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BAD TRIGGER  作者: hygirl
98/101

Bullet98


 もはや、これ以上に戦いは不要だろう。


 そう思えてしまうほどの明確な結果が出された。


 仲間が手を貸してくれたが故に成功した再燃回復というデタラメに近しい方法で仕切り直して敵を追い詰めたソラは静かに息を吐いて紅蓮の爆炎の火力を抑えながらも《ヒート・マグナム》の銃口を敵に向けて警戒心を保ち、一方でソラの猛攻によるダメージと《ヒート・マグナム》で撃ち抜かれた致命的な一撃によって膝から崩れ落ち血を吐いた竜堂アマトは彼の警戒心が無駄に思えるほどの静寂の中にいた。


 追い詰められた果てで成った《魔人》としての姿から人体の構造と機能が人間のものから逸脱している可能性はあるが、流石に人間としての要素がそこに残っているのならばこれ以上無駄に動く事は出来ずその命も何れは尽きるだろう……


 そんな風に考えるソラの視線が銃口同様に虫の息と思われる敵の方へ向けられる中で竜堂アマトは彼を見ようと顔を向けると何故か微笑みを見せる。


 微笑みに何か意味がある、そんな風に感じたソラは微笑みの意味を敵に問う。



「何のつもりだ?」

『……キミは、実に面白い人間だ』


「あ?」

『不完全な人間が蔓延する世界を認めたく無い私は、この世界から人間を消し去りたいと考え完全な存在になろうとした。なのに、完全になろうとした直前で……キミのような不完全の中心で能力に振り回される者に理想を阻まれたなんて思うと可笑しくなったんですよ』


「何でもかんでもオマエの思い通りになると思ってたんならあの世で自分の愚かさを悔やむんだな。あの世があって……オマエに悔やむ時間を与えてくれるような地獄に巡れたならだけどな」

『死後の世界には興味などありません……死後の世界を信じるというのは、神を盲信すると変わりませんからね』


「この世界に生きる人間全部をオマエの価値観だけで不完全と格付けして自分の事を世界の支配者になろうと神が如き存在に成り上がらせようとしたやつが神はいないって言うのは確かに可笑しく思えるな。まぁ、魔人の容姿を軽く得たくらいのその姿で神を気取るのは無理だろうけどな」

『好きに言ってくれて構いませんよ……相馬ソラ。どうせ今の私が何を言おうと、キミの言葉が容易く論破するだけでしょうから』


「……ならオレが論破出来ないような内容ならオマエの口から語れるよな?」


 ソラとの激闘の末に敗北を認めたかのように潔さを見せながらも言動1つ1つに怪しさを感じさせる竜堂アマトは語る言葉は無く何を言おうと悉く崩されるとして諦めを見せるが、竜堂アマトのその言葉を受けたソラは竜堂アマトが自ら語る他無い話題があるように言葉を口にすると《ヒート・マグナム》を下ろしてしまう。


 諦めの域にある敵、仕留める事など容易い状態にある敵を前にしてその好機の瞬間を放棄するような行動を取ったソラに対して彼の行動を見届けようと静観するシンクたちは驚きの反応を見せるが、ソラは仲間の反応など意に介さずに竜堂アマトに向けて尋ねた。


「オマエはどうしてオレの魔人の炎を選んだ?ヒロムの強さを手にしたかったのなら素直にアイツの力を奪おうとした方が良かったんじゃないのか?魔人の炎を手に入れたいなんて思ったからこうなったと思わないのか?」


『……何を聞くのかと思えば、そんな事ですか……答えは、簡単ですよ。私が理想としていた彼の強さを得るための過程が……戦いの中で経験を蓄積させる事で《魔人》の力を内包した炎を滾らせるキミと重なった……というだけです』

「……言ってる事の意味が分からねぇな」

『でしょうね……理想を目指しながら、理想への道筋を遠回りするように動くような計画とそのシナリオを描いた時点で私も自らの愚かさを笑いましたよ』


 ソラの質問に対しての答えとして捉えるにはどこか的外れにも感じられる不可解な言葉を返した竜堂アマト。質問しておきながら返された言葉への理解が及ばないソラの言葉に対してだろう冷笑と言葉を向けた竜堂アマトの肉体に大きな亀裂が現れ巡り走る。


 大きな亀裂が突然現れ全身に広がるように巡り走ると竜堂アマトの体は徐々に崩壊を始める。


 肉体的な限界を表すために亀裂が走ったと捉えるべきなのだろう、始まった崩壊が肉体を完全に消失させるだろうとして自分が手を下すまでも無いと判断したソラは《ヒート・マグナム》を炎に変えて静かに消し、ソラが武装を消した事でその意図を察した竜堂アマトは肉体の崩壊の進む中で最期の言葉を残そうとした。


『残念なのは……この姿になり潔く殺されるのでは無く、不完全故に起きるであろうバグによる自壊での幕引きというのが心残りですね……どうせなら、キミに殺されたかったものです』

「衝撃を加えりゃ壊れるような敵を殺しても何も感じねぇからお断りだ。つうか、こっちだって奥の手使ったのにこんな満足感のない終わりになった事が腹立たしいくらいだ」


『ふっ……だとしたら、最期までキミを苦しめる事が出来たと誇りと思い散れますね』


「勝手に言ってろ」

『……命散る前に忠告です。私が消えた所で、この世界は……醜いままで……』


 ソラに対しての忠告、何に対してなのかは聞かなければ分からない中でソラに向けた言葉を語るも時が来たらしく竜堂アマトの肉体は完全に崩壊して塵となり跡形もなく消えてしまう。



 語られた言葉はソラにとって耳障りなものばかりで聞かされた彼からすれば竜堂アマトは身勝手に人を利用し志半ばで命を散らすも満足したかのように最期を向かえ逃げられたようなものだった。


 が、死人となった竜堂アマトがどう感じどう思い逝ったかはソラはどうでもよかった……



「……終わったな……」


 数日の事だったはずが長く感じた戦いは黒幕の死で幕が下ろされた。

 戦いの中心で踊らされていたソラは終わりを実感しながら仲間の方へ向いて歩み寄ろうとするが、仲間たちのもとへ歩み寄ろうとしたソラの意識は次第に薄れ、彼の意識がそこで途絶えると彼は仲間たちの前で眠るように倒れてしまう……

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