みんなでダンジョン
ガルーラダンジョンの入り口は、まるで巨大な鍾乳洞だった。
天井から垂れ下がる岩は鋭く、壁はごつごつと波打ち、
冷たい空気が肌を刺す。
一歩足を踏み入れただけで、外の光はすぐに飲み込まれた。
優斗は、思わず息をのむ。
(……思ったより、ずっと暗い)
数歩先さえ、ほとんど見えない。
「こんなに暗いんだ……困ったな」
思わず、声が漏れた。
「明かりを、何も持ってきてない……」
準備不足だったことを、今さらながら痛感する。
そのとき、ゴブリン隊長が胸を張った。
「ミチ、シッテイル」
短く、自信満々に言い切る。
「……あ、助かります。ありがとう」
優斗は、ほっとして頭を下げた。
「ふん。たまには役に立つのね」
カレンが、腕を組んで鼻を鳴らす。
「じゃあ、僕とカレンは後ろから、ついていきますね」
そう言って、隊列が動き出した。
――数秒後。
ごつん、という鈍い音が響いた。
次の瞬間、先頭のゴブリンが派手にすっ転んだ。
「……え?」
隊列が一斉に止まる。
「信じられなぁい」
カレンが、呆れたように頬を膨らませる。
「もう転んでるじゃない。道案内、できるの?」
ゴブリン隊長は、がっくりと肩を落とした。
顔には、ひどく悲しげな表情。
「ハラ、ヘッタラ……ウゴケナイ」
その言葉に、優斗は納得した。
(……ああ、そういうことか)
ここまで、ほとんど何も食べていない。
暗闇と緊張で、体力も集中力も、削られているのだ。
「そうだね」
優斗は、やさしく言った。
「腹ごしらえが、必要だね」
袋の中を探り、ビスケットのようなものを取り出す。
「長老から、いただいたものだよ」
「それと、採っておいたキノコと……」
あたりを見回す。
(……これくらいしか、なさそうだな)
岩肌に張りつくように生えている薄緑色のコケ。
優斗は、ほんの少しだけ摘み取った。
慎重に、その一欠片を口にする。
(今度こそ、みんなの体調を守らないと)
舌にひんやりと触れるが、味はほとんどない。
(……毒はなさそうだ)
(もし何かあっても、今は僕だけでいい)
簡単に火を起こし、キノコとコケの即席スープを作る。
ビスケットで、最低限の腹を満たす。
ゴブリン部隊も、それぞれ腰を下ろし、黙々と食事を始めた。
さっきまでの騒がしさが嘘のように、洞窟は静かになる。
暗く湿った岩道。
再び歩き出し、ひとつ目の曲がり角を越えた――
そのとき。
また、行進が止まった。
優斗の胸に、嫌な予感が、静かに広がっていった。




