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当代魔王は勇者様!?  作者: 鬼灯 更紗
自称魔王討伐編
8/14

八話


珍しく筆がのってます。

この調子で自称魔王討伐編最後まで行きたいなぁ。






 イデアとアディスが戻ってきたところで解放してきた村に怪我人がいたかどうかを確認して、治癒魔法が必要な程の怪我人はいないみたいだったから王女様と騎士を魔力で作った馬車に押し込んだ。

 加護つきの防具を身に着けてるとはいえ、流石に人間の身でひょいひょい転移を経験しまくるのは負担が大きい。魔族でも多用すると乗り物酔いに近い症状からばったり気絶したりと言う症状まで幅広く起こる。馬車って言う空間ごとの転移ならさほど負担はかからないからな。軽減効果もかけといたし。


 馬車の中は空間を弄って無駄に広くしておいた。ソファにテーブル、続きの部屋には寝室や浴室がある。人型の使い魔を話し相手兼世話係としてつけたから、不自由はしてない筈だ……多分。

 ちなみに馬車を引いてるのも使い魔。真っ黒な体毛の馬型の魔物だ。足の関節から下は青っぽい靄になっていて、空に浮かんでいる。そこそこ力のある魔物だから何気に護衛でもある。何せ雷系の上級魔法使えるからな、こいつ。


「陛下、この先に町があります」

「少し急ぐか。支点を複数破壊した事で結界が薄まりだしている」

「我等が先行いたしましょうか?」

「……いや、俺が行く」


 陛下!?とか言う驚きの声は聞かなかったことにする。

 流石に俺もここまで馬鹿な真似をしまくってるとは思ってなかったから腹は立ってるのだ、それなりに。だから、俺が統べ、守るべき民であろうと、否、だからこそ余計に、魔大公達に任せっきりには出来ない。

 召喚された直後にざっと見た限り、次の町を解放すれば後は連中が本拠地にしている城と城下町だけだ。本当は城下町の方で思いっきり力を振るおうかと思ってたんだが、結界が薄まりだしてるから次の町の魔族を脅しかねてさくっと殲滅してしまう事に決めた。

 転移を阻む結界など張るだけ無意味だったと、知ればいい。自覚して、無闇に人間を殺すのをやめてくれればもっといい。


「先に行く。馬車を守って後から来い」


 通常の転移よりやや大目に魔力を消費して無理やり転移防止の結界が張られている町の上空に飛ぶ。結界の揺らぎと、いきなり転移してきた俺への驚愕が空気中の微量な魔力を伝って届いた。

 祭具も、魔具も、大仰な儀式も、呪文すらいらない。

 ただ向かう先を決定した魔力を放つ。それだけで、町中から感じ取れた魔族の気配が殆どなくなった。

 避けれる実力を持った奴がいたのかと思いつつ閑散とした大通りに下りる。

 完全には避け切れなかったのか、あちこちに裂傷を負った悪魔族と魔獣族と、無傷の魔竜族が物陰から出てきた。


「……これはこれは、まさか魔王陛下直々にお出ましくださるとは」

「お前達の所業、目に余る」

「おや、余りましたか」

「最初に命じた筈だ。『人間を害する事は許さん』と」


 魔王の座についてから操れるようになった殺意を眼差しに乗せれば飄々としていた悪魔族の顔が苦痛に歪んだ。魔王の殺意に耐えるのは中級魔族には厳しかったらしい。

 そのまま軽く手を振るえば魔獣族と仲良く一緒に吹っ飛んでいく。民家の壁に当たる直前に、二人の身体は燃え上がり、一瞬で塵になった。

 それを見届ける事無く無傷の魔竜族に視線を向けて、俺はちょっと首を傾げた。魔力の質からして高位魔族みたいだから、無傷なのは全て避けたか防御したからだろうと思ってたんだが、どうやら俺の魔力が対象外と判断した結果のようだ。魔力の残滓すら感じられない。


「……お前、人間を傷つけていないのか」


 ぽつりと呟いた言葉に、魔竜族の男が軽く目を見開く。俺も驚いたけど、相手も十分驚いたみたいだ。

 上空から俺が放ったのは『悪意を持って人間を害した魔族』を標的とした魔力の矢。それが掠りもしてないと言う事は、こいつは俺が指定した標的ではないって事だ。

 魔王の特性なのか魔力が強すぎるからかは知らないが、俺が自分で指定して魔力を使った場合、誤作動は起こらない。やりすぎる事は多々あるけどな。


「……何故」

「上空から放った矢は、悪意を持って人間を害した魔族を標的に設定してあった」


 向こうに敵意がまったくないし、最初に俺の魔力が標的外と判断してて倒す必要性を感じないから俺は普通に相対してたんだけど、やっぱり魔王と相対し続けるのは精神的に厳しいんだろうか、魔竜族の男は物凄く居心地が悪そうに視線をあちこちに飛ばしている。

 こいつの他にはもう魔族の気配はなかったし、アースラ達が追いついてくるまでまだ時間があったから反応を待ってたんだが……何故か現在ちびっ子達に睨まれてます。

 どう見ても人間の子供達がわらわら寄って来て俺と魔竜族の間に割って入ったのだ。小さな背中に庇われてる形の魔竜族の男が非常に焦っている。


「……好かれているな」

「そ、んなことは……」

「お兄ちゃんを苛めちゃダメ!」


 一番背の高い女の子の言葉に、俺は思わず噴出しかけた。魔竜族の男は蒼白で固まってるし、近くの屋内には大人もいるようでちらほら動揺してる気配がある。

 現在進行形で睨まれてるからその台詞もわからなくはないが、随分勇気があると言うか無謀な子供達だ。俺だから良かったものの、自称魔王の配下だったりしたら出てきた途端に嬲り殺しにされてもおかしくはない。そう言う事を、平気で笑いながらする連中だ、あいつらは。


 そんな連中と、どう見ても子供達に好かれている目の前の男がどうしても繋がらない。弱味でも握られて無理やり仲間に引き入れられてたとか、そんな感じだろうか。




実は結構キレてた魔王様。

ちなみにこれ、まだ召喚当日ですw

素敵に無敵な魔王様ですからw

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