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エクストラスキルを手に入れて何を困る事があろうかと、そう問われたら答えは二つ。
一つ、今の俺は魔力をほとんど使いきっていること。
二つ、救世の翼に属する全てのスキルが魔力消費型という点。
今の俺の魔力では恐らくどのスキルも使えないだろう。
まあつまり宝の持ち腐れ。仮に解体屋の二人が今ここに戻ってきた場合、俺は無力なスキル無しの一般人と何ら変わらないって事になる。
いや、それどころかだるさで身体が言うことを訊かないのだからそれ以下、人の形をしたナマコみたいなもんだ。
こんな奴、殺すだけなら三秒とかからない。
ゆえに困った、という訳だ。
紫スキルポーションを飲んで魔力は全快以上だったにも関わらず、聖女の祈り一回でこの体たらくだ。
もしかしたら紫スキル保持者は、内包している魔力量が凡人とは比べ物にならないくらい多いのかもしれない。
自身や仲間を健全化したところでしばらく足腰が立たなくなるなら戦闘やダンジョン攻略では使い処に困るし、安息領域と絶対防御にいたっては魔力の最大量が多ければ多いほど強力なスキルとなる設計だ。
これは本来の適正者以外は使いこなすのが難しいということだろうか。
それと更に言うなら攻撃スキルが一つもないのも心許ない。
どうやらこのスキルは完全に補助防御特化型のようだ。
いや、話が逸れたな。何が言いたいかと言うと、またもやこの状況を打開する方法は一つだけってこと……。
それは紫スキルポーションをもう一本飲む、だ。
正直、この液体を見るだけで吐きそうになる。
食中毒になると原因になった食材に対して無意識に嫌悪感を抱く事があるが、あれの何倍も酷い感覚にいま襲われているところだ。
そうなるくらいの恐怖体験だった。
でも………………、飲む。
身体が拒否するより早く、瓶を逆さにして一気に喉の奥へ流し込んだ。
懸念はいくつかあった。
一つは違う人間から作られたスキルポーションを同じ毒として扱ってくれるかどうかが解らない。
もし別の猛毒と判定された場合、今のスキルレベルで対処可能かも不明だ。
もう一つ、仮に同じ毒と見なされて常態が発動したとしても無症状で済むか作用が抑えられるだけなのか解らないと言うのも不安要素だ。
そして最後に、聖女の祈りは使用不可と言う点。対処不能なら今度は間違いなく『死』だ、身体復元スキルに匹敵する回復スキルが都合よくそういくつも入手できるとは思えないしな。
それでもだ、結局飲まなかったとしても死ぬのが数時間遅くなるだけの話。なら飲むしかない。
飲むと決めたなら一秒でも早く飲んだ方が生存率が上がるのもまた明白だから、今度は迷いもなかった。
さっきと同じく、すぐに症状は現れた。
まず魔力が回復する、だがこれに関しては前回と違い『漲る』と言うほどには回復しなかった。例えるなら腹八分くらいと言った感覚だ。
もしかすれば今度のスキルが救世の翼より弱いのか、それとも薬物に耐性が出来るのと同じ現象で効果が弱まったのか、もしくは……。
おっとよくないよくない、すぐに思考が脇に逸れるのが俺の悪い癖。今はそんなことよりスキルログだ。
慌てて刻印に触れログを呼び出す。
『毒物耐性発動』
『免疫獲得した猛毒を検知、常態効果を発動』
よし……、よしよし、本当に心底ホッとしたよ。このスキル、ランクが低い割にはすごく優秀だ。
症状は今のところ頭が少しクラクラするのと中度の吐き気、それに指先の痺れくらい。
吐き気に関しては毒の症状なのか、スキルポーションを一気飲みしたせいなのかは解らないのだけど。
左手を見れば、刻印が僅かに変化していくのが解った。緑から紫のような目に見えた変化ではないが、色が段々と濃くなっていく。
同色のカラーセロハンを重ねた時のような感じだ。
さあ、次はこの先の命運を決めるスキルの確認をしよう。




