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ぱたぱた来た



城門をくぐった、その瞬間だった。

カレンが急に立ち止まる。


「ねぇ、ちょっと待って」


振り返ると、彼女は腰に手を当て、

城のほうを親指で指していた。


「今の、どう考えてもおかしくない?」


「ドラゴンがいる。行けるか。

 はい終わり――雑すぎでしょ」


優斗は、言い返せなかった。


「……王様だったからさ」


そう言いながらも、

胸の奥が、じわじわとざわついている。


断ればどうなるか、

想像するまでもなかった。

拒否すれば――

カレンもろとも、首をはねられる。

そんな空気が、玉座の間には確かにあった。


「あんたさ」


カレンは歩き出しながら言う。


「昔からそうよ。頼まれると、絶対断らない」


「断ったら、カレンが……」


その言葉に、彼女は鼻で笑った。


「どっちにしても困るってわけね」


軽く言っているが、その声は少しだけ低かった。


そのときだ。


後方から、小さな足音が、まとまって聞こえてきた。


……ぱたぱた、ぱたぱた。


「……来ましたね」


優斗が振り向く。


街道の端に、

いつの間にか緑色の影が集まっていた。


背は低く、体つきは猿のよう。

だが、槍や弓を構え、妙に統率は取れている。


「うわ……」


カレンが、露骨に顔をしかめた。


「本当に来たんだ」

「唐揚げしか出来ないと思ってたわ」


「カレン様が、ウゴイタ」


先頭のゴブリンが、

誇らしげに言った。


「ワレワレモ、ツイていく」


「……こんなこと言いたくないんだけど」


カレンは視線を泳がせる。


「映画で見る精鋭部隊ってさ、ブロンドの巻き毛に、

青い目のイケメンじゃない?」


一拍置いて、


「……いや、いいのよ」

「独り言、独り言」


乾いた笑いを上げる。


「アハハハハハ」


すると――

次の瞬間。


ゴブリンたちも、

つられるように笑い出した。


「フフフ」

「ハハ」

「ワカラナイケド、ワラウ」


「……」


カレンは、呆れたように肩をすくめる。


「ふん。半分人間って言ったって、やっぱりサルね」


「意味、わかんないのね。好都合だわ」


そのとき。


ゴフッ、と喉を鳴らしてから、先頭のゴブリンが胸を張った。


「ワカッている、デス」


「カレン様、サイコウ」


「ブッ」


思わず、優斗は吹き出しそうになった。


同時に、胸の奥に、嫌な予感が広がる。


ゴブリンたちは、本気でついてくるつもりだ。

理由も、危険も、ほとんど理解していないまま。


優斗は、はっきりと確信した。


――これは、簡単には終わらない。


ドラゴンに会う前から、

もうすでに、面倒ごとは始まっている。


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