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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
2章 大都会ピオッシア
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7.大人数で歩いてみたいな

 図書館で話を聞いたあと、私は傾き始めた日の中を歩いた。そろそろ今夜の宿を探さなければ。私はカバンから地図盤を取り出して宿屋を探した。なるべく宿屋の集まっているところにいきたいな。その方が値段とか比べやすいし。


 さすがというか何というか、ピオッシアの宿屋はどこも宿場町ミクサよりも値が張っている。需要の問題もあるのかもしれない。とはいえ、その分内装は綺麗だったり、サービスも充実しているらしい。私はとある店に決め、今夜はそこで休む事にした。もうしばらくはこの街にいるつもりだけれど、何となく宿は変えたい気分だ。また明日、別の宿に行こうかななどと思いをはせながら、私は今日の疲れを癒すのだった。





 翌日。宿を出て街の探索をしていた私の目に飛び込んできたのは、広大できらびやかな乗り物群だった。ジェットコースターばりにスピードを出して空中を縦横無尽に駆け巡るもの。愛くるしいデザインの動物が跳ね回っているもの。文字通りの無重力空間の広がり。そこは、公園というよりは遊園地のような場所だった。どのアトラクションにも、走るためのレールやつり下げるためのアームがない。そこはやはり魔法文明だと思う。柵の外から客の嬉しそうな悲鳴を見上げながら、私は独りごちた。

 遊んでもいい。が、今の私はその気になれなかった。二人手を繋いで歩くカップルや、数人で一緒にはしゃぎ回る子供達。彼らを見ていると、何か胸から込み上げてくるものがある。それはのど元まで押し上げてくるのに、言葉にならない。まるで、自分の周りだけ切り離されたように錯覚した。



――そういえば、私この世界に友達ゼロじゃん。

 私はようやく込み上げてきたものの意味を理解した。これまでいろんな人に出会ってきたとはいえ、それは友達と呼べる存在ではない。強いて言うなら地域ぐるみくらいの関係だ。いま目の前で遊んでいる彼らのように、打ち解けたものではない。

 これからいろんな人に出会って。そしてもし、気の合う友達を見つけたのなら。またここに訪れて、思いっきり遊ぼう。よし、ネガティブモードは終了だ。まだまだ旅は始めたばかりなんだから、もっと前向きにいかなきゃ。そもそも友達がいないのは育ちの関係上仕方ない事だし、悲観したって何かが変わる訳ではない。だったら、積極的に様々な人と関わっていこう。新しい人生、楽しんでいくぞー!

 私は一人決意し、エンターテイメントの地を離れてまた街道を歩く。それまでとは違って、足取りは軽く弾んでいた。





 何気なく角を曲がった時、向こう側から駆けてきた誰かとぶつかってしまった。

「うわっ!」

「あっ……ごめん、大丈夫だった?」

 謝りつつ相手を見ると、リザード族の多分男の子だ。ぶつかった反動でしりもちをついたらしい。私はといえば足下に衝撃が来たくらいなので、何事もなく立っているのだが。

 男の子はしばし自分のおしりをさすっていたが、やがてはっとして周りを見渡した。そしてある物を見つけると、大きく目を見開いた。私もつられて視線をうつすと、そこには真っ二つに割れた丼鉢のような陶器が。私の顔はすぐに苦々しいものになる。恐らく、ぶつかった拍子に手元から離れて落ちてしまったのだろう。彼の表情からも、それが大切な物である事は窺えた。悲しそうに茶碗を見つめるトカゲの少年の脇にしゃがむ。私は椀の欠片に手を添えると、魔力を込めて念じた。

 私の意思は茶碗に注ぎ、まるで巻き戻し映像を見ているかのようにヒビが癒着する。破片くずまで綺麗に戻ってしまうのを確認して、私は彼にその茶碗を渡した。驚いた顔をし、男の子は元通りになった茶碗をしげしげと見つめる。私は彼に微笑みかけた。

 正直、これが何か特別な魔法具だったらどうしようかと思ったところだ。幸いなことに、今回は普通の陶器だったらしい。魔法具という物は、姿形を戻したところで役に立たないものも存在する。私が使った修復の魔法程度で直って本当に良かったと思う。自分で直せなかったら弁償と土下座をする事になっていただろうな。

「ありがとう、お姉ちゃん」

 独りごちる私をよそに、男の子は笑顔でお礼を述べてくれた。並んだ牙がキラキラと輝く。私もつられて微笑み返した。

「おねえちゃん、すごいね! ボク、魔法を使えないからどうしようと思っちゃった」

 男の子ははにかんで続けた。魔法のある世界でありながら何故魔法が使えない者もいるのかと疑問が湧いたが、彼に聞くのは何だか酷なような気がしたので黙っておいた。それより、この子はいくらか急いでいたようだ。また誰かとぶつかって茶碗を取り落としてしまうかもしれない。ふと、ある考えが私に浮かんだ。

 私はカバンから適当な紙切れを数枚取り出し、それで茶碗をくるんだ。

「ほら、こうすれば割れにくくなるよ」

 そう言って、再び男の子にそれを手渡す。もちろんそれだけでは効果は薄いと思ったので、こっそりと守りの魔法を掛けておいた。男の子は私にとびきりの笑顔を向けてくる。

「ありがとう!」

 男の子は立ち上がると、嬉しそうに街道をまた駆けていった。

 満月(デュライア)は一人旅なので友達がいませんw

が、そのうち仲間も増えるはず…


 魔法具の件ですが、あれは主にハリポタの影響を受けています。たしか、杖は折れても直らないという設定だったので。新しく買い直すしか無いのだそうです。

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