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クソ生意気な軟体生物め、いや賢者の石なら物質か。
まあ確かに気持ちはわかるけどな。
俺がエルの立場だったとしよう、よく解らん地味男と牌谷さんから主人を選べと言われたら俺だって牌谷さん一択だろう……。
だが現実はそんな選択肢など無い。
契約者はもう俺に決まっているのだからな。
その事実は何をどうしようが覆らんのだよざまぁみろ、ふははははは!
「お前、なんかムカつくこと考えてルナ……」
「べっつにぃ」
「むぅ、『年齢イコール彼女いない歴』みたイナ見た目のくせに態度が悪いんダヨ」
「くっ……!」
くぅ、まさにその通りだから言い返せねぇ……見た目関係ねえだろ! マジで殴りてぇ……!
だがこんな愛玩生物のような奴に暴力を振るうなど、牌谷さんの前ではやれるはずもなし……。
「コラ、エルちゃん! そんなこと言ったら失礼だよ!」
人差し指でエルを軽く突っつきながら、叱咤する牌谷さん。
ああ、ありがとう牌谷さん。さすがです。「クロ君そんなことないよ」とかのフォロー全くないのがある意味で追撃になってるけど、ありがとう……!
「うぅ、ごめんキヅナちゃん。今回はキヅナちゃんに免じて謝ってやるっテバ」
「……………………」
「……………………」
はよ謝れや! 宣言しただけで、まだ牌谷さんにしか謝ってねえぞテメェ!
くそ、まあいいや。コイツには言いたい事も聞きたいことも山程あるけど、今は言い合いしてる暇も悠長に情報交換している時間もない。
何やらこの城の事に詳しいようだし、ひとまず先を急ぐほうに舵を切って質問をしよう。
「ふぅ、今は口喧嘩してる場合じゃないよな。エル、君はもしかしてこの城の内部構造を知ってるのか?」
「まあ……、この城のことはよく知ってるヨ」
「そうか、なら話が早い。道案内してくれるか?」
「構わないけど、そんな面倒臭いことしなくても大丈夫ダヨ」
そう言うとエルは羽をパタパタさせながら俺の左手へと近づき、その短く柔らかい手のようなものを伸ばして刻印に触れてきた。
『信じたくないけど、ほんとに契約者はお前みたいダネ』
これは、さっきと同じだ。
スキルログで話し掛けられるのか。
『スキルログに書き込むイメージで、強く念じながら何か言ってミロ』
む、こっちからもログで返事ができるのか。
『エル、これでいいか?』
『上出来ダヨ、じゃあ本題ダ。契約は僕を召喚した時点で結ばれてるカラ、あとはお前の知識に僕の知識をリンクさせるヨ』
『それをしたらどうなる?』
『僕の知識をお前の脳に共有させることができるようになるヨ。簡単に言えば僕の知ってる事を君も見てきたかのように知ることができるんダ。これが僕の能力の一つダ。ただし、お前が教えて欲しいとログに書きこんだ事しか共有はできナイ。何千年と世界を見てきた僕の知識を一度に全て共有したら、お前の人格や精神が崩壊しちゃうからネ。もう一つ、これは当たり前だけど僕の知っている事しか教えられないヨ。未知の事象は僕にだってあるカラ。さあ契約者よ、リンクするカイ?』
『頼む、そしてこの城の知識を俺に共有して欲しい』
『解ったヨ、今からお前が僕のご主人ダ』
リンクは一瞬で終わった。
途端に流れ込んでくるこの城の知識。
構造から隠し部屋に至るまでの全てが、もともと知っていたかのように頭に浮かんでくる。
「エル、お前凄いな……」
そのあまりの衝撃と感動に、さっきまでの怒りなんかすっかり吹っ飛んでいる。
それどころか、逆に誉め言葉が口をついて出てしまった。
「奇跡の存在って言ったダロ」
エルは得意気な顔で可愛い羽をパタパタさせている。
こいつ、これが能力の一つって言ってたな。知識のリンクだけでも十分便利なのに、まだ他にも能力があるってことか。
ムカつく奴だけど、とんでもない使い魔かもしれないぞ……。




