王の依頼
二枚の巨大な扉が、低い音を立てて開いた瞬間。
優斗の視界いっぱいに、眩い光が降り注いだ。
無数の水晶が連なる、巨大なシャンデリア。
光を受けてきらめきながら、天井から幾重にも垂れ下がっている。
その下には、入口から玉座へと真っ直ぐに伸びる深紅の絨毯。
まるで血の筋のように、広間の奥へと続いていた。
左右には、鎧姿の近衛兵。
一糸乱れぬ姿勢で並び、瞬きひとつしない。
――場違いだ。
優斗は、そう感じた。
自分が、この場に立っていい存在とは思えなかった。
一歩進むたび、
広すぎる空間に、身体ごと吸い込まれていくような錯覚に陥る。
自分が蟻になったような気分だった。
玉座に座る王の姿は、距離と威圧感のせいか、
もはや人間というより、完成された芸術品のように見えた。
感情を感じさせない、冷たい威容。
静寂の中、王が口を開いた。
「お前たちに、機会をやろう」
その一言だけで、空気が張り詰める。
「ドラゴンがいる」
短く、簡潔に。
説明は、それ以上なかった。
「行けるか?」
低く、重く響く声。
視線が、優斗を貫いた。
心臓が、どくん、と大きく跳ねる。
足元が、わずかに揺らいだ気がした。
謁見の間に、短い沈黙が落ちる。
「……王様のご命令ですから」
そう答えたものの、自分でも分かるほど、声は弱々しかった。
「ただ、自信がありません」
消え入りそうな声だった。
「どこに行けって言うの?」
腕を組んだまま、カレンがぶっきらぼうに口を挟む。
「ガルーラダンジョンの最深部でございます、カレン様」
長老が答えながら、ちらりと彼女の顔色をうかがった。
「アタシは待ってるわ」
カレンは鼻で笑う。
「どうせ戦力にならないし」
「カレン様は、人寄せのスキルをお持ちでございます」
「だから、なに……?」
「カレン様が行かれないと、ゴブリン部隊が動きません」
「ゲームに出てくる、サル?あ 飛脚でみたわ あれね」
カレンは肩をすくめる。
「カエルの時も手伝わせたけどさ。でも、人じゃないでしょ」
長老は一度、咳払いをした。
「この王国では、ゴブリンは『半人間』扱いなのです」
その言葉に、優斗の胸が、わずかに締め付けられた。
カレンはドレスのフリルをつまみ、不機嫌そうに引っ張る。
「そんなこと、私の知ったこっちゃないわ」
その空気を断ち切るように、優斗は一歩前へ出た。
そして、深く頭を下げる。
「王様、失礼しました」
一瞬、間を置いてから、言葉を続けた。
「解決できるかは……正直、わかりません」
(まったく自信ないんだが――)
「それでも、ドラゴンのもとへ向かってみます」
それは、勇気というより――覚悟に近い言葉だった。
(いあ……絶対ムリって、もし倒したら裸踊りしてやる)
カレンは言いかけた。
ふっ、アタシの魅力しかないわ、おどらをメロメロにしてやる
「……」




