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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
3章 熱帯の国アレスキア
24/89

2.海だ!

 道なりに進んでいくと、風の中に磯の香りが混じっていることに気がついた。ピオッシアも交易用の大きな港を持っているらしいが、この辺りは海に近いようだ。行く先に、砂浜に沿って町が見えていた。

 自然と足早になって歩く。アッグも同じだったようで、無言で私のあとに続いた。歩くにつれて、町の姿があらわになってくる。高床で土台が固そうな民家に混じって、所々倉庫のような建物が見える。海には何艘もの船が浮かんでいる。港町だ。船の感じからして、交易港ではなく、漁港として発達したのだろう。海岸沿いには市場(いちば)もあった。




 私は舗装されたようにまっすぐ続く砂浜を歩いた。一度立ち止まり、寄せる波に向き直る。潮風が、私を撫でては過ぎ去っていく。途切れそうもない風は涼しくて気持ちいい。ああ、この異世界でも、空も海も同じ青なんだなあ。雲は白く、水面は陽の光を反射してきらきらと輝いている。私は靴を脱ぎ、裸足になって海の方へ進んだ。白くくだけた波が、私の足をくすぐるように冷やす。その冷たさに、私は思わず足を上げてしまった。すぐに顔をほころばせて、濡れた砂を踏みしめる。さらさらに細かい砂は、しっとりとして気持ちいい。顔を上げ、目を閉じ、もう一度胸一杯に風を吸い込んだ。

「デュライア、いつまでそうするつもりッスか?」

 なかなか歩き出さない私に焦れたのか、アッグが背後から話しかけてきた。正直なところ、今は一人の時間に浸っていたい気分だった。私は一度、アッグに向き直る。

「しばらくこうしているつもりだから、行きたいところがあるなら好きにしていいよ」

 私が見る限り、アッグは何となくそわそわしていたのだ。そういえば、ピオッシア以外の町を見たことがないって言ってたっけ。雰囲気が全然違うから、気になる物があって当然だろう。

「でも俺、あんまりお金持ってないッス…」

 アッグは気持ちうなだれた。そっか、町を回るのに多少のお金は必要だもんね。

「あそっか。いくらくらい必要?」

「ろ、6パースくらいッスかねえ?」

「ん、了解」

 まだまだ金銭感覚が身につかない私は、とりあえずアッグが提示した通りの銀貨を差し出した。かなり驚いていたけど、以前の給料ってめちゃくちゃ低かったんだろうか。

「どこで待ち合わせるッスか?」

 聞かれて、私は町を見渡した。低いこの位置からでも十分すぎるくらい目立つ大きな灯台が、私の視界に飛び込んだ。あそこなら、町のどこにいても見えそうだ。

「じゃあ、午後4時頃にあの大きな灯台付近に集合ってことで」

「分かったッス」

 待ち合わせを約束すると、アッグは町の探索に移っていった。

 ちなみにこの世界の時間も、地球と同じように1日を24時間に分けている。ただ、1時間や1分、1秒といっても、間隔は地球のそれとは若干ずれているのだが。けどまあ、時間は同じように考えてもらっても構わないだろう。




 私はまた、海を見つめた。目の前の広がる色は、マリンブルーと表現するのがふさわしい。どんな魚がいるんだろう。そう考えながら、私は浜辺を歩いた。

 ふと、砂浜の終わり、ごつごつした岩場の上に、3人の子供達が集まっていた。私は靴をはき直すと、気になって子供達の覗いている所へ近付いた。その岩場にはくぼみに海水が溜まっており、“潮だまり”というものだろう。

「何してるの?」

 私が彼らの背後から尋ねると、そのうちの一人、茶色で白い斑のある猫の姿の男の子(猫型の人種でも虎族と呼ぶらしい)がややあってから答えてくれた。

「シュリンサーだよ。いっぱいいるんだ」

 言われて、私も水たまりをのぞき込む。そこには彼らがシュリンサーと呼ぶ、真っ青なエビのような生き物がいた。小エビくらいの大きさで、ざっと20匹はいると思う。人によってはこれを、気持ち悪いと思うかも知れない。子供達はただ、小エビをつついたり捕まえたりして生き物の神秘を感じ取ろうとしていた。私はそんな彼らを微笑ましく眺めた。




 にわかに体中の毛が逆立った。子供達を抱えて、後ろに跳躍。子供達は驚き、抗議したが、私は彼らをしっかりとつかまえた。今まで私達がいたところに、鋭い牙が襲いかかる。その様子に、子供達は恐怖で言葉を失っていた。現れたのは、やや小柄なホオジロザメ。もちろん魔物だ。それが証拠に、空中をまるで水の中にいるかのように泳いでいる。私は剣を抜いて構えた。鋭い牙が、再び襲いかかる。私は魔力を使い、障壁を具現化。よければ後ろにいる子供達が危ない。現れた魔法の壁により敵の攻撃は阻まれる。よろけた隙を見逃さず、上に跳躍。落下の勢いを借りてサメの頭上から剣を突き刺した。剣は魔物を貫き、地に食い込んだ。が、それでも魔物は動きを止めない。私は魔力を集め、上空に雷雲を呼んだ。稲妻は天を切り裂き、サメの魔物めがけて落下。膨大な電気の塊が、けたたましい音を立てて襲いかかる。辺りが静寂に包まれる頃には、魔物は跡形も無く消失し、魔石と私の剣だけが取り残されていた。

 今回は風景描写が中心のお話でした。

満月(デュライア)は山育ちなので、海を見るのはこれが初めてなのです


 次回は戦闘回になると思います

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