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当代魔王は勇者様!?  作者: 鬼灯 更紗
自称魔王討伐編
12/14

十二話


なんだかんだで小国に二話居座ってます。

……あれぇ?

そしておやつを作る魔王様がいますw





 小麦粉とバターと卵と砂糖。後、牛乳。

 混ぜて混ぜて、形を作って、油で揚げたら簡易ドーナツの出来上がりだ。砂糖を振ってもよし、そのままでもよし、シナモンパウダーをまぶすって手もある。

 混ぜるのと形作るのと揚げるのは魔力を使って対象を動かして作ったドーナツは子供達のおやつだ。

 あの馬鹿共、碌な物食わせてなかったみたいで、すごい勢いで減っていく。腹壊さないか心配になってきたぞ。


「料理、なさるんですね」

「手慰み程度にな」


 エレノアみたいに手の込んだ物は無理だ。あれはもう芸術の域に達していると常々思う。飾り切りなんて特に。

 ホットケーキでも良かったんだが、あれだと一度に大量生産できないからドーナツにしたのは正解だったらしい。大皿に山盛り作ったドーナツは全部子供達の腹に消えた。はやいな、おい。

 取り分けてあった分は王女と姫に。問題は晩飯か。


「何時も食事はどうしてたんだ?」

「簡単な炊き出しだけ許されていました」

「……備蓄はほぼなし、か」


 食料庫に魔力の目を飛ばして覗いてみたが、まぁ見事に空っぽに近かった。あったのは干し肉干し芋なんかの携帯食のみ。あれじゃぁ大人は我慢できても子供は無理だろう。

 この周辺は天然の食物の宝庫だとヒューベルが言うから食材は現地調達で良いとして、問題は作り手なんだが……イデアに怒られる覚悟決めるか。


「……悪いな、手伝ってくれ」

「陛下のお呼びとあらば何なりと」


 魔力球に事情と召喚術を込めて、魔王城のエレノアの所に送る。即行で召喚円が展開され、シニカルな笑みを浮かべるエレノアがそこにいた。驚くヒューベルに紹介して、厨房に案内してもらう。

 ややもせず、イデアがすっ飛んできた。ほんとにエレノアの事となると行動が早い。一番驚くだろうヒューベルは、中庭に残した子供達の所に戻っているので不在だ。ちょっと反応が見てみたかった気もする。


「陛下、エレノアの気配が……!?」

「……あぁ、俺が召喚した」

「陛下のお呼びだ、応えぬ訳にはいくまい。料理を作ればよいのですか?」

「料理人が不在らしいからな」

「畏まりました」


 カチン、と音がしそうなぐらい勢いよく固まったイデアが見えてない筈はないだろうに、エレノアはさっくり無視して調理器具の確認をし始めた。周辺に飛ばしっぱなしだった魔力の目に、イデアを探すアースラが映る。エレノアの気配を感じて作業放り出して来たのか、イデア。


「……イデア」

「っ、はい」

「アースラが探している」


 告げるやいなや焦った顔でイデアが走り去る。律儀に俺に一礼してったが……転移使った方が速いんじゃなかろうか。忘れてそうだなぁ。


「エレノア、何が要る?」

「香辛料の類はありますから肉と野菜を。お手数をおかけして申し訳ないのですが、城の調理室からパン種を取り寄せていただけますか?今から仕込んだのでは夕飯に間に合いません」


 狩りと収穫は使い魔達に任せて、魔王城の調理室に備え付けてある保管庫からパン種を取り寄せる。色濃く染み付いている俺の魔力は取り寄せついでに抜いておいた。流石にこのまま調理したものを食ったら人間は魔力に中る。

 肉と野菜も短時間であっさり届いた。どっちも魔王城の保管庫から取り寄せた方が速いんだが、見慣れた物の方が安心して食べれるだろう。魔界の肉は魔物の肉だしな。言わなきゃばれないとは思うけど。


「足りるか?」

「十分です」

「献立は任せる」

「はい」


 厨房は専門家に任せて中庭に戻ると、ヒューベルだけじゃなくアディスも子供の成る木になっていた。


「エレノアを呼ばれたのですか?」

「あぁ。料理は専門家に任すに限る。育ち盛りが多そうだしな」


 纏わり付いてくる子供達を眺めながら、アディスは納得顔で頷いた。

 剥がれた石畳や壊れた塀、崩れた家屋等の除去作業と、比較的被害の少なかった家屋の修繕まで終わらせて、今日の分は終了って事になったらしい。アディス達の方でも住民が遠慮したっぽいから、夜寝静まったらこっそり石畳と塀は直そうと思うんですがと許可を求められた。

 一日二日の徹夜で睡眠不足になる程魔族の体は柔じゃないから好きにしろと言っておく。やりすぎるなよと釘も刺しておいた。じゃないと塀が無駄に強固になりかねない。うっかり超強力な結界を張った俺が言えた義理じゃないが。


 さて、この場にいないイデアとアースラは城内の清掃作業をしているようだ。破れたカーテンやカーペットを片っ端から回収している。そのついでに陥没した廊下や崩れた壁を魔力で修繕して進んでるから、気の毒にあいつらの後ろからついて回ってる人間達が唖然としてる。

 二人にはほんとに「ついで」でしかないんだが、人間にはそんな事わからないから「頼りすぎてないか?」と表情で語っている。どうにも言い出しにくそうだったから、魔力を用いた専用回線経由で、二人に「人間が頑張ればどうにかなりそうな破損はそのままにしといてやれ」と言っておいた。

 何となく察したらしく、あまりに酷い破損以外は放置して進むようになった二人に、後ろからついて行ってる人間達が不思議そうな、けどホッとした様な顔になった。


 目を城内から外へ飛ばすと、レジフは町の近くで立ち枯れた木を伐採していた。……そう言えば厨房は薪で火をおこすタイプだったな。今度は薪を貯蓄しておく場所に移動させて確認したら残りわずかだったから、レジフの近くに貯蓄場所への直通回路を開いておいた。持ち運びは苦じゃないだろうが、運んでるのを見たらナターシャ姫達がまた遠慮しかねない。


 エレノア作のごった煮シチューは美味かったが、王女と姫から「何から何まですみません」と頭を下げられてしまった。美味い飯が食いたいのは俺の我侭もあったから、真剣に感謝されるとかなり困る。

 まぁ、エレノアと王女達が仲良くなったみたいだから、よしとしておこうと思う。



く……また帰還できなかった。

どうしても長くなるorz

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