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第9話 草枕と膝枕

 思わず私は、むすびの温もりに安心しきって眠ってしまいそうになった。


 私の肩にもたれかかったまま、むすびは眠っている。

 私が体勢を崩すと肩にもたれかかっていたむすびの頭が、私の肩からずり落ちて今度は私の膝に乗る。

 これが俗に言う膝枕というものなのだろうか?


 むすびの安らかな寝顔を見つめていると、ついつい私は微笑んでしまう。


 むすびは格好良さとか、可愛さとかはお世辞にも余り持っているとは言えないのだけれど、その代わりに圧倒的にそれらを凌ぐ何かを持っている。

 今までは、その正体が良く分からなかったのだけれど、むすびの安らかな寝顔を改めて見て分かった。


 何よりも、誰よりも、むすびは愛しいのだ。


 たとえば青空のように嘘偽り無く、愚直なところとか…。

 自分の弱さを痛感しながらも、尚この世界に立ち向かう姿とか…。

 それが他の人には決して無いむすびの強さなのかもしれない。


「私は、君がいるだけで大丈夫だよ」


 私は、むすびの頭をそっと撫でながら、彼を起こさない程度に呟く。


 小窓の外に見えるビルとビルの隙間で、月が白銀色の光を放っている。


 残酷な世界の冷たさは知らない間に姿を消して、むすびと私の温もりだけが私の感覚の中に残っていた。


 悴んだ手は、いつの間にか温もりに満ちていた。


 私も温かくも脆い幸せを噛み締めながら、眠りに着いた。

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