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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
2章 大都会ピオッシア
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3.試練受けて

 持ち場から長く離れる事のできないナイルさんにかわって、旅人協会の一員である虎の人に私はついていった。街から出たところにあるうっそうとした密林地帯。茂みの向こうから鳥や魔物の騒がしい声が聞こえる。道といえば細い獣道くらいしかなく、人の立ち入りが少ない事を物語っていた。私の目の前にいる虎の人――ガルトさんは戦える人なのだが、私は自分の身を守る必要があった。まあ、試験なのだから仕方ないか。私はいつでも戦えるように剣の柄に手を掛けていた。

 しばらく歩いていくと、青みがかった白い岩が口を開けて構えていた。見上げると木々より上に、岩のてっぺんが突き出ている。その岩に穿(うが)たれた穴は、人が二人入れるほどの大きさだ。奥はずっと暗闇が続いている。ガルトさんは入り口の手前で立ち止まり、穴をあごで示した。

「この洞窟の奥に、“宝”がある。それを一人で持ち出す事ができたら、お前を旅人として認定しよう」

 そう言って、私の背を軽く押した。私はやや前につんのめる。分かりましたとだけ答え、私は洞窟の中に入っていった。



 魔力を集め、光をともす。わずかなものだったが、それでもないよりはマシだ。明るいのは入り口付近だけで、奥は数寸先も見えないほどに真っ暗だったのだから。明かりをともしてみると、ここは自然の洞窟ではなく、人の手が加えられた場所だと分かった。道は平らに舗装され、壁には所々補強した跡が残っている。レールのような物がわずかに残っているあたり、元は鉱物資源を掘り出す場所だったのかもしれない。ただ気になるのは、微かに油のような臭いがすることと、生き物の気配がすることだ。後者は特に気をつけるべきかもしれない。私は剣を抜いた。


 歩いていくと、明かりに驚いたのか暗闇から魔物が躍り出た。野犬のような体つきに、コウモリのような羽。それも、一体だけではない。暗闇に光る双眸(そうぼう)が、いくつも見える。私は後ろに跳躍して突撃をかわすと、魔物の翼を切り裂いた。だが、切り落としたはずの翼は瞬く間に再生する。様々な方向から繰り出される攻撃を、魔壁を展開してやり過ごす。私は魔法を放ったり、剣で何度も切りつけた。が、彼らの生命力はすさまじく、心臓をついても倒れてくれない。戦況は圧倒的に不利だった。

 しかし追い詰められたおかげで、私は集中力が高まった。思案をめぐらせる。彼らはこの闇の中にいた。元は人の作った洞穴だったが、人がいなくなってからは彼らにとって良い住処になったのだろう。恐らく彼らは、闇を好む類の魔物――

 そこまで思い至った時、私には一つ策が浮かんだ。賭けに近いが、何もしないよりいい。私は剣に魔力を集めると、それを体の周りに展開。と同時に意思が魔力に宿り、それは目もくらむほどの光となった。昼間よりも更に明るい。やがて洞窟内に静けさが戻ると、先ほどの魔物の姿は無くなっていた。思った通り、光が苦手だったようだ。私はほのかに光る魔石を拾い、更に奥へと向かった。



 それから何度か強襲を受けたが、大抵は光に弱いらしく、それほど苦労もしなかった。しかも、あるときを境にして全く襲ってこなくなった。偶然かと思ったが、そうではないことがあとで分かった。

 歩いていくうちに、ほのかに明るい場所を見つけたのだ。明かりを消しても、先が見える。満月の夜に出歩いているくらいの明るさだった。そういえば、実際に目にした事はないが、夜に光る毒キノコが日本にもあったっけ。もっとも、この洞窟で光っているのはキノコではなく、岩にこびりついた苔なのだが。それが壁や天井などを覆い、洞窟内を照らしているのだった。元々暗闇を好む魔物達が近付かない訳だ。私にとっては二重の意味でありがたい。…ちょっとじめじめして、苔特有の臭いがするけど。


 ふと気付くと、足下が濡れていた。岩の隙間に水が流れていたのだ。だから苔も生えていたのだろう。じめじめしているのもそのためだ。所々、水たまりもできている。屈んで手を入れてみると、心地よい冷たさだった。見上げると、岩がタケノコのように盛り上がっている所もあった。削られていたせいで気付かなかったが、ここは鍾乳洞だったのだ。だとすると、ここはかつて石灰石を掘り出していたのかもしれない。奥に進まなくてはならないと分かっていたが、好奇心がくすぐられてしまう。もっと他にも無いかと手探りした。

 何かが手に触れる。驚いて目を見張ったが、この薄明かりでは何も見えない。もう一度手で探ると、少しだけ痛みが走った。水の中から出てきたのは、透明で少し湾曲した、美しいフォルムの物体。光をともしてよく見ると、キラキラと光を反射した。

「これは――ガラス? でも、何でこんな所に?」

 手の中にあったのは、ガラスの破片だった。疑問に思い、色々探ってみたが、結局何も分からなかった。仕方ないので私は破片を袋に入れ、奥に進む事にした。

 文中に出てきた夜に光るキノコというのは、確かヤコウダケという名前です。

毒があって食べられませんが、夜になると蓄光ビーズみたいに光るそうです。

どこまで明るくなるのかは知りませんが、今回生えてた苔は魔力的な何かで割と光ってるということで。

 ついでに、鍾乳洞で石灰石を掘るのかどうかは知りません。が、物質としては同じものであり、観光という目的がなければ掘り出されてもおかしくないのではないかと。あくまでも憶測ですが…

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