Bullet97
今の竜堂アマトにソラを止める術は無い。
満身創痍の状態から彼のような外部的な補助前提の再燃回復が不可能な事から戦線から離脱を余儀なくされているシンクは今のソラが勝つ事を確信していた。
意表を突いた方法で竜堂アマトの動揺と困惑を誘い流れを変えたなどという安易なものではなく、シンクはこの場に来る瞬間までに全員の共通認識として持っていたこの方法をダウトが提案してきた段階で確信に近いものを抱いていた。
そして、彼のそれを実現するかのようにソラは紅蓮の爆炎を滾らせ彼の奮闘により竜堂アマトは心身共に確実に追い詰められ、彼の構える《ヒート・マグナム》の一撃で撃ち抜かれた竜堂アマトは血を吐き膝から崩れ落ちた。
紅蓮の爆炎を纏い立つソラの前で膝から崩れ落ちた竜堂アマトのその姿を見るシンクはこれで間違いなくソラが勝ったと感じており、この作戦を提案したダウトも彼の勝利を確信したらしくシンクに歩み寄ると討つべき敵を倒した事に触れようとした。
「氷堂シンク、相馬ソラは……やり遂げてくれたぞ」
「だな……本当に、アイツはスゴい」
「キミの言う通りだ。ただ……1つ気になる事がある」
ソラがやり遂げてくれた、そんな風にお互いの感じたものを口にする中でダウトは敵が倒されたはずの中で何かを確かめるようにシンクに問う。
「キミはどうして私がこの提案をした時に実行する事を躊躇わなかった?正直な話、相馬ソラはこの方法を聞かされて実現可能かどうか半信半疑だったし、私の提案を聞いていたネーナたちも出来るかどうか不安になっていた。なのにキミだけは少しの思考をしただけで奥の手として採用してくれた。キミの中には……何が見えていたんだ?」
ダウトが提案したシンクやネーナたちが協力する事で実現された紅蓮の炎の燃焼により生じるソラの体内の熱に対する外部的処理を経ての再燃回復。成功した事によって完全復活に等しい回復を経てソラは今の結果を得た訳だが、当然ながらその結果を得るまでに提案に対して否定する声もあった。
それなのにシンクだけは少し考えただけで奥の手としての実行を視野に入れた。上手くいったから良かったが、だからこそダウトにとっては疑う事をせずに実行する事を選択した彼のその判断が気掛かりだったのだろう。
そんなダウトの疑問に対してシンクは単刀直入に答えた。それは遠回しではあるがソラの事をよく知り能力者として彼を評価するからこその言葉だった。
「竜堂アマトの目的が新型の《覇王竜》の力の完成程度の認識の中で出された提案だったから多少はリスクがあるとは思った。けど、竜堂アマトが目指してるだろう力が目標とされている《覇王竜》の力を持っていたゼアルを倒したヒロムの強さを超える力を得る可能性があると思う一方で竜堂アマトがそれを完成させる前にソラが仕切り直しを行い完成を阻止する流れを実現して敵を倒す可能性もあるだろうとも考えた 」
「それは、どうしてだ?完成してしまえば世界が終わる、そんな力を手にする前に止められる保証も何も無かったのに、どうして?」
「……そもそも、《覇王竜》の力ってのは言い方を変えんならこの国における能力者の定義を崩壊させる異端分子とも言える姫神ヒロムって人間を超える強さを持つ能力者を目指した事で到達したものだ。定義として着眼点を変えるなら《覇王竜》の力ってのはオレの編み出した《竜装術》を利用してヒロムの強さを得る事を目的としたものだ」
「それについては理解している。だが、キミの話を聞いても何故私の提案を採用したのかの謎が解決しない」
「だろうな……ダウトの話を聞いた時にふと思いついた。《覇王竜》の力がヒロムの力を得るための外付けの強化方法だとして、それを受け取る側に元々の熱耐性は無いならソラは切り札になるかもしれないってな」
「それは……何故だ?」
「簡単な話だ。ヒロムは能力無しでこの国の能力者の定義をめちゃくちゃにしただけで熱耐性だとかそういう類に含まれる力を持ってる訳じゃない。更に言うならヒロムでさえソラの紅蓮の炎を止めて熱処理を行わせる事は不可能だ」
「つまり……」
「敵がヒロムの力を再現する《覇王竜》の力ってのを新たな要素を組み込んだ上で完成させたとしてもそれはあくまでヒロムの実現可能な事を能力で再現してるだけ。ヒロムという人間1人の持つ全てを実現可能になろうとその域にあるヒロムって不可能な事は当然出来ないはずだって事だ。めちゃくちゃな理論ではあるが試す価値はあると思ったし、結果論ではあるがソラの持つ紅蓮の炎に耐えるために竜堂アマトがオレの氷結能力を利用しようと狙ってた事を認識した段階で試す価値はあると確信を持てた」
「だが、もしその考えが及ばなかったら……」
「そんな風には考えてなかったな。やると決めた時のソラは……諦めが悪いから必ずどうにかできるとも思ってたからな」
圧倒的なソラへの信頼。仲間として彼を知るシンクだからこそ語れるものなのだろうが、これを聞かされたダウトはただ驚かされるだけだった。下手をすれば全滅するリスクもあった。それでも自分の知る『相馬ソラ』という人間を信じてそれほどの考えを抱いていた……シンクの話を聞かされたダウトはただただソラに対する信頼に言葉を奪われるしかなく、2人の話を聞くネーナたちもシンクの発言に唖然としていた。
戦いの中とは思えない空気感で話すシンクたち。だがそれは信頼した1人の仲間が確信させるだけの結果を見せてくれたからだ。
そんな彼らの前で敵を見事に追い詰めた本人は……




