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理知の魔書13

「認めて貰う為に、何かするんでしょうか?」

「うぅん、それは本によるかしらぁ。簡単な試験をするかもしれないしぃ、超難題をふっかけられちゃうかもしれないし…私にはちょっと分からないわねぇ~」

 ヒタカはサキトを困惑しながら見下ろす。目的の本を手にする為に協力したいが、魔法に関しては完全に素人なので手伝う事が困難かもしれない。言った本人がどうにかできればいいのだが、シラの話を聞く限りでは難しそうだ。

「とりあえず行ってみる事にする。地図とかあったら教えて!」

 ダメで元々だ、とその小さな胸の中でサキトは自身を奮い立たせる。困ったなぁと天井を仰ぎ、腕組みをしていたヒタカの尻を軽くばしっと叩いた。及び腰になっていたのがバレたのだろうかと姿勢を正す。

「このお店を出てぇ、左側の方にちょっと真っ直ぐ。クレイスモルドカフェっていうお店があってぇ、そのお店の横に小さい小道があるのぉ。そこに入って、道なりに進むと古い看板があるから分かると思うわぁ。ちなみにそのお店、地下にあるから気を付けてね」

 詳しい道筋を教えてくれた事で、あちこち探し回らずに済みそうだ。ヒタカはホッとして「ありがとうございます!」と頭を下げる。サキトはヒタカの制服の端を引っ張り、行ってみようよ!と促す。シラはもう行っちゃうのぉ?と寂しげだ。本人的には、サキトをもうちょっと間近で眺めてみたいのだろう。滅多に見ない人種な上に、少年らしさがほとんど無く、同性にしか見えない為にもっと絡んでみたいと言いたげだ。

 だが彼は首を振ってごめんねと詫びた。

「詳しく教えてくれてありがと。残念だけど僕、お外に出る時間が限られちゃってるんだ…あ、そうだ。クロスレイ、ここで瓶売ってないのかな?」

 ヒタカの買い物を思い出した。彼の故郷から送られてきたピクルス用の瓶も買わなければならない。その言葉に、シラは「あるわよぉ」と微笑んだ。ヒタカが中瓶サイズを頼むと、待っててねぇと相変わらずの間延び口調で店の奥へと引っ込んでいく。

 シラの店に行くと、いろいろ手間が省けて助かる。だが本当に狭すぎて、気温が暑くなってくると更に窮屈になるだろう。待っている間にも客の往来が激しくて、カップル連れ男にまで止まってんじゃねぇよと苦情を言われる位だ。巨体が人の迷惑になってしまうとは、とヒタカはがっかりして溜息をつきたくなる。そもそも、この店の配置が窮屈に出来ているのがいけないのだ。そう思っていても仕方がない。

 別に好きで止まってる訳じゃないけど!と強気なサキトが言い返すが、狭い状況で身動きもまともにとれず舌打ちで返されて終わった。幸い、連れの少女がやめなよと押し留めてくれたのも助かる。

 サキトと同行すると、一度はこんなトラブルに巻き込まれてしまうのだろうか。そう思うと、先行きが不安になってきた。

「お待たせぇ。ガラスの中瓶ね、一つで良かったかしらぁ?」

「あ!はい!ありがとうございます、助かりました。お代はいくらでしょうか?」

 代金を支払っている間、シラは割れないようにきっちりと包装して袋に入れていた。これでサキト向けにもピクルスを分ける事が出来る。頑丈に包装した瓶を受け取ると、ヒタカは深々と頭を下げた。一つ目の目的も終わった所で、今度は本来の目的を達成しにいかなければ。

 また来てよねぇ、と手を振るシラの店をようやく脱出し、二人は教わった通りに左に爪先を向けて進みだした。購入した瓶を片手に、ヒタカはサキトに良かったですねぇと悠長な口調で言う。試しに聞いてみて良かったと安堵していた。

「落ち着かないお店だったねぇ。でもお陰で早く見つかりそうだよ」

「どちらかというと、若い女の子向けのお店みたいで…さすがに、男が入るにはちょっと勇気が入ります。通路もちょっと手狭でしたから」

 街の中で物を探し回るのも一苦労だ。サキトの体力の低下も心配だったが、意外にけろりとしているのでそんなに問題にならないだろう。彼の手を迷子にならぬようにしっかりと繋ぐと、ヒタカは主に向けて「参りましょう」と促した。


 指示されたカフェの横にあった小さい道に入り込むと、穴場的な店舗が立ち並んでいた。しかし同時に、人気ががくんと少なくなったせいで身なりが決していいとは言えない人間の姿もあちこちに点在していた。腕っぷしの強そうな大きな男や、全身刺青をした風体のごろつきは、道を進んで行く二人を脅かさんばかりにじろじろと注目してくる。

 あぁ…睨みをきかせるってこういう感じかなぁ。

 目付きが怖い男達の前を通過する時に、縮こまるような気持ちになった。

 ただでさえサキトの服や、護衛剣士である自分は街中では目立ってしまう立派な素材で作られた物で、城からやってきたとなれば格好のカツアゲの対象になるだろう。やはり誰かもう一人来て貰った方が良かったかなぁ…とヒタカは弱気になってしまう。

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