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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい

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 踏み込みの勢いと共に段平を大きく振りかぶっている魔王は、最早止まることはできない。


 自身の置かれている状況を理解したその顔には焦燥の色が垣間見られたが、ここから取れる手は少ないと覚悟を決めたのだろう。

 奴の眼差しは即座に決意の光を帯びる。


 迅速果断とも言える、状況分析からの切り替えの早さ。

 やはり魔王は歴戦の武人なのだと改めて思い知らされた。


「ウオォォォォォォ!!」


 俺が武器を手に取り仕掛ける前に自身の刃を振り下ろさなければ敗北は必至。

 迅速に、鋭利に、目の前の小僧を斬り伏せる。今はその一点に全身全霊を注ぐ。


 そう叫んでいるかのような鬼気迫る裂帛の気合い。


 その気迫の凄烈さは普段の俺ならビビって足がすくんでしまう程のものだったけど、今はひるんでいる余裕など微塵もない。


 後にも先にもこれ以上の好機は有り得ないのだから。


 攻撃は抜け目無く、防御は堅牢で隙らしい隙が見当たらなかった魔王。らしくもないこの大振りは、無手の俺に勝利を確信したからこそ繰り出してくれた千載一遇の勝機。


「速さだけなら負けないっす」


 かがんで床の黒狩こくしゅうを引き抜くと同時に、全力の絶影で踏み込み刃を振るう。一連の動作は刹那で完了おわる。


「ぐぁっ……!」


 俺が口を開いた時には、既に逆手に持った刃が魔王の右脇腹辺りを胸当てごと大きく斬り裂いていた。


 そう、速さなら絶対に負けない。


 そしてこの黒狩とか言う短刀、切れ味凄すぎだろ……。斬る際に防具や骨の抵抗を全く感じなかった。

 まるで使い込んだボロい安包丁から新品の高級包丁に買い替えた時のような衝撃と感動だ。


「がはっ……! ──っ! この模様はアヌギスにも纏わりついてたやつだな……くそっ」


 自身の掌に浮かびあがる呪印を見て諦念したように吐き捨てた魔王は、後方へと飛び退き膝をついた。


「勝負あったっすね」


 手応えは勿論、流血量からしても魔王の傷は決して浅くない。

 それに大きく物理ダメージを与えると、幻影刃の威力も比例して向上するらしい。削り取った魔力が先程までとは比べ物にならないからだ。


 魔王の右上半身はほぼ呪印に染まっている、もうじき魔弾による呪縛が発動するはずだ。

 そうなればこちらの勝ちは確定する。 


「くっ、つい遊び過ぎたな……。しかし小僧、お前面白い使い手だな。俺の友人にならないか?」

「はっ? 何言ってるんすか、命乞い的なあれっすか……」


 どんな提案だよ、こいつ。頭おかしくなったんか……。


「まあ、そう言うな。もう既に契約は済んでいる。この『友人帖フレンドノート』でな」


 そう言うと魔王は左手を伸ばし、上向きに掌を広げる。するとそこへ一冊のノートが現れる。


 あれは確か才与の儀でノクスが使っていた革張りのノート、魔力で具現化した物なのか……。つまり物体を具現化するスキルがあるってことか。


「小僧、ちょうど二つ席が空いたところだ。お前が埋めろ」


 そうだ、まずい……。魔王には操作洗脳系の類いのスキルがある。あのノートは全員の名前が記してあるはずだ。もしかしてそれが契約か?

 おい、つまり完全に騙し討ちじゃねえか。

 それを今ここで使うつもりか……くそっ油断した。


 もう一撃入れて呪縛を発動させなくては……!


 だが俺が動くより先に魔王はそのイケボで大きく声を上げた。


「佐藤太郎! 契約に従い俺と盟友の絆を結べ!」

「……………………ん? 誰?」

「なに……!?」


 何が起こったか解らないと、唖然とした表情でお互いに顔を見合っていたけど俺はすぐに思い出した。


 そうだ、俺はあの時ノクスに「佐藤太郎」という偽名を告げていたんだった。


 俺の名前は龍鳳胤(りゅうほういん)くろがねだ。

 思い浮かべるだけでも嫌になる……。


「残念っすね、俺はそんな素敵な名前じゃないっすよ」

「小僧ぉぉぉ!」


 一言告げ絶影で踏み込み、一瞬で距離を詰めて黒狩による斬撃を放つ。

 だが重傷を負っていてもなお衰えない巧みな防御によって刃が魔王に届く事はなかったけど、幻影刃の魔力削りが決め手となり呪縛が発動。


「くっ……そがぁぁぁ……!」


 ここにきてようやく魔王の動きを封じることに成功した。

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― 新着の感想 ―
悪の夏目で草生える
ここで本名を教えないことが響いた! ある種の伏線回収だねぇ。いいねぇいいねぇ。こういうの大好きだ!
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