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王との再会



二枚の扉が閉じられ、謁見の間に静寂が戻った。


優斗は、喉の奥がからからになるのを感じながら、王の前に立っていた。


すべてを話した。

ドラゴンのこと。

攻撃性がないこと。

そして――魔石を使い、空からウードンが降ったこと。


話し終えても、王はすぐには口を開かなかった。


ただ、玉座に深く腰掛けたまま、指先を軽く組み、優斗を見下ろしている。


その沈黙が、長い。


咳払いも、身じろぎもない。

近衛兵の鎧が軋む音すら、聞こえない。


(……怒って、いるのか?)


優斗の背中を、冷たい汗が伝った。


やがて、王が口を開いた。


「――ドラゴンは、許す」


あまりに低く、淡々とした声だった。


「……え?」


思わず声が漏れたのは、優斗だけではなかった。

カレンも、わずかに目を見開いた。


「攻撃しないのなら、我らも攻撃せぬ。それだけのことだ」


王の声には、感情の起伏が一切なかった。

まるで、天候を決めるかのような口調だった。


だが、その次の瞬間。


「――それより」


王の視線が、鋭く優斗を射抜いた。


「はぷんての魔石で、食べ物をまた『 降らせた』と言ったな」


空気が変わった。


興味。

それも、底の見えない、冷えた興味。


「はい……ウードン、という食べ物です」


「降らせた量は?」


「……洞窟が、埋まるほどです」


再び、沈黙。


王の唇が、ほんのわずかに動いた。笑みとも、歪みともつかない形。


「納豆にカエルにウードンまでか」


その一音だけで、優斗の心臓が跳ねた。


「武器でもなく、炎でもなく、『食』を具現化する魔石……」


王は、ゆっくりと身を起こした。


「それは、国を滅ぼす力にも、救う力にもなり得る」


優斗は、無意識に拳を握りしめていた。


「白井優斗」


名を呼ばれ、背筋が伸びる。


「ドラゴンの件は、これで終わりだ」


だが――そこで話は終わらなかった。


「代わりに、頼みがある」


王は、静かに告げた。


「サイバーニの森が、ここ数年スライムに荒らされている」


「納豆は食べぬ。それなのに数は増え、放置すれば、いずれ王都に被害が及ぶ」


王の視線が、優斗とカレンを等しく捉えた。


「ドラゴンを刺激せず、魔石を扱えるお前たちに、適任だ」


カレンが、鼻で小さく笑った。


「……結局、働かせるのね」


王は、その言葉を咎めもしなかった。


「成功すれば、報酬を与える」


「失敗すれば――」


言葉は、そこで切れた。


だが、続きを想像するのは容易だった。


優斗は、静かに息を吸った。


――また、選択肢はない。


それでも。


「……わかりました」


自分の声が、思ったよりも震えていないことに気づく。


「お引き受けいたします」


王は、ゆっくりとうなずいた。


「では行け」


その一言で、すべてが決まった。


静かすぎる謁見の間を後にしながら、優斗は思った。


――ドラゴンより、この王様のほうが、ずっと、怖い。



***



ふるえる足で、やっと部屋に戻った。


優斗は、水をためた洗面器に顔を浸けた。


「困ったことになったな……スライム退治に失敗したら」


同じように、カレンも顔を沈める。


次の瞬間。


「ぎゃああああっ! 王様のバカヤロウ!!!!!!!!!」


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