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「おい、取り敢えずエクストラスキル全員の抽出は終わったんだし、ちょっと休憩しようぜ」
「ああ、この人数運ぶのは骨が折れたわ。さすがにちょっと疲れたぜ」
凍りつくような会話の中に興味深いワードが飛び込んだ。
エクストラスキル? おそらく今の流れなら斉藤さんもその一人。てことは紫はやはり上位スキル、そしてスキルの話自体も嘘ではないってことだ。
それに抽出って言ったな、スキル保持者から取り出すって意味しかないよな。
…………なんとなく読めてきた、この国は異世界人を召喚してスキルを与え、それを取り出し何かに利用している。
何かのエネルギー源か、それとも取り出したスキルを他の人間に移し変えることが可能とか、まあその辺なんじゃないだろうか。
「しかし、今年の紫は多かったなー。いつもは百人に一人いるかいないかだろ?」
「だな、まあ大当たりの年なんじゃねえか? っても俺らには関係ねえけどな」
「ああ、あれだろ。飲んだら死ぬってやつ」
「それそれ、スキルが強い分普通に飲んだら体が壊れるんだそうだ。俺らがスキルを貰えるとしたらせいぜい青くらいまでだろうな」
飲む? 抽出したスキルは経口摂取するってことか?
しかしまあ、ご都合主義の物語くらいに喋ってくれて助かるな。
つまりあの国王達はスキルを取り出して自分達で使おうって算段のようだ。
例年の話が出るって事は初めてでもないらしい。
しかも口振りからして一度や二度じゃない、通りで手際が良かった訳だよ。
まあ、腹は立つがこのやり口自体は理解できなくもない。
紫がどれ程強力なスキルか知らないが、召喚した異世界人にそれを使わせる事がどれほど危険かは想像するまでもない。
勇者を地でいくような品行方正で良い奴ばかりの世の中じゃないからな。
仮にこの国を乗っ取れてしまうほどの強力なスキルがあるとしよう。
やばい奴がそんなスキルを得てしまった日には、この国を地獄絵図に変える可能性はゼロじゃない。
漫画や小説のように勇者を呼び出して国を救ってもらおうなんてのはギャンブルでしかないって事だ。
国軍が敵わないほどの敵を単身で滅ぼし世界を救うくらい最強の勇者なんて、裏を返せば世界を滅ぼせる魔王と同義なんだから当然だ。
なるほど、スキルの取り出しと再付与が可能な技術があるなら、このやり方は安全性と効率を兼ね備えた有効な手段と言えるわけか。あくまで倫理観は置いておいてって話だが。
しかし理解はできても「はいわかりました」と承服できるものじゃない、怯えながらも怒りは湧いてくる。自分が当事者なのだから当然だ。
まあそれらが判明したところで、今のところ俺にはなんの手立ても無いのが口惜しいばかりだが。
「よし、最後のエクストラはもうほっとくだけだし飯でも食いに行くか」
「こいつらほったらかして大丈夫かよ?」
「この部屋の奴らはあの魔女のスキル毒で脳が壊れちまってるから平気平気。上の奴らも贄の夜を楽しんでるんだから俺らだってちょっとくらいさぼってもいいだろ」
「だな、せっかくだし俺らも楽しまねえとな」
二人が部屋から出ていった。
人生でこんな経験は二度とごめんだっていうくらい心の底から安堵した。
会話からしてしばらくは戻らないだろう。
それが解っていてもなかなか動けない。
身体は完全に感覚を取り戻しているが、やはりまだ恐怖は拭いきれていない。
忘れ物でもしたあいつらがもし戻ってきたら、あいつら以外の誰かが入ってきたら、そんなことばかりが脳裏をよぎる。
だがこのまま動かなければどのみち末路は同じだ、立て、起き上がれ俺。
心を決め、ゆっくりと用心しながら上体を起こす。身体は思った以上に固くなっていたが問題なく立ち上がれた。
高い視点から見て、まず驚いたのは部屋に並べられた人の数だった。




