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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
3章 熱帯の国アレスキア
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4.さりげなく解決しよっか

 船が町に戻ると、漁師さん達は早速吉報をもたらした。そんな彼らをよそに、私は一人歩を進める。カシャカシャと鎧を鳴らし、アッグもついて来る。


「デュライア、どこに行くッスか?」


 私は答えなかった。何度も催促されたが、無言を貫き通す。賑わう大通りを過ぎ、町の外に出て、樹木生い茂るジャングルに足を踏み入れた。そこでようやく、私はアッグに向き直る。


「本当に分かってないの?」


 私が尋ねると、アッグは素直に首を縦に振った。私は軽くため息をつく。


「…さっきの魔物は、最初はせいぜい十数匹だった。でも、あとからまるでねずみ算式に増えたんだよ。それに、追い払ったあとは皆同じ方角に帰っていった。…これで分からない?」

「さっぱりッス」


 比類すべき問題点は全て挙げたはずだが、アッグは未だに首を傾げている。正直私は彼の勘の悪さに呆れていた。


「つまり、奴らが向かった方向――そこに巨大な住処(コロニー)があるか、あるいは奴らの親玉がいる。そして、そこを壊滅させない限りあの町は奴らに襲われ続けることになる…!」

「なっ…!?」


 私が言い終わると、アッグはオレンジ色の瞳を彷徨わせた。しばらくは言葉も出ない状態だったようだ。それでも私は、気配を頼りに薄暗い森の中を進んでいった。




 しばらく行くと、森は切れ、岩肌の露出した崖についた。海側には先ほどの魔物――キャツシーが数羽飛び回っている。気配といい、そこが奴らの拠点であることは明らかだった。私とアッグは一旦茂みに入る。そこで私はカバンから魔石を取り出し、魔力を収束。思い浮かべた通りにそれは形作られた。パッと見バズーカ砲のようなもの。私はそういう方面には疎いから、大体の形で作ったものだ。もちろん、性能はきちんと考えたけど。できあがったものに魔石を装填し、アッグに手渡した。


「何かあったらこれで援護射撃頼むね」

「え、援護射撃って……急に言われてもできないッス」


 アッグは狼狽していた。たしかに、急っちゃ急か。私は照準を合わせて引き金を引いてとだけ教えた。作る段階で、魔法の使えないアッグでも使え、かつ容易に扱えるように調整したのだ。やったことないけど、まあ大丈夫だろう。気休め程度かもしれないが。



 私は崖の上に躍り出た。途端、優雅に飛んでいたはずのキャツシー達が一気に襲いかかってきた。私は剣を構え、魔法を放つ。大気中の水分ですら凍てつかせる冷気が敵を襲う。次に備え、私は自分に魔法を掛けた。私の足は地面を離れ、体は宙に舞う。自由自在に空を飛び、魔物に細身の剣を突きつける。敵は次々と霧散していく。何回か攻撃を受けそうになったが、光の玉がそれを阻止した。アッグは思ったよりも大砲をよく扱えているらしい。魔法弾が当たる度、白い鳥は墜落していった。


 大気が震える。襲い来る奴らも何かが変わった。と、ひときわ大きな鳥が崖下から飛び上がった。大きさは10メートルを超えているだろう。とさかの生えた頭とは別に、胴体には恐ろしい牙の生えた巨大な口がある。民家なら一飲みしてしまいそうな大きさだ。


「正解は親玉でしたか…!」


 私は上昇した。あれほどの巨大な敵、一体どうやって倒すべきだろうか。思案を巡らせていると、向こうもまた急上昇してきた。突進をかわしつつ、首を切りつける。思ったよりも硬い手応え。私の斬撃はかすり傷程度にしかならなかった。巨鳥はこちらに向き直ると、胴体にある方の口を開く。のみ込まれる! 私は危険を感じ距離を取る。だが、大口からはかなりの数の――キャツシーが飛び出した。倒しても減らない魔物の真相。それは、あいつが何羽も出していたからに他ならない。飛び出した下部(しもべ)達は、私を追ってくる。かわしきるのは困難だ。


「わらわらとうっとうしいんだよ!」


 私は剣に魔力を集め、周囲に展開。私を中心として、竜巻が具現化した。ごうごうとうねる風は、いとも簡単に白い雑兵をのみ込んでいく。あらかた打ち墜としたはずだが、親玉は風の壁に突撃してきた。まるで竜巻など無いかのように突っ込んでくる。


「うそ!?」


 私は魔法を止めて上に逃げた。すんでの所で鋭いくちばしをよける。すぐさま首が私の姿を捉える。その時だった。

 光る砲弾が怪物の頭を直撃し、耳障りな悲鳴をあげて体勢が崩れた。サンキュ、アッグ。すかさず私は魔法を放つ。重力球を生成し、巨鳥にぶつける。強大な重力にとらわれてもがく相手を、海面へ落下させる。白い水しぶきが豪快に飛ぶ。私はただひたすら怪物を海に沈めることに集中した。いくらかの格闘のうち、やがて水面が静かになった。息を整え、波を見つめる。が、まだ終わっていなかった。波間に揺れる水面が盛り上がり、例の巨鳥が再び飛び上がる。


「ちぃ、しつこい!」


 突撃をよけ、上空にそびえる巨大な怪物を見据える。だが、これもある程度想定していたのだ。私は魔力を天空に放った。


『輝け稲妻、轟け雷鳴!』


 呪文を唱え終わるやいなや、上空に黒雲が立ちこめる。不気味なほどに集まったそれから、文字通り雷が落ちる。私よりもはるかに上空にいた怪物は、よけることもできないまま濡れた体に電撃を浴びた。大気が震えるほどの断末魔を上げ、怪物は霧散。代わりに紫色の魔石が落ちてきた。


「って、でかっ!?」


 そう、落下してきたのは私の2倍はあろうかという大きな魔石だったのだ。すぐさま浮遊魔法を掛けて受け止めるが、大きさ故に重い。自分も飛んでいる状態では動かすこともままならない。ひとまず崖の上に降り立つ。それから意識を集中させ、魔石も崖の上に乗せた。ああいう巨大な敵を倒していないからなのだが、人よりも大きな魔石を見るのは初めてだった。キラキラと光を通して美しい。石と言うよりは紫水晶に近いかも知れない。


「すごいッスね…。これ、どうするつもりッスか?」

「うーん、ここに置いておくのはもったいないんだけど、運べるかなあ…」


 軽く押してみたが、やはり一筋縄ではいきそうにないな。そう思っていると、ふいにアッグが近づいて来た。


「じゃあ、俺が持って行くッス」


 そう言って、アッグは魔石を抱えると、楽々と持ち上げた。開いた口が塞がらない、とはこのことを言うのだろうか。リザード族強ぇ…。なんか、彼が普段重さ故に扱いにくいはずの斧を振り回してるのも納得できる気がする。


「どうかしたッスか?」

「あ、いや……なんでもないよ」



 その後、私達は港町に戻った。当然、魔石を抱えたアッグは目立つ訳で。


「ど、どうしたんですか?」

「いや、さっきそこで魔石を見つけてね、拾ってきちゃった」


 集まってくる人々に、私は愛想笑いを浮かべる。町の人達は最初こそどよめいていたが、すぐにまた祭り騒ぎになった。今度は本当に楽しんでいいかな。私は彼らに引かれるがまま、道を歩いて行った。

 という訳で、魔物が現れたのはその親玉の所為だったということでした。

そして、さりげなく解決するというのが満月(デュライア)という人物です。

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