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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
1章 旅立ち
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8.“危険な”運び屋

今回は戦闘描写があるので、苦手な人は注意してください。

 翌日。私は服屋に立ち寄った。今私が持っているのは着替えだけで、雨具や防寒具などは持ち合わせていない。これから先いろいろなところへ行くことになるだろうから、備えておこうと思ったのだ。華美な物は好きではないので、シンプルで使いやすい物を探す。予備は――必要になる時でいいかな。そんなふうにして、あちこちの店を見て回る。ついでに普段着も増やしながら。



 さて、準備を整えたところで大都会であるというピオッシアに行こう。きっと情報だってあるだろうし、いろんな人がいるはずだ。

 私は昨日買った地図盤を見る。だいぶ近付いたが、徒歩ではちょっと遠そうだ。乗り物でもあればいいのに、と思った時、(うまや)のような建物が建ち並ぶ場所へ来た。そこは人々を別の町へと運ぶ事を生業(なりわい)とする、運び屋達の待機場所だったのだ。様々な人が自分たちの車に乗らないかと呼びかける。そんな中で、私はとある店に目が止まった。そこだけ、周りの半額以下である12パースで運営していたのだ。何だか裏がありそうだと思い、店の主人と思しき人に尋ねる。

「ここはどうして安いんですか?」

 パイプを咥えてどっかりと腰を下ろしていた狸の人が、私の方を向く。その人は茶色の毛並みをし、お腹がちょっと出ていた。私の質問を受け、不敵に笑う。

「俺の車は速さがウリでな、ちょっくら危険なのさ」

 街道は道行く人の安全が優先されるため、しばしば魔物の多い道を避けて蛇行する。ほとんどの車が整備された街道を進むのに対し、この人は間道を通って行くのだという。つまり、危険な近道を渡るというのだ。

「自分の命を自分で守れなきゃ、俺の車に乗るのはやめておくんだな」

 特に嬢ちゃんみたいなか弱い女の子はな、と冗談めかす。忠告してくれるあたり、いい人だと思う。事実私は、見た目だけならか弱い女の子かもしれない。が、それでも魔物が出る道を一人で通過してきたのだ。恐らくここで命を落とすくらいなら、これから先、生き抜くのは難しいだろう。お金はできるだけ節約したいし、乗せてもらおうと決意した。

「じゃあ、乗せてください」

 私の言葉に、彼は少なからず驚いていた。まあ、乗らない方がいいと言われる存在が言ったのだから当然だろう。少し狼狽している彼に、私は続けた。

「大丈夫です。自分の身は自分で守りますから!」

「はっはっは、強気な子は嫌いじゃないぜ。そんなら、乗りな」

 笑みを浮かべて、狸の人は車に乗せてくれた。




 ガタガタと車が揺れる。この車は馬のような生き物に引かれて動いていた。馬よりも大型で、体格もしっかりしている。揺れているのはこの生き物の引き方が荒いからではなくて、道が整備されていない間道だからだ。生い茂る木々の中をくぐり抜けているので、石や木の根に車輪がぶつかる。馬車には屋根とそれを支える柱しかついておらず、時々突き出た木の枝が顔を(かす)る事もあった。屋根しかついていないのは、視界を良くして敵の接近にいち早く気付くためである。私はいつでも応戦できるよう剣の柄に手を掛けていた。

 耳障りな奇声が響いて、空から敵が下降してきた。黒い体に黄色いくちばしを持ち、腹の赤い色が目立つ。大きさは鷹よりも大きい。そんな奴が数体、馬車めがけて突進してきた。私は細身の剣を抜き、カウンター気味に襲ってきた鳥の魔物を切り落とす。相手の勢いが強かったのか、そんなに力を入れる必要はなかった。下を見れば、車体に食らいつく者がいる。剣は届かず、まともにダメージを与えられそうにない。剣の先から雷を放つ。驚いた拍子に魔物は離れて転げ落ちた。今は防衛戦だ。自分の身さえ守れれば、深追いする必要はない。また空からの攻撃が降る。とりあえず、こいつらを追い払った方がよさそうだ。私は剣に魔力を込め、意思を具現化した。荒ぶる思いは魔力と結びつき、乱気流となって私達の周りに吹き荒れる。ごうごうと唸る風に、為す術もなく黒い鳥たちは攪乱(かくらん)されていく。()いたところで私は風を収めた。追いかける者はあらかたいなくなった。が、まだ殺気を感じる。こちらを狙って様子見をしているのだろうか。

 予想通り、右前方から巨大な熊が躍り出た。私は咄嗟に魔法壁を展開し、御者をする狸の人を襲おうとした腕を弾いた。急展開したが故に全てを防ぎきれはしなかったが、弾かれた隙を突いて私は剣を押し出す。刺突に特化したレイピアは、馬車の勢いを借りて敵ののど元に深々と刺さった。絶命した巨大な熊は魔石へと姿を変える。

「人の心配をするなんて、余裕だなあ? けど、助かったぜ」

 狸の人が振り向いて笑う。私は気配を探る事を怠らないまま、顔だけは笑ってみせた。馬車はまだ、うっそうとした森を駆けていた。

本格的な戦闘シーンを書いてみましたが、どうでしたか?

一応、過激にならないよう注意しています。


さて、この話で1章は終了です。

次回からはいよいよ大都市ピオッシアに到着!

全てが好転する訳もなく、主人公は苦労していきます。

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