表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当代魔王は勇者様!?  作者: 鬼灯 更紗
自称魔王討伐編
9/14

九話


ややありがちな展開になっちゃった気が……

精進いたします。





「お前、名は?」

「っ!?わたし、は……」


 ほんの少し、興味がわいた。地上に出てる魔族連中は、全員もうどうしようもない馬鹿ばかりだと思ってたから。だから、目の前にいる魔竜族の男に、興味がわいた。

 名前を問えば、驚かれる。まぁ無理もないか。俺がここにいるのは地上で馬鹿やってる奴らを粛清する為だし。こいつもきっと問答無用で消し飛ばされるのを覚悟してたんだろうし。

 そう考えながら、答えを待つ。俺が何もしないとわかったようで、警戒心を剥き出しだった子供達はまだ魔竜族の男の側に寄り添っているものの、こちらを睨んだりはしていない。


「何をしている?ギィラス」

「!レジフ様」


 本人が名乗る前に、レジフ達が追い付いてきた。ふぅん、ギィラスって言うのか。

 一族の王の登場に、ギィラスは驚いて俺とレジフを交互に見ている。何だか焦ってるように見えるのは、足元に纏わりついてる子供達がいて跪けないからだろうか。


「……レジフ、こいつは問題ない」

「どう言うことです?」

「ギィラスは、悪意を持って人間を害した事がない。俺の魔力が標的外と判断した」


 そう告げると、レジフはギィラスを見て、周囲で警戒してる子供達を見た後、無言で俺の後ろに下がった。納得したらしい。

 馬車から降りてきた騎士がギィラスを見て一瞬警戒したものの子供達の姿を認めて不思議そうな顔になっていたり、同じく執事然とした使い魔の手を借りて降りた王女が似たりよったりの反応をしたりと、このままだと収拾つかなさそうな気がするから、とりあえずこの町の代表者の所に連れてってもらうことにしよう。


 ギィラスの先導で町長の家に着く頃には、王女や騎士だけでなくレジフやアディスの周囲にも子供達が引っ付いていた。イデアとアースラの側にもたまに寄っていくが、少しの応対で苦手だとわかるらしく長居はしていない。

 俺の側にも微妙に寄っては来るんだが……何故か全員話かけてくる前にギィラスが回収していく。子供は嫌いじゃないからそんな大慌てで呼ばなくても何もしないんだけどなぁ。


 案内された長の家の前に、人影があった。

 ギィラスを見つけてパッと顔を輝かせたかと思うと、長いスカートをはいている事をものともせずに駆け寄ってくる。

 あぁ、これは、あれか?異種族間の相思相愛を馬鹿共に利用されたとか言う、そう言うケースか?とか思ってたんだが……うん、正直言って度肝を抜かれました。


「おじい様!」

「セシェル。何故ここに」

「見張りの魔族がいきなり光の矢に貫かれて消滅してしまって、おじい様が仰っていた本物の魔王様がお越しになったのだとおばあ様が。それで、私いてもたってもいられなくなってしまって……」


 相思相愛は相思相愛でも既に夫婦だったらしい。しかも孫までいるとか。

 どうやらレジフも初耳らしく、滅多に動かさない表情筋を目一杯使用して驚きをあらわにしている。珍しいもん見た。


「レジフ、顔が面白い事になっていますよ」


 物凄く珍しいレジフの表情はイデアの一言で元に戻った。

 セシェルと呼ばれた女性は、そこで漸く俺達の存在に気づいたらしい。やや顔を赤らめて、緊張気味にではあったが綺麗な所作で一礼してきた。彼女の父親がハーフで、彼女自身はクォーターらしい。魔竜族の血がかなり薄まっているからわからなかったようだ。

 家の中に入ると、ピンと背を伸ばして真っ直ぐに立っている威厳のある老女がいた。俺達に一礼したギィラスが、彼女の傍らに静かに立つ。


「ようこそ、おいでくださいました。わたしは町長のミランダ・ラーズウェルです」

「先程は失礼いたしました。お初にお目にかかります。町長の孫娘、セシェルと申します」

「私はフォルキス神聖王国第一王女のリーズ・アクル・ヴィラ・フォルキスですわ。今回、魔王様に無理を言って連れて来てもらいましたの。こちらは私の護衛騎士、アルマダ・スフィア」


 王女の名乗りに、全員がギョッとして俺達を見る。誘拐した訳じゃないからな。てか、漸く王女と騎士の名前がわかったな。リーズ王女とアルマダ女史か。覚えとこう。

 彼女が説明した勇者召喚のくだりで有り得ねぇって顔をされた。うん、気持ちはわかる。普通魔王を勇者に選定したりしねぇよな。


 それから手短に情報交換した結果、色々な事がわかった。

 たまたまギィラスにミランダと言う人間の妻がいて、しかも彼女が町長を務める町の住民を彼が守っていると知った自称魔王一派が大挙して押し寄せてきて、協力しないと住民を殺すと脅したらしい。しかし、ギィラス自身が魔竜族の中でも力のある方だったから、住民を一人でも傷をつけたら暴れるぞと逆に脅しつけて町の人間の安全を確保したんだとか。

 それぐらいしか出来ず、結果として俺に背いてしまったと落ち込むギィラスをレジフが宥めている。


 さて、今まで俺達は前魔王の息子が自称魔王だと思っていた。それはまぁ間違いじゃないらしい。が、ギィラスが言うにはその息子もギィラス同様脅されて無理やり旗印にされてるらしい。


「……どう言う事だ?」

「前魔王の子息……名をヒューベルと言うのですが、あいつは俺の友人で、何度か一緒にこちらに赴いた事があるのです」

「人間に悪感情は持ってない、と言う事ですか?」

「俺と同じで気を許した一部の例外にのみ、ですが」


 人間界の調理済みの食べ物は魔界にはないものだから、二人はよく食べ歩きをしていたらしい。その時にギィラスはミランダと知り合って互いに一目惚れしたんだとか。ヒューベルの方も気に入った人間が出来ていたらしい。そして、だからこそ彼も、その人間の命を盾に旗印になる事を迫られたんだとか。


「……なるほど」

「どうなさいます?陛下」

「やる事は変わらん。俺の命に背き、地上で暴れた馬鹿共を一掃する」


 ただそこに、無理やり旗印にされた前魔王の息子と、彼に対する人質を救出すると言う項目が新しく付け加えられるだけだ。




魔王様の活躍をスカッとしたと言って下さった方、ありがとうございます。

素敵に無敵にチートですが、揮い所があまりない魔王様です。

まぁ、あんまりありすぎても困るんですがw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ