぇよん」
こいつの名前は松田 秀秋《まつだ ひであき》小学時代からの友達だ。家も近くで、引きこもってる間ずっと連絡便を届けてくれていた。
「勉強してるだけいいじゃねぇかよ。俺はずっと便所にいたらどうにかなりそうだ」
「俺はどうにもならないって! つか、体調いいなら教室こいよなぁ~。お隣のお姫さまがお待ちだぜ?」
松田はにんまりと笑ってお腹をつついてきた。うぜぇこいつ・・・
「お姫様言うな、まだ会話んなったこともねぇんだから・・・お前だってわかってるだろうに」
「そりゃそうだけど・・・入学そうそう隣に人がいないって寂しいと思うぜ?」
わかってはいるけれども実際言われるとツライ。
「努力はするよ・・・」
ハンカチを取り出し手の水分を取りながらトイレをでた。いつチャイムがなったのか、廊下は人があふれかえっていた。
一刻も早く会議室へ避難せねば!! 廊下をダーッと走り会議室に到着。
オアシスを見つけたように笑顔で扉をガララッっと開けた。
瞬間!!!!!
目にはいったのは窓の外を見る、隣の天・・・いや、女子。こっちに気づいた彼女はこちらに向き直りニコッと微笑んだ。
汗が噴き出してして固まってしまった。次にとった行動は。
ぴしゃりと扉を閉めるしかなかった。
「マジかよ・・・ラブコメ的展開は期待していたが、それは以前の考えであってぇ・・・今の俺には非常に危険な状況なのだよ!!!!!!」
軽く息を切らしながら扉の前に立ち尽くした。
いかがだったでしょうか? すこし自分と重ねてる部分がありますが、さすがに現実でラブコメ展開なんてありませんね(笑) 次回も見ていただけると嬉しいです。それでは・・・。