表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当代魔王は勇者様!?  作者: 鬼灯 更紗
自称魔王討伐編
11/14

十一話


魔王様はどこまでも……

さぁ、そろそろ討伐編終わらせないと。




 リーズ王女の願いで神聖王国への帰還を明後日に延ばした俺達は、日が暮れるまでの間に出来る事を済ませる事にした。アディスとレジフは馬鹿共が荒らした町の片付けの為に何人かと町に行き、俺は転移を阻む結界を作る為に殺された人達の埋葬を頼まれた。埋葬の仕方は国や地域で違いがあるらしく、神聖王国は土葬が基本だと王女は言う。が、この小国は火葬してから焼け残った骨を共同墓地に埋めるらしい。

 怨霊にならないように、勇者の力で浄化だけしておいた遺体を光の炎で火葬する。こうすれば、闇の力でアンデッドに作り変えられる事もない。

 俺が火葬してる間に、イデアとアースラが墓穴を作ってくれてたからそこに納めて、墓石を立てる。墓碑銘はない。まだ決められないと小さな姫(王家唯一の生存者だった)が言っていたから、決めた時に刻めるように魔法をかけておいた。


「問題は結界ですわね」

「……はい」


 どうしよう、と王女二人が途方に暮れた顔をしている。よくよく聞いてみれば、周辺の魔物が入ってこないようにする為の結界の礎が完璧に破壊されていて、このままだと魔物が入りたい放題らしい。そう言えば、魔界でも村や町の中に魔物が入り込むと色々面倒だから、魔物除けの結界を張る為の道具があったなぁ。

 人間界の村や町で使われている魔物除けの結界の礎は、大抵神聖王国の高位神官が清め聖別した聖具が使われているらしい。普通に魔術師が魔力を込めた魔具を使っている所もあるようだが。旅のお供に小規模結界を張れる使い捨ての物や、魔力を込め直せば何度でも使える物もあるらしい。

 何はともあれ、現状で結界を作り出して維持するだけの魔道具を作れるのは俺だけのようだから、城下町と城の四方にある壊れた聖具に勇者の力を注いで直しておいた。魔力で直すだけならイデア達でも可能だが、魔王や魔族の魔力で作られた礎で張った結界だと後々この国が方々から非難されかねない。


「……やりすぎたか?」

「特に問題ないでしょう。ここを害する目的でなければ入れるようですし」


 十分気をつけたつもりだったんだが、やっぱりまだ勇者の力はコツがつかめてないらしい。高位魔族でも十分に準備しないと破れないような強烈な結界が出来ちまった。あぁ、王女と姫が固まってる。


「あの、魔王様」

「……なんだ?」

「これほど強力な結界を張っていただけたのは正直嬉しいのですけど、お疲れになりませんか?ずっと魔法を使い続けておられますけれど……」

「いや。元々無尽蔵に近いから、さほど疲れは感じないな」


 普通の魔術師や魔族でも、魔力には限りがある。あまり使いすぎると虚脱感を感じ始め、魔力が枯渇したら動けなくなる事もあるんだが、魔王な上に勇者の力まで与えられた俺はもう上限がどこにあるのかよくわからん。とりあえず、召喚されてからこっち、普通の魔術師なら最低でも二回は枯渇してるぐらい魔力を使っている筈だが一割も減った気がしない。どこまでもチートだ。


 もう少し、あれこれ手伝おうかと思ってたんだが、何故か総出で止められて手持ち無沙汰になった。埋葬に結界作成しかしてないって言うのが俺の認識なんだが、ナターシャ姫や他の人間達からすれば埋葬だけでなく結界作成(しかも無駄に協力)までしてもらったんだからこれ以上頼れない、と言う事らしい。

 無駄にチートだからどんどん使ってもらって構わないんだがなぁ。


「陛下は、大分親父と違いますね」

「……それはそうだろう。同じ物を継いだとは言え、継ぐ本人が別人だ」


 同じく手持ち無沙汰な様子のヒューベルと城の中庭で元気よく戯れる子供達を眺めつつぽつりぽつり言葉を交わす。

 ヒューベルが最初に興味を持ったのはナターシャ姫の祖父で、ギィラスも含めて悪友っぽい関係だったらしいが、最初にあの馬鹿共がこの小国を襲った時、姫以外の王族は即座に殺された。どうも連中、この国の王族一家全員がヒューベルの特別だと知らなかったらしい。で、怒り狂ったヒューベルが暴れだす前に、姫を人質にしたんだとか。


「……その腕は?」

「結界の対価に。……不思議なものです。人間なぞ、レグラムやその血縁以外、どうなろうと知ったことじゃないと思っていたのに」


 幼い頃から共にいる侍女や、小国ゆえに身近だった城下町の人間達が結界を作る為だけに殺されていくのを見て泣き叫ぶナターシャ姫を見てられず、気づけば自分で自分の腕を切り落としていたらしい。だからあれだけ大規模な結界が出来た訳かと納得した。


「治すか?」

「いえ、このままで。地道に回復していこうと思います」

「……姫が悲しむぞ」

「それでも。……レグラム達を守れなかった責を負わねば、私が私を許せません」


 魔力の塊でもある魔族。片腕がないって言うのは、腕一本分魔力が減るって事でもある。かなり実力が落ちるし不便だろうに、それでもヒューベルはこのままでいいと言う。随分意思が固そうだから、説得はナターシャ姫じゃないと無理だろう。そう判断して、この場は何も言わずにおいた。


「これからどうするんだ?」

「お許しがいただけるのであれば、この国で、ナターシャ達と共に在りたいと思います」

「……好きにしろ」

「ありがとうございます」


 生真面目に頭を下げるヒューベルも、ギィラスと同じくかなり子供達に好かれている。小柄な少年の姿をしていても魔族だから、子供達が腕や背中にへばりついて鈴生りになっても倒れることはない。見た目はかなり面白い事になってるんだが、それは言わぬが花だろう。




チートな自覚はあれど、それが他人にどう見えるのかと言う自覚がない魔王様でしたw


お気に入り登録が500超えててビックリです。

本当にありがとうございます(ぺこり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ