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さあ仕切り直しだ、ここからは本当の一対一。
余力的にダラダラと戦ってたらこっちの敗けは確実。最悪でもあと十分以内に決着するのが好ましい。
その理由は、絶影を発動した時点から魔力の消費量が爆発的に増加したからだ。
今、俺が発動しているスキルは『絶影』『感覚強化』『身体強化【S+】』の三つ。
発動数が二つだった時を『燃費は悪いがそこそこ走れる車』くらいとするなら、今はまるで『燃料タンクに穴の空いた車』だ。
魔力がガンガン減っていくのが体感でも解る。
もし紫スキルポーションのバフが無かったら、この三種強化状態は魔力全快でも継続できて三分くらいだと思う。ウルト○マンみたいで格好良いけど今はそんな場合じゃない。
省エネスキルばかりだった闇の手だけに、個人的にはこの消費量には違和感を感じる。
何故ならこのスキルの本当の持ち主も、魔力総量はそんなに多くない人だったと今までの経緯からなんとなく想像がつくからだ。
仮に持ち主さんが俺とそう変わらない魔力量なら、これでは燃費が悪過ぎて継戦能力が死んだも同然。
救世の翼の時も言ったが仮にもエクストラスキル、そんなピーキー過ぎる仕様であって欲しくはない。
そこで少し考えてみたけど、原因は絶影と身体強化の並行使用ではないかと思い至った。
スキルの詳細からして絶影の本来のコンセプトは、筋力と魔力のハイブリッドだ。強化スキルではなくあくまで補助スキルなのは、筋力部分の出力を自身の脳のリミッター解除で賄うからだろう。
俺はその自力で賄うべき筋力を魔力によって補っている、身体強化スキルを使っている訳だからな。
つまり全てを魔力任せにしていることが、この異常な魔力の消費量に繋がっていると考えれば絶影の燃費の悪さも納得がいく。
長々と説明してしまったけど、要するに今からやることはこの一言に尽きる。
速戦即決だ。
「ふん、そろそろ終わらせてもいいが、もう少しお前のスキルを見て──ぐっ、速いな……!」
ガキン──と響き渡る剣戟の音。今度は攻守交代といこう。
「悪いけど、喋ってる暇はないっす」
瞬時に間合いを詰め、鉈による一撃を見舞うが段平の腹で防がれてしまう。それでも防戦一方だったさっきまでと比べれば随分マシになった方だ。
それにしても、あのでかい段平で今の俺の速度についてくるってか……。
何かスキルを使用している可能性があるとは言え、それ抜きでも魔王は武人として相当凄腕らしい。
なら──。
「どうやら時間がないらしいな。そのスキル、相当に消耗が激しいんだろ。何か他に手はないのか? 馬鹿の一つ覚えで斬りかかってきても速いだけじゃ俺は倒せんぞ」
「そうっすね」
『闇の手スキル、“幻影刃”を発動』
先程同様低い位置から高速で迫り逆手の鉈を振るう。が、予想通りに魔王は余裕で防ぐ。まるでこっちの動きを予知しているかのようだ。
しかし今回の狙いは鉈を当てることじゃない、その後だ。
防御された攻撃の軌道をなぞるよう追随する黒い刀身が、霧のように段平をすり抜け魔王の腕を切り裂く。
「ぐっ、いや、傷は浅い……。新しい攻撃スキルか……!」
流石の魔王も面食らったらしい。
俺も初めて使うからどうなるものかと思ったけど、実に使い易い。武器を振るうと残像のように少し遅れて黒い刃が出現し、防御不可能の斬撃を見舞う。
初見の相手なら確実に避ける事は不可能。
惜しむらくは肉体へのダメージが低いとこだけど、物質をすり抜けるのだから仕方ないか。
『スキル:幻影刃』
『ランク:眷属』
『フォーム:能動、特殊攻撃、奪取』
『闇の手スキル。“絶影”発動時のみ使用可能。特殊魔力が刃となり自身の攻撃が連撃となる。魔力の刃は斬った者の魔力を減少させる。その際相手の魔力の一部を自身魔力としても取り込み、特殊魔力に変換する。刃に実体は無く防御不可、ただし肉体への直接ダメージは軽微』
RPGで言うならMPダメージとMPドレインってとこだ。
本当ならこのスキルが絶影の継戦能力を補う役目なんだろうけど、今の俺にとっては焼け石に水程度の回復量。どうしても決着は急がなければならないらしい。
だがすり抜ける刃を見て魔王が怯んだ隙に、奴の身体に魔弾を撃ち込んでおいた。
これで準備は整った。




