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『漢過ぎる男』第二王子フランドル2

 気絶したイルマリネをアーダルヴェルトに任せ、サキトの顔を見るべくフランドルはヒタカを連れて詰所を出る。結局お土産のカマキリの蛹は外へ放す事にした。

「ちゃんとお土産を買えば良かったなー」

「は…はあ…」

 二人の兄王子は、末っ子のサキトを猫可愛がりしていた。あのように、愛らしさの化身のような姿ならばそんな風になるのも分かる気がする。

 そんなサキトに対して、邪な考えを起こしたと知られたら激怒されるに違いない。ヒタカはぶるぶると頭を振り、考え方を振り払おうとした。

「サキトはお前に良くしてくれるか?」

「えっ?」

「甘やかし放題だから我儘言うんじゃないかって思ってなあ。たまには怒ってやらんと、とは思うんだけど如何せんあの通り可愛くて可愛くて」

 甘やかし放題だと分かっているくせに『可愛くて怒れない』という謎の矛盾。これでは逆に我儘が加速してしまうのではないか。そう思ったが、言うのは憚られてしまう。

 内輪ならば「良くないよ」と言わなければならないだろう。

 だが、相手は同じ護衛剣士であるがシャンクレイスの王子だ。平民風情の下級剣士があれこれと言える訳がない。

「み…魅力的だと思います」

 ヒタカの言葉を受け、フランドルは蕩けそうな顔をする。

「そーだろー?年が離れてるから余計にな!」

 無難な言葉を探して返事をしたが、却って話を増長させてしまった。

「やっぱりお土産を持ってくりゃ良かった。バッファローは獲れなかったしなあ」

 考え込むが、バッファローはさすがのサキトもいらないのではないかと思った。フランドルは本気で悩んでいるようだ。まるで恋人へプレゼントするかのように。

 悩みながらサキトの部屋の前に辿り着く。お土産は次回かなと自己解決し、フランドルは扉をノックした。

「サキト!俺だ、居るか?」

 こうして見れば普通の兄弟にありがちな風景だ。間を開けて、扉が静かに開かれると、兄よりも小さな少年が姿を見せた。

「フランドル兄様」

「サキトー!!俺の可愛いサキト!元気にしてたか、ん?」

 目の前にサキトが出現するなり、フランドルは彼を抱き上げて頬擦りをする。その溺愛っぷりに、ヒタカは目も当てられなかった。

 当のサキトはそれに慣れているらしく、「兄様、落ち着いて」と宥める。年相応の、無邪気な微笑みをフランドルに向けながら、日焼けした額を撫でた。

「ご無事だったんだね、兄様。良かった。兄様が無事に城に戻れるように、毎日お祈りしてたんだよ」

「俺の為にか!やっぱりバッファローを土産にすりゃ良かったな!残念な事に捕まえられなかったんだよ。次は立派な物を持ってきてやるぞ!」

 何故バッファローに拘るのだろう。余程捕まえたかったのだろうか。それに対し、にこにこしながらサキトは「僕は兄様がご無事ならそれでいいんだよ」と優等生ばりの笑顔を見せた。

 大輪の花のように微笑む弟の顔を見て満足したのだろう。フランドルは彼を降ろすと、「よし!」と決意したように声を出す。

「可愛いお前の為に、何かいいものをプレゼントしてやる!」

「へっ!?」

 話を聞いていたヒタカは、フランドルの言葉に目を丸くした。

 サキトはにっこりしながら、「わあ、僕の為に?」とぽんっと両手を叩く。

「嬉しいなぁ。兄様、今ね、ちょうどペーパーナイフを壊しちゃったの。宝石が入った、銀色の綺麗な蝶がモチーフのデザインのが欲しいなぁ…」

「!…よしよし、分かった!石の入った、銀の蝶のデザインだな!俺に任せろ、ちゃんとお前に届けてやる!」

「本当!?ありがとう兄様!楽しみだなあ!」

 …凄まじい甘やかしっぷり。

 ヒタカはぽかんと口を開けながら、その会話をただ聞いていた。フランドルはサキトに待ってろよ、と彼の頭を撫でると意気揚々と踵を返し去っていった。

 残されたヒタカは放心する。嵐のような方だ、と思った。

 サキトは「うふふ」と笑うと、ヒタカを見上げた。

「何してるの、クロスレイ。さ、入って」

「はっ…はい!!」

 勧められるがまま、サキトの私室へ戻るヒタカ。

「兄様ったら相変わらずなんだから。ね、今回の獲物を見たんでしょ?何だったの?」

「えっ…ああ、巨大な蛇でした」

 不意に蛇を見て震え上がり、すぐに距離を置いたイルマリネを思い出した。彼は大丈夫なのだろうか。

「じゃあ国立動物園行きだね。そのうち、兄様のコレクションで一つのコーナーが出来そうだよ」

 その慣れたような言い方がおかしい事に、サキトは気付いてないようだ。普通の人間ならば変だと思いかねないのに。

「ペーパーナイフでしたら、俺が探して買ってきても良かったのですが、いいんですか?」

 プレゼントにペーパーナイフを頼むとは、随分ささやかだと思う。しかも、すぐに用意できそうな簡単な品だ。使用人に命じてもいいような気がする。

 ヒタカの質問に、サキトは馬鹿だねと大人びた顔をしながら呆れた。

「フランドル兄様には具体的に言わないと、変なものを持ってくるからだよ。破壊的にプレゼントのセンスが無いんだから。バッファローとか貰っても困るでしょ?だから無難なペーパーナイフを頼んだの。ちょうど壊れたしね」

 やはりバッファローはダメらしい。

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