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さあ、しょうもないことで落ち込むのはそこそこにしよう。気を取り直して状況を整理だ。
と、その前に念のため片目は閉じておこう。
『闇の手スキル、“潜影”を発動』
よし、これで誰か来ても問題ないな。
さて、昨日眠らされたのは晩餐会の最中、夕方くらいだろう。
その後、目が覚めたのはたぶん夜だ。解体屋の二人は王達は贄の夜を楽しんでいると言っていたし。
そしてあれから丸一日弱眠っていたことを考えるなら、多分、今も夜だ。
異世界は一日が二十四時間ではないとか、地球とは時間の流れが異なるとかだったらその限りではないけど。
でも異世界由来であるスキルの制限時間が四十八時間なことと、その経過の様子を見た限りではその心配は多分ない……と思いたい。
つまりスキル潜影を持つ俺が動くなら今が最良と言うことだ。
慎重に考えすぎだと思われるかもしれないけど、それぐらい恐怖している。
もしここを出た時、何かの考え違いで外が日中だったとしたら俺は下手すれば殺されるん場合だってあるんだ。
本当ならここから動きたくはない。
でもそろそろ何か食べるか飲むかしないとまずい。飢えや渇きで動けなくなる何てのは一番お話にならない。
こういう状況だから仕方ないけどいつも選択肢が少ないな。
外に出るしかないのはわかっていても、歩こうとすると膝が震える。
それをなけなしの勇気で無理矢理押さえ込んで出入口へと歩み寄り、ドアの覗き窓から外を確認。
よし、見張りはいないな。全員の抽出が済んだからもう必要が無いと言うことなのか。
それなら尚のこと好都合、ドアを開けてここを出よう。
しかし、ドアノブに手を掛けて一つ気になることを思い出した。
あれ? そう言えば紫色は六人いたはずだよな、一人いない。考えられるとしたら……そうだ解体屋の二人組がなにか言っていたな……。
思考が脇に逸れ、僅かに物思いにふける。それが良くなかった。
突然勢いよく開け放たれたドア、そこから怒号を飛ばしながら足早に入り込んできた奴らに反応するのが遅れてしまった。
「おい、ほんとに盗んだのはお前じゃないよな!」
「そりゃこっちのセリフだ! このまま犯人にされてたまるかよ!」
この声は解体屋の二人だ、やばいっ……。
「うおっ! な、なんだ!?」
思いっきりぶつかってしまった。向こうもかなり驚いている、まあそりゃそうだ。
『接触により潜影が解除』
他人との接触は潜影のスキル解除条件の一つ……。
何て思うより速く、認識阻害は解除されてしまった。
「ひえっ!?」
……つい間抜けな声がでてしまった。
べつにスキルが解けて動揺しただけじゃない、入ってきた解体屋の姿に目を疑ったからだ。
二人の大男が人間の姿ではなくなっている。
淡い緑色の肌、口には逆さに伸びる猪のような牙、ファンタジー物でいうオークって奴に近いのだろうか。
てことは俺たちを召喚したあの王達も、人間の姿に見せかけだけの化け物だってことか?
今まで幻覚みたいなものを見せられてたんだろうか。
正直、背筋が凍った。
そりゃそうだ。こんな化け物が相手だった、なんてのは流石に想定外だ。
しかし今は幸いにも化物達も何が起こったのか理解できず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして止まっている。
取り敢えず落ち着け、落ち着け、落ち着け、俺。
外に見張りはいない。相手は二人だけ、おそらく先の会話からしてこいつらはスキルも持ってはいないはず。見た目は強そうだけど落ち着いて対処すればなんとかなるはずだ、頭を回せ、集中しろ。
くそっ、やっぱ怖いって……。




