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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい

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 止まらない魔王の猛攻。

 一見乱雑に感じるその一挙手一投足の中には、熟練の技術によるいくつもの罠や陽動が含まれている。


 視覚の情報に惑わされるな、本物の狙いは初動の音が示している。それさえ聞き逃さなければなんてことはない。集中して、一つ一つ素直に避けていけばいい。


 だけどそれと並行して次の手を考えろ。避けるだけじゃジリ貧は確実だ。


「どうした、それほど多彩なスキルを持ち合わせているくせに攻撃スキルは持ってないのか。なら身体と技術をもっと磨いておくべきだったな」

「くっ……!」


 饒舌に言葉を紡ぎながらでも、魔王の一太刀は速く鋭くそして正確だ。気を抜けば真っ二つ、そんな肝が冷える思いで紙一重の回避を繰り返している。


 確かに魔王のような武人なら攻撃をスキルに委ねる必要は無いのだろう。身体強化で底上げした自身の膂力と磨き上げた技術が既に攻撃スキルのようなものだからな。


 しかし、んなこと言われてもこっちは異世界に来てまだ三日目だっつうの。

 異世界転移なんていう予想だにしない事象に対して、あらかじめ身体を鍛えて戦闘技術を身に付けてる奴なんているかよ……。


 …………いや、いた。あくまでも「俺の予想通りなら」だけど、少なくとも一人。


 スキル『闇の手(ナイトレイド)』の正当な付与者だ。

 この人はスキルの内容から考えて、恐らく一流の身体能力と殺傷技術を身に付けていたと思われる。


 そしてそれと共に思い出した重要な事がもう一つ。

 急ぎ確認する為、左手の黒い刻印に触れてログを呼び出す。


 正直、思考をログの方へ僅かにまわすだけでも今は命懸けだ。それでも確かめる価値がある、何故ならこれ(・・)はこの局面を逆転へと導く切り札になるかもしれないからだ。


 思った通りだった、脳内ログに新しいスキルが刻まれていく。


闇の手(ナイトレイド)スキル、“絶影”の制限を解除』

闇の手(ナイトレイド)スキル、“呪縛葬送”の制限を解除』

闇の手(ナイトレイド)スキル、“幻影刃”の制限を解除』

闇の手(ナイトレイド)スキル、“魔弾”の制限を解除』


 そう攻撃スキルは元々あったのだ、俺の身体能力不足で使用不可だったからすっかり忘れていたけど。

 そして今その制限は解除されている、考えてみれば当たり前だ。


 俺の貧弱な体では身体強化【S+】を持ってしても牌谷さんやノクスのような超人的な身のこなしが無理なのは先の通りだ。それでも今の強化された身体能力を普通の人間と比較するならそれこそオリンピック選手やプロスポーツ選手にだって負けはしないと思う。


 闇の手(ナイトレイド)の保持者がどれほど凄絶な訓練を受けて身体能力を鍛え上げてきた人間だったとしても、あくまでもそれは通常の人間基準。


 要するに身体強化を使えば俺の体でも一流の能力水準に達することができ、一時的に闇の手(ナイトレイド)をフルスペックで運用できるという訳だ。


 ならば、と魔王から少し距離を取って閉じていた左目を開く。


『潜影を解除』


「むっ、なぜ姿を現した?」

「どうせ察知されるんすから意味ないと思って」

「諦めたか? いやそんな目じゃねえな」


 魔王は一目で何かあると気づいたらしい。


 ここからはコソコソ動くのはやめだ、何より解放された闇の手(ナイトレイド)のスキルは両目と感覚強化をフルに使った全開の視力でないと扱えそうにない。


 よし、まずは小手調べといくか……。

 そう思ったその時、皮膚に違和感を感じた。ピリピリするような、そうどこかで感じた事のある不快感。


 そうだ、ルサーリアさんの魔力毒素を肌に浴びた時と似ている。と言うことはまさか……。


『毒物耐性発動』

『猛毒を検知、分解中』


 やっぱり、恐らくアヌギスだ。元呪毒湿原のぬし、その出自からして毒を扱うのは当然か。

 牌谷さんは大丈夫だろうか……、魔王こっちに手一杯で気に掛ける余裕すらなかった。

 正直、さっきは魔王から目を離せば死んでいたからな。


「クロ! キヅナちゃんが!」


 慌てるエルの声、嫌な予感しかしない。


 魔王を目の端で捉えながら牌谷さんへと視線を向ければ、青い顔で息を荒くする彼女が目に入った。

 目立った外傷は負ってはいない、小さな傷から僅かに血が流れる程度だ。どちらかと言えばアヌギスの方が体のあちこちに大きな斬創ざんそうを刻まれ、無惨な姿を晒している。

 それでも両者を取り囲む空気が、優位に立っているのはアヌギスの方だと如実に物語ってくる。

 

 周囲にルサーリアさんの時のような瘴気みたいなものは漂ってはいない、しかしアヌギスが何かしていることは確かだ。


「どうした、こないのか。なんだ小娘の方が気になる──」


 魔王の言葉を待たず駆け出した。


 アヌギスがその太く強靭な尾を持ち上げ、牌谷さんにとどめの一撃を振り下ろそうとしているからだ。

 彼女も毒の影響か避ける余力はないらしい。ふらつきながら、操血の太刀をなんとか構えるのでやっとだ。


 その位置までは俺からはおよそ十数メートル離れている。アヌギスが靱尾による重撃を打ち下ろすまで一秒と掛かりはしない。

 ここからでは間に合わない。


 多分俺が苦戦しているのを知っていたのだろう、彼女は助けを呼ぶことも弱音を吐くこともしなかった。不甲斐なさ過ぎるぞ、俺。


 ようやくここまできたのに、彼女を死なせるのか……。


 いいや、ダメだ、絶対にやらせない──。


闇の手(ナイトレイド)スキル、“絶影”を発動』

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