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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
2章 大都会ピオッシア
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6.さすがは大都会だね

 ここアレスキア王国の首都にして国内最大の都市、それがピオッシアの共通認識だ。その大きさは世界的にも地位の高いものがある。海沿いにあり、船による運搬が盛んだ。街道にはまだ見知らぬ外国の物を取り扱った店もある。それだけ交易の盛んな都市であり、賑わいのある街なのだ。私はその街道をぶらぶらと歩く。目的は無いが、せっかく来たからにはこの大都会をエンジョイしたい。何か興味を引かれる物がないかと、散策していた。




 街並みのよく見えるおしゃれな作りの喫茶店を見つけ、私はカウンター席に腰掛けた。お勧めの紅茶とケーキを注文し、窓の外を見やる。建物が多く建ち並ぶ中で、遠くからでもひときわ目立つ建物が目に入った。遠いせいか、ここからだと剣を上に突き上げたような物しか見えない。それがとてつもなく大きい事だけは確かだが。

「すみません、あれは何ですか?」

 紅茶とケーキを運んできてくれた狐族の店員さんに、思ったままを尋ねてみる。彼女は私の指さした方を確認して、何故か怪訝そうな顔をした。……ってことは、あれが何か知っている方が常識なんだろうな。まあ、目立つし。

「あれはこの国の王様が住むアレスキア城よ」

 へえ~、お城かぁ…。って、城!? あの剣みたいな物が!? 信じられないでにいる私に、狐の女性は逆に尋ねてきた。

「見たことないってことは、あなた、ピオッシアに来るのは初めてなの?」

「はい、実はそうなんです」

 親しげに話しかける彼女に、私は照れ笑いを浮かべながら答えた。人の往来の多いピオッシアといえど、新参者と出会える確率は低いのだろう。店員さんは興味津々といった感じで色々尋ねてきた。初めて訪れる人間の目に、この街はどう映るのか――というようなことを質問されたのだ。恐らく彼女は長い事この街に住んでいるんだろうな。さっき街の探索を始めたばかりの私は、あまり上手く答えられなかったように思う。だって、まだまだこの街を見てないにも等しいのだから。





 喫茶店をあとにし、私はまた通りを歩き始めた。繁華な街並みの中に、ぽつんと取り残された静けさを見つける。ガラス越しの景色は暗く見える。もちろん中が暗いんじゃなくて、ガラスそのものが暗い色をしているのだ。建物の中の人々は棚を物色したり、椅子に腰掛けて気に入った本を読みふけっている。図書館。誰もがお気に入りの一冊と出会える場所――


 私はその図書館に入ってみた。二重に仕切られた戸の向こうから、エアコンの効いた部屋のように涼しげな風が流れ込んでくる。魔法文明だから、エアコンじゃないんだけどね。紙というのは劣化しやすい。特に、アレスキアのように湿潤な気候の国ならなおさらだ。だから、こうして厳重に管理された空間の中に保管されているのだろう。

 中は格別人が多い訳でもなかった。価値観の違いから、私の知っている本の分類とは異なっていた。しかし、さすがは都会の中の図書館だと思う。まず、広い。それに合わせるように蔵書数も膨大だ。何から手をつけるべきかなんて見当もつかない。私は近くの棚に目を移した。神話に宗教、歴史物語。文庫もあれば挿絵の多い本もあり、図鑑や資料集も並べられている。せっかくだからちょっとだけ歴史関連の本も見ておこうかな。長く借りる事はできないと思うけど、私は特に関心の引かれた本を数冊手に取った。

「おや、若いのに歴史や神話に興味がおありで?」

 不意に聞こえた声に、私は思わず顔を上げた。そこにあったのは、太いくちばしと黒い羽毛に覆われた顔。――カラスだ。その人の顔を見て、私は真っ先にそう思った。いや、実際にカラスかどうかは知らないけど。

「まあ、無いといえば嘘になりますね」

 私は読みかけの本を持ったまま、その人の質問に答える。今の私は傍から見たら歴女、ってやつなんだろうな。正直に言うと、歴史関連の本を読んでいたのはただ単にこの世界の事を知りたかったからなんだけど。

「私はクロウディから来たんですがね、やはりこの図書館の雰囲気が好きでよく来るのですよ」

 カラスの人は私が尋ねる前から語り出した。どうも話し好きな性格らしい。しみじみと棚に整列した本を見つめている。何だか学者風だ。

「クロウディ…?」

 聞いた事もない街の名前に、私は首を傾げた。カラスの人はやや驚いたように私を見る。

「おお、失礼しました。クロウディというのは学術都市でしてね、私のような学者にとっては過ごしやすい街なのです」

 曰く、大学やら研究施設やら、そういったものが集まっている街なのだという。何かちょっと面白そうだなあ。今から学校に通うことなんてできないと思うけど、行くだけいってみようかな。

 私はその人からいろんな話を聞いた。その街には技術者もいること、絵画や音楽のような芸術も発達していること。学芸においてはここピオッシアにも引けを取らない、と。ほとんどはその人が熱弁していたことで、私は相づちを打っているだけの事が多かった。しかし、それでも私は話を聞いて、時折メモも取るのであった。

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