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木漏れ日  作者: 双鶴


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3/8

3話

呑川緑道は、午後の光に包まれていた。


川沿いに並ぶ桜の枝が、歩道の上に影を落としている。葉の隙間からこぼれる光は、風に揺れて模様を変え、地面に淡いレースのような影を描いていた。真一は、スマホを構えながら歩いた。光を探しているというより、光に導かれているような気がした。


何枚か撮った。枝の重なり、影の濃淡、遠くに見える自転車のシルエット。画面にはそれらが映っていたが、どこか無機質だった。撮るたびに、何かが足りない気がした。誰かと話したいと思った。誰かと、この光を共有したいと思った。


翌週、昼休み。門前仲町の職場から歩いて数分の深川不動堂へ向かった。


境内は香の匂いに満ちていた。参道の両脇には店が並び、観光客と参拝者が混ざり合っている。真一は、本堂の左手から地下へと降りた。そこには「祈りの回廊」と呼ばれる空間が広がっていた。


壁には巨大な数珠が連なり、両側には無数のクリスタル五輪塔が並んでいた。それぞれの塔には小さな不動尊像が納められ、淡い光を反射していた。静寂の中、真一はゆっくりと歩いた。誰かの願いに触れるように、壁を見つめながら。


光はあった。だが、それは冷たい光だった。蛍光灯の白い光が、祈りの言葉を照らしていたが、どこか無機質だった。真一は、出口へ向かう階段を上がった。


本堂では、ちょうど祈祷が始まっていた。堂内の奥、護摩壇の前で僧侶が真言を唱えている。太鼓の音が空気を震わせ、炎が立ち上っていた。その炎は、ただ燃えているのではなかった。揺らめきの中に、何かを浄化する力があるように感じた。


暗闇の回廊を抜けて見た炎は、まるで心の奥に差し込む光のようだった。


撮りたいと思った。だが、堂内は撮影禁止だった。スマホをしまい、ただ目を凝らすしかなかった。


光は、そこにあった。だが、残すことはできなかった。


その夜、夕食の席で真一は、ふとサークルの話を持ち出した。


「この前、駒沢公園で写真撮ってたら、撮影サークルに誘われてさ。スマホで撮るやつなんだけど……」


ゆかりが箸を止めた。「変なの撮って捕まらないでね」


陽斗が笑いながら言った。「盗撮で捕まらないようにね」


真一は、言葉を失った。笑いに混ざれなかった。何かが萎えた。


だが、夜になって、あの炎を思い出した。地下の暗闇を抜けて見た、あの光。誰にも見せられなくても、自分の中に残っている光。


真一は、机の引き出しから案内紙を取り出した。SdP──スマホdeフォト。少し滑稽な名前。でも、そこに何かがある気がした。


「とりあえず、連絡してみようか」


声には出さなかったが、心の中でそう呟いた。


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