第4話 千思万考②
機械仕掛けの少女と心が繋がったあの夜の感覚が未だに胸の中に残っている。
その感覚を例えるならば、冷たい哀しみで満ちた海の中で、温もりと歓喜に満ち溢れた孤島を見つけた漂流者のような気分だ。
こんな意地の悪い世界に縛られていても、彼女の慈愛に満ちた青い瞳を思い出せば、彼女があの夜に与えてくれた精神的な意味を大いに含んだ、あの柔らかい胸の温もりが心地良く身体中に沁みる。
機械仕掛けの彼女に深く刻まれた白銀の傷を思い出せば、どうしようもなく辛く苦しくなる反面、今までの僕が感じた事の無い庇護欲的な不思議な力が何処からか湧き上がって来て、僕の心の傷跡に深く沁みる。
現実逃避を試みれば試みる度に、僕には居場所が無い事を痛感させられ、仕方無く現実逃避を中断して他の事を考えている内に、結局は機械仕掛けの少女の事を考えてしまう。
時々、アンドロイドである彼女以外の人物が思い浮かぶ事はあるが、大抵は従兄弟のほどきか昨日、廃ビルで出会ってしまった酒癖の悪い女性ばかりが思い浮かぶだけだった。だから結局、苦悩が続く事には変わりはなかった。
それにしても機械仕掛けの彼女の輪郭は、どうもこの世界とは噛み合いそうにも―相容れそうにもなさそうだ。まるで彼女は、僕と彼女が共に過ごした光の一つも無い暗闇の中で、孤独に輝いていたあの夜の月とそっくりだ。
暗闇が基調とされている世界で、あの日の月のように輝いてしまうと、どれだけ美しくても如何しても異色な存在となり、周囲から孤立してしまうのだ。
僕は、この世界とは噛み合わなくても構わない。だからその代わりに、何としてでも機械仕掛けの彼女の輪郭に噛み合いたい―相容れたい―交わりたいと強く願った。
言い切ってしまうと要するに、僕は機械仕掛けの少女に寄り添って生きて行きたいのだ。




