日常会話
前の一話とこの話はギャグパート的な要素が強いです。
そんなこんなで第五話です。
憎たらしいほどのギャルゲ主人公補正かかってますが、そんな彼の歪んだ日常も段々と崩壊の予兆が見え始めてきました。
俺⇒先輩 TEL
トゥルルルトゥルルル……
少ししてから電話がつながった。
「はい、もしもし千条奏です、どちら様ですか?」
「もしもし先輩、俺ですよ」
「……? オレオレ詐欺の人かな? じゃなかったら掛け間違えですよ~」
「ディスプレイ見ろや、コラ!」
相変わらずふざけた人だった。まあ、そこを含めて可愛いのだが。
「冗談! わかってるよ、零志君が放課後に用事だなんて珍しいね。
おねいさんが何でも相談に乗っちゃうよ!!」
なんか急に根拠のない自信を提示されてしまった……。
「あの……実はですね……」
「フムフム……」
言いにくいが意を決して言葉にする。
「今晩、家に泊めてください!!」
「はにゃぁ!?」
なんか今、電話の向こうでものすごい衝撃音がしたのだが……。
「センパ~イ、大丈夫ですか~? 何かが崩れる音がしましたけど」
「……きっ、急にどうしたのかな!?」
必死に年上の威厳を保とうとしている先輩、可愛すぎます!
残念なのは、俺の中であなたの威厳はすでにハシビロコウより下ですが……。
俺は家族とのやり取りを説明した……。
「……何で一家揃って、鍵を持ち忘れるのよ。誰も鍵掛けなかったの?」
「我が家はオートロックです、防犯はバッチリ!」
「家の者が閉め出されてるけどね……」
「ってわけで、泊めてください。このままだと俺は公園で寝泊まりすることになります」
「家にはお父さんがいるんだよぉ~、零君殺されちゃうよ?
この前、新しい日本刀買ったらしいし……」
マジかよ……! あの親父、本格的に俺の命殺りにきやがった……。
「男には……負けるとわかっていても、やらなければいけない時があるんだ!!」
「その甲斐性を他で発揮してほしかったよ……」
ごもっとも!
「でも、実際笑えないですよそれ……日本刀避ける自信はこれっぽっちもありません」
「むしろ、あったら困るよそれ」
でも、あの親父とはいつか決闘フラグが見えるのは俺だけなのか?
「とゆうか、それなら零君がバイト先に泊ればいいんじゃないの?
いつもは涼子さんが一人で寝泊まりしてるんでしょ?」
「おお! その手があったか!! 気が付かなかったぜ……さすが先輩、俺の嫁!」
「ふにゃ!!」
おお、また電話越しに何かが壊れた音がした……。
先輩いじりは楽しいな。
「な、なっ、何を言っているのかなぁ~!?」
「いやぁ、俺は奏の作ったみそ汁を毎朝飲みたい!」
「………………もしかして、私のことからかってる?」
「いやぁ~、先輩っていじり甲斐があって楽しいですよね」
「先輩をいじらないでください!!」
ブツッ、っと電話が切られてしまった……残念もうちょっと先輩で遊べると思ったのに……。
とりあえず後でメールでお礼を言っておこう。
……よし、これでいいだろ。
どの道、最初っからここに泊るつもりだったけど。
メールを打ち終わって後ろの看板を振り返る。
『涼屋』シンプルな名前だが俺は結構気に入ってる。
予備の鍵を使って中に入る。
……相変わらず、汚いな。
はいっ!あと一話で第一幕完結です。
このギャルゲテイストがはたして日常かどうか甚だ怪しいですが……
ってか、もうこの主人公、一人目の被害者にして早々にリタイヤさせちゃおっかなぁ~。爆ぜろっ、このリア充めが!!