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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
2章 大都会ピオッシア
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1.街に入ろう

 馬車で走り抜けると、数日でピオッシアの城壁前までたどり着いた。私は狸の人にお礼を言うと、城門前まで歩く。ピオッシアの街はこの巨大な城壁の中にあるという。それだけ重要な都市なのだろう、門の前も厳重に守られている。一人の門番が私の前に進み出た。

「君、通行証か身分証明書を持っているかね?」

 門番さんは大柄で、トカゲのような緑色の鱗を持つ人だった。プレートアーマーを着込み、槍を持っている。声は優しかったが、私は戦慄した。

「み、身分証明書!?」

 特に職もない流れ者で、なおかつ私は捨て子だ。しかも、今まで人里離れた地で暮らしていた。そんな私が身分を証明できる物は皆無だったのだ。ここに来て街に入れないなんてなあ……。

「ないとダメですよねえ?」

「当然だ」

 頼んでみたが、やっぱり無駄だった。発展した大都会に、どこの馬の骨とも知れぬ者を入れる事はできないのだろう。人は見かけによらないのだし、私が賊である可能性だってあるのだ。どこかで身分を証明してもらわないといけないが、果たしてどこに行けばいいのやら。

「うー、今更ながら捨てた親を恨みたい気分……」

 ついでに、無理矢理旅に行かせた六厳善(ろくがんぜん)もだ。こういう社会的事情はどうやって克服せよと言うのか。がっくりと肩を落とした私を、門番のトカゲは訝しげに見つめた。

「む? 捨てられただと? どういう事だ?」

「言葉通りですよぅ……。私は捨て子で、育ての親はもろもろの事情で人里に降りてこなかったんです」

 めんどくさいので、六厳善についての説明は省いた。幸い、門番はそれ以上尋ねなかった。なんかもう、ちょっと自暴自棄だ…。


 などと思っていると、突然全身の毛が(あわ)()った。すぐさま後方に跳躍。突き出された槍を剣で打ち払って軌道を逸らす。その一瞬、何が起こったか分からなかった。だが、息をつく暇もなく槍が突き出される。私はレイピアでそれを全て打ち払う。この細身の剣ではまともに受け止めるのは無理だ。時折こちらも剣を出して牽制しつつ、攻撃をかわす。一瞬の隙を見て懐に飛び込むと、私は相手の手から槍をはたき落とした。カーンと鋭い金属音が響き渡る。私は呆気にとられた面持(おもも)ちのトカゲ男ののど元にに剣を突きつけていた。そこで私は我に返る。

「な、なんかすみません!!」

 剣を収め、腰から曲げて頭を下げる。門番さんに言われて顔を上げると、そこには穏やかな笑みが浮かんでいた。

「いやはや、素晴らしい剣術だ。君は筋がいいな」

 訳が分からず呆然としている私をよそに、門番さんはたたき落とされた槍を拾い上げた。どうやら私は試されていたらしい。しかし、褒められるほどの腕前だっただろうか。

「では、入城の手続きをしようか」

「ほ、ホントですか!?」

 私が声を裏返して叫ぶと、門番さんは意味ありげな笑みを浮かべた。

「ああ。ただし、君が“彼ら”に認められれば、の話だけどね」

 何だかツッコミどころが多いが、私はとりあえず門番さんについていった。

 さて、ここに来て重要課題が露見。

果たして満月(デュライア)は無事身分証明になる物を手に入れられるのか!?

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