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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
5章 東国への旅路
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1.旅を再開しようか

 そこは多くのヒトで賑わっていた。虎族に獅子族、リザード族にフェンリル族と、体格の違う人々が集まっている。彼らは鎧を着ていたり武器を持っていたり、あるいは魔法防具を身に纏っていたり――多くの修練を積んだ旅人なのだと一目でわかる。そう、私たちは旅人協会イサラス支部の建物にいた。

 なんでかっていえば、要するに仕事探しである。何かと路銀は必要になってくるので、仕事の多い繁華街で稼いでおくのがいい、とのミシュエル(さん付けは以下略)の提案だった。


 カイトやミシュエルの後ろについて、掲示板の前まで来る。掲示板には様々な依頼(クエスト)の内容が書かれた紙が所狭しと貼り付けられていた。魔物退治や道中警護といったいかにもなものから、本棚整理や臨時店員、ベビーシッターなどのアルバイトみたいな内容のものまである。それに合わせて、報酬もピンからキリまで様々だ。


「へえ、依頼ってこんなにいろいろあるんだね」

「ま、急に人手を増やそうと思ったら旅人つかまえとくのが一番楽だろうからな」


 私のつぶやきに、カイトが答える。余所から流れてきてその場での仕事を求めている旅人は、急な雇い人として適切なのだという。


「確実さを求めるなら、店の手伝いなどで地道に稼ぐのも手です。ですが、腕に覚えがあるなら魔物退治などのほうが手っ取り早く稼げますよ」


 付け加えるようにミシュエルが笑う。なるほど、いわれてみれば魔物退治の方が報酬は高いのだった。魔物退治は命の危険も伴うから、当然と言えば当然だ。


「さて……これはどうでしょう?」


 そう言って、ミシュエルはある依頼の紙を指さした。カイトは彼の指し示す紙をのぞき込んで答える。


「施設に巣くった魔物の退治、か。報酬も悪くないようだ」


 張り紙には『水源施設の魔物退治求む!』と書かれていた。詳細を読む限りでは、水を街に引き入れる水路の入り口に、魔物が住み着いてしまったのだという。このままでは施設が破壊されるかもしれないし、近寄れず定期メンテナンスも出来ないので、早急に対処したいとのことだった。

 ちなみに、ここイサラスのように砂漠の中の大きな街では、外来河川といって雨の多い地域(この場合では熱帯のアレスキア)から流れてくる川から生活用水などを引いているらしい。降雨の少ないこの地域にとって、水源に魔物が住んでしまうと言うのは住民の死活に関わってくるはず。私は是が非でもその依頼を受けたいと思った。





 詳細の書かれた紙を持って、私たちは掲示板の前から離れた。依頼(クエスト)を正式に受けるには、まず依頼主に直接会いに行く必要があるからだ。私は先を行くミシュエルやカイトを追いかけて、ふと、足を止めた。


「ったく、マミネの街じゃひどい目に遭ったぜ」

「まったくだ。ぼったくりもいいところだよな」


 そんな声が聞こえて、私はそちらに振り向いた。テーブル席に座った男の人が二人、なにか話している。一人は獅子族、もう一人は牛族の人だった。


「何かあったんですか?」


 つい気になって、私は彼らに話しかける。二人は驚いたように私を見た。


「え? ああ、ここより東にあるマミネの街なんだが、通ろうとしたら馬鹿高い税金を取られたんだ」

「数ヶ月前に領主が変わったからとか言ってたか? まったく、迷惑な話だぜ」


 牛族の男性が答えてくれた後、獅子族の男性が愚痴を続けた。と、背後に人が寄る気配がある。


「マミネの街の税金が高いだって?」


 声の方を見やれば、カイトが眉間にしわを寄せて立っていた。話していた牛族の人は彼の言葉に頷く。


「それも法外な値段だ。もし東へ行くつもりなら、マミネは通らない方がいい」

「迂回した方がかえって安上がりだろうな、ありゃ」


 ため息を吐いて、獅子族の人がたてがみを掻いた。カイトはただ眉間にしわを寄せて押し黙っている。彼がそうしている理由は私にも何となくわかった。今から行こうとしているエルフの国・シルフェリオはここより東にあるのだ。


「しかしマミネを迂回するとなると……間道を通っていくことになりますか」


 ミシュエルも困ったようにため息を吐いた。私は確認のため地図盤を取りだしてみた。それによれば、マミネとは大きな街で、しかも主要な道がいくつも通っているらしい。確かに、避けようと思ったら整備があまりされていない道を通っていくことになりそうだ。


「マミネを経由した方が陸路では一番近いんだが……。楽に抜けるとすれば、海路、か?」

「カイト、我々が海竜の被害に遭ったのを忘れたのですか? ここ最近海竜の目撃情報が相次いでいるせいで、セルビオ海を通る船は出ませんよ」


 カイトはがりがりと頭を掻いた。そんな彼を、ミシュエルがたしなめる。そういえば、カイトは依頼で船に乗っていたところ海竜に遭遇し、ミシュエルとはぐれたと言っていたはずだ。そのことを思い出したからか、彼はあからさまな舌打ちをした。


「ああ、わかってる。ったく、面倒なことになったもんだ」


 それは言っても仕方のないことだ。今の私たちで、この状況を変えることなんて出来ないのだから。私は二人のやりとりを見守りながら、どうしたものかと思案していた。

とりあえず今年最後の更新になります!

ここから新章が始まり、新しい雰囲気の物語になるかと。

では、来年もどうか本作『マイペース☆ファンタジー』をよろしくお願いします!

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