表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/105

21

 さあ、何から始めようか。あまり迷う時間はないぞ。


 最優先にやることは闘技者の彼女を連れてこの場から離れることだろう。


 いま、観客達は賭け事の勝敗への抗議や、大本命の魔女がやられた事へのブーイングで大騒ぎになっている。

 これなら彼女を連れていても容易に逃げられるか……。


 だが騒動を治める為だろう、魔王が特別席から身を乗り出してきた。


「安心しろ! これはちょっとした余興だ、 毎度同じではお前達も飽きるだろうと思ってな!」


 何が余興だ。白々しい奴だ……!


 それでも、魔王の言葉に魔族達は少し疑心暗鬼な様子を見せながらも納得したように静まりかえっていく。


 それには女闘技者も黙ってはいない。


「適当言うな魔王! 正真正銘十回勝ったよ! 約束通り元の世界に返してもらうから!」

「そう言えばそんな約束、していたな」


 魔王の野郎、悪い顔してやがる。

 約束を守るつもりなど更々ないのは知ってるからな。


 なんかムカついてきたぞ。そうだ、コイツらにいつか目にものを見せてやりたいなら、まずは今しかできないことをやってみるのがいいのかもしれない。

 やれることは全てやっていこう。


救世の翼(エル・メサイア)スキル、“未来視”を発動』


 制限時間はちょうどいまさっき終わったところ。

 ここからは擬似世界だ。


 ここで『未来視』を使う理由、それは魔王に肉薄できる絶好のチャンスだから。

 もちろんある程度の距離があっても声は拾えるが、間近でしか感じ取れない貴重な情報もあるかもしれない。

 スキルポーションのお陰で魔力量も十分に残っているし、情報収集するなら今ここしかないと思ったんだ。


 そりゃあ彼女を連れての逃走経路の確認とかに使ったほうがこの先の安全性は増すかもしれないが、そこに関しては少し考えがある。


「小娘が、貴様との約束など俺が守ると思ったか。ククク、馬鹿な奴だ」

「!? クソ野郎! 殺してやる!」

「できるならな。おい! 我が国民共よ! 聞け! 我が寵姫を害したその小娘、仕留めた者には何でも好きな願いを聞いてやる……」


 余興という言葉に乗せられた観客全ての視線が魔王へと集まっている

 そんな群衆を一瞥した魔王は、颯爽と背を向けて最後に一言だけ発した。


「殺せ!」


 その言葉と共にリングを囲む金網に取り付けられた複数ある入口が一斉に開かれる。

 それと同時に我先にと闘技場を囲み、女闘技者へと迫る魔族達。


 リングの回りに足場はないから、いきなり包囲はされないだろう。彼女ならそう簡単に殺されはしないはずだ。


 ごめんなさい……! 擬似世界ここでは貴女あなたのことは囮に使わせてもらいます。


 擬似世界とはいえ半端ない罪悪感だ……。


 でもあくまでもこれは擬似世界、気持ちを切り替えろ、俺。

 さあ、巻き込まれないうちにさっさと控室へ戻らないと……!


 一本橋を渡り、丸い部屋へと駆け戻る。


 魔王の特別席へ通じる道はなんとなく心当たりがある。


 ここまで来る途中に見かけた登り階段だ。


 あった……!

 

 少し長くて急なその階段を登りきると、豪奢な調度品が設えてある部屋が見えた。


 なぜ外から部屋の内装が見えるか、それはこの階層全体がドアのない仕切り無しの構造だからだ。


 魔王の休憩所と思われるその場所には衛兵とみられる魔族が四人立っている。


 そんなのがいるってことは間違いない。

 どうやらその奥から出られる広いバルコニーが、さきほど魔王が試合を観戦していた特別席のようだ。


 護衛達には全く気取られてはいないので、忍び足でバルコニーへ足を踏み入れてみる。


 外にも衛兵が二人。


 そして美女を一人侍らせて高そうなソファーに座り、リングで繰り広げられている乱闘を高みの見物と決め込んでいる奴が一人いる。


 イケオジこと魔王だ。


 とうとうご対面……まあ向こうは俺の姿が見えてないけどな。


「おい、誰かきたか?」


 っ!?


「いえ、誰もきておりませんが」

「そうか、なんだ気のせいか


 心臓が止まるかと思った。さすが魔王と崇められるだけあって勘の良さは他と違うのか……。


 少し離れよう。広いバルコニーだ、端までいけばだいぶ距離は取れるし声は十分聞き取れる。

 しかし未来視と解っていても怖いもんは怖いな、心臓の鼓動がうるさいくらい鳴ってるよ。


 だがそれより何よりも、さっきから気になっている事が一つある。


 それは侍らせている女だ。


 あれは、人間だ。今度は間違いない、顔つきが完全に日本人だから。


 それに昨日見た覚えもある。


 そう、女神像の部屋、才与の儀が執り行われたあの時……。


 そうだ、思い出した。

 この子だ、最後のエクストラスキル保有者は。

 左手の甲にもバッチリ紫の刻印がある。


 そう言えば紫六人の中に一際目立つ美人、いや美少女か……まあそんな存在がいたのを認識している。

 周りの男連中が見とれて騒いでいたから印象にはよく残っている。


 まるで「俺は見とれていなかった」そんな言い方をしてしまったが……、少し違う。


 俺みたいな陰キャ地味童貞はそんな高位の存在を凝視などできない。

 そう、「しない」のではなく「できない」のだ。

 あの時は見ていないふりをしながらチラチラ視線を送るので精一杯だったよ。


 うーん……自分で言っといてなんだけど、我ながらなんとも情けないなぁ……。


 おっと、話を戻そう。


 彼女の歳は十代後半くらいに感じられる、高校生あたりだろうか。ただの童顔かもしれないけど二十歳以上には見えない、まあはっきりと直視していないからなんともだけど。

 どうやらエクストラスキル持ちであっても、権力者に気に入られたら抽出部屋送りにはならないようだ。

 解体屋の二人が「上玉はお偉いさん行き」って言ってたのはこういうことか。

 

 しかし、おのれロリコン魔王。なんてうらやま……いや汚らわしい奴だ。鉈で突き殺してやりたい、けど今は我慢だ。


 なんだかんだ言っても魔王だ。とてもそんな攻撃で殺せるとは思えないし、何よりこいつからはもとの世界へ帰る情報を聞き出さなくてはいけない。

 だからこそ未来視の魔力は無駄遣いできない。


 このまま情報収集続行だ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ