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見回せば思ったより広い部屋だ。
床に頃がっている人間の数は、ざっと数えただけで四、五十人くらいはいるな。
「すいません……起きてください……」
静かに、間違っても部屋の外に声が盛れないように足下に横たわる人に声を掛け揺すってみるが反応はない。
他の人にも試みるが同様に反応はなし。
みんな一様に目は半開きで虚ろ、口唇が僅かに動いている。これはさっきの斉藤さんと同じ状態だ。
解体作業員の二人組が口にしていた魔女の毒とやらの症状なのだろうか。
それならなんで俺は目覚める事ができたんだ。
疑念を抱きながら視線を落とした先で一つ目についた。
転がっている人達の左手の甲に緑色の刻印のようなものが刻まれている、確認した限り周辺の人全員にある。
まさかと思い自分の左手の甲を確認すると、そこにも例外なく同じように緑色の刻印があった。
そうか、これがスキルの兆しか。
何の気なしに右手の指で刻印に振れた次の瞬間、驚きで足がよろけ転びそうになった。
まるで脳内に直接文字が羅列されていくような初めて味わう奇妙な感覚。
人は知識を得る時に、知る、考える、理解するという行程を辿るが、これは知ると考えるをすっ飛ばして一瞬で俺に全てを理解させてくる。
『スキル:毒物耐性』
『ランク:レア』
『フォーム:自動及び常態、耐性』
『体内に毒物が侵入した場合に自動で発動。魔力を消費することによって毒物を分解し抗体を生成する。分解の行程で魔力を消費し尽くした場合、分解効果は失われる。一度分解した毒が再び侵入した場合、常態効果により作用を無効化、若しくは弱毒化し作用を抑えることが可能』
『レベル:Ⅰ→Ⅲ』
『強毒の分解によりレベルが上昇』
これがスキル……。
そうか、俺だけが目覚めることができた理由はこれか。それに魔力……、ゲームや漫画なら生命力そのものや精神的なスタミナに該当するが。
異様な身体のだるさはこのせいなのかもしれないな、毒は分解したはずなんだから。
しかし見た限りそう珍しいスキルには見えないよな。
この程度のスキルに対する対策ができてない辺り、この異世界の奴らもまだまだこのやり方は模索中って事なのか。
ちなみに流れ込んだ知識によると、今のはスキルログというらしい。刻印に触れるか、『ログ』と口にすると脳内にスキルの現在状況が瞬時に網羅されるのだ。
そうだ、他の人達のを触ったらどうなるんだろう。
一番近くに倒れている人の刻印に触れてみるがなにも起こらない。
他人のスキルを覗き見る事はできないってことか。
いや待て、こんなことをしてる場合か!?
そうだ、逃げないと……でもどこへ……。
当てはない、けどただ捕まって殺されるぐらいなら刺し違えてでも一人くらいは殺してやりたい。
なにか無いか探そう。
まずは斉藤さんが殺された寝台の辺りに寄ってみる。
途中、人を踏まないように下を見て歩いていると寝台の付近に転がっている人の左手の刻印は青色だった。
上位から順に抽出するってことかな。
しかしそれなら青より少なかったほかの色の人はどうなった。
今探した限りでは緑と青、それと抽出済みであろう紫以外が確認できない
辺りを探る最中、あるものを見つけた。
うっすらと紫の淡光を放つ液体だ。




