彼と郵便局に行く
「郵便局に寄ってもいい?」
私が彼に聞くと、彼は「いいけど」と気軽に答えてくる。
下校途中で、太陽が人間を焦がそうとしているみたいに、猛暑だった。
「何か買うのか?」
彼が汗をハンカチで拭きながら、聞いてきたので、私は同じくハンカチを出し、あおぐ。
「切手を買おうと思って。ちょっ入ってもいい?」
「どうぞ。中に入れば涼めるしな」
彼が早く入りたそうなので、私はくすくす笑う。
「どうした?」
「いや、ライオンさんは氷が欲しいのかと思って」
「氷!?」
彼が吠えるように言ったので、私はまずかったかと思ったが、そのまま背中を叩かれる。
「動物園じゃあるまいし。うちのうさぎはたまに、不思議ちゃんだからな」
「えー!! 不思議ちゃん!?」
ぷーと口を尖らせる私を見、彼はにやにや笑う。
しかし喧嘩したいわけではないので、彼から手を取ってくる。
「行くぞ」
「うん!!」
私はうさぎが跳ねるように、階段を軽くあがり、中に入る。
窓口に向かうと、「あの!!」と話しかける。
受付にいたのは、童顔の男性で、私達と同い年に見えた。
「いらっしゃいませ」
声が可愛く、抵抗感がないというか、優しい印象を受ける。
彼はどうだろうとちらりと見ると、エアコンを眺めており、腕を組んでいた。
ライオンが涼んでいるよと思ったが、確かに郵便局の中は快適だった。
汗もひいてきて、匂いを気にしていた私は、ほっとする。
それから男性に向かって言う。
「デザイン切手が欲しいんですが…」
「はい。分かりました」
男性は嬉しいのか、裏表のない表情で言ってきた。
切手を取り出す間に、彼が私に聞いてくる。
「デザイン切手って、何だ?」
「あのね、普通の切手と違って、丸形とか大きいのとか、色んなサイズがあって、花火とか花とか、デザインも綺麗で可愛いの。見れば分かるよ」
「分かった。見てる」
彼は再び腕を組むと、横から見つめてくる。
私と男性は切手を間に向き合うと、並んだものを見つめる。
「うわ!! 可愛いし、綺麗!! どうしよう、どれにしよう!!」
私は1人で興奮し、彼を見上げる。
「どれがいいと思う?」
「どれって、俺のセンスじゃ…」
「いいの。好きな人が選んだものが欲しいの」
私は手をもじもじさせ、顔を少し赤くする。
彼が何を選ぶのか、興味があった。
少しでも彼のことを知りたいと思うのは、私だけだろうか。
彼はふっと笑うと、うなずく。
「分かった、分かった。選んでやる」
「本当!! やったあ!!」
「その前に、誰に送るんだ?」
「あのね、田舎の従兄弟。おじいちゃんやおばあちゃんにも手紙を送るつもりなの」
「そうか。それじゃあ」
ライオンは手を解放すると、窓口に手をつく。
まるで檻に手を置くみたいと思ったが、黙っておく。
「これ、可愛いな。秋の切手」
「うん。それ、いいかなと思ったんだ。あとは?」
「あとはそうだな…。この熊の切手もいいな。子どもが喜びそう」
「ポスクマね。確かに従兄弟が喜ぶかも」
私はカバンを開け、財布を取り出すと、
「これとこれ、ください」
彼が選んだ切手を購入するのだった。
「ありがとうございます」
男性は切手を袋に入れてくれ、会計を済ます。
「またよろしくお願いいたします」
「はい」
私は切手を大事に抱くと、彼の手を取る。
「行こう」
「おう」
2人が郵便局から出ると、砂漠に来たかのように、熱気が襲いかかってくる。
「うわ、むわっとする」
私は手を払うと、切手を汗で汚さないために、カバンにしまい、彼の手を引っ張っていく。
「スーパーで飲み物とアイスでも買う?」
「いいな、それ。行くか」
彼は嬉しそうに言い、私を引っ張っていく。
しかしすぐに足を止める。
「どうしたの?」
「あのさ」
「うん、何?」
私は1番の目的が達成されたので、心に余裕があった。
ゆっくり聞くと、彼が迷ったように言ってくる。
「俺にも手紙、書いてくれないか?」
「え?」
私は身長の高い彼を見上げ、しばし考えたが、すぐに彼の肩をぽかぽか叩く。
攻撃したいのではなく、嬉しさからだった。
「いいに決まっているじゃん!! すぐに書いてあげるよ」
「ありがとう。嬉しい」
彼が素直に言ってきたので、私は心から喜びの笑みを浮かべるのだった。




