Bullet94
全身の傷を消し去り失った炎の勢いを取り戻し紅蓮の爆炎を燃え滾らせるソラ。
圧倒的な力の差で追い詰めたと思っていた竜堂アマトはこの状況……いや、完全回復と言っても過言では無い再再燃起した姿を前にして動揺を隠せなかった。
『ありえない……!!いくらキミが《魔人》の有する自然治癒力の向上と自己修復、酸素を媒体とした魔力燃費の低下を得意だとしても……重傷レベルのダメージを瞬間でも回復させるような技は持っていないはず……!!』
「どうした?《魔人》になって力を得たってのに余裕無さそうだな」
『キミは一体何をした!?それは……それと《魔人》の力なのか!?』
「いや、これはオレの力じゃない。これは絶体絶命の危機に瀕した際にオレの継戦能力を取り戻させるための奥の手……《リベイク・ヒール》だ」
『リベイク……焼き直し、だと……!?』
「あぁ、魔人の炎を扱う上で現時点でのオレはどうやっても紅蓮に染まった炎の一方的に高まり続ける熱を制御するのには限界がある。だから限界に近くなれば自然治癒や自己修復の力が機能しなくなり、肉体の状態次第では外部からの衝撃と肉体の負傷の追加で紅蓮の炎を維持出来なくなる。けど、それはあくまでオレの中で高まり続ける熱が残ってる場合の話だ。だから、1度紅蓮の炎の発動で上げた熱を冷まさせる……そうすればオレの中で一から強火でこの炎を燃やせるようになる」
『ありえない……!?今言った事を実現出来たのは偶然に等しい……何より、キミは自身の熱を制御出来ないから制限を設け、その炎と同等レベルの火力を出せるように普段の炎を圧縮・解放しているのが《ヒート・マグナム》のはずだ!!なのに……何故自らの行えない熱処理を必要とするそれが奥の手になるのです!?』
「言い忘れてたな……この奥の手はオレ『の考えたもの』じゃない。これはオレの魔人の炎を知った人物によりオレ『のために考えてくれたもの』だ」
『な、に……!?』
「オマエの言う通り、この奥の手はクソ野郎を出し抜く最高の切り札になったぜ……ダウト」
『なっ……ダウト!?』
ソラの再燃再起のカラクリ、そして何よりも彼のこの奥の手が彼の考案では無く彼に向けたものだと告げられた竜堂アマトに更なる追撃を与えるかのようにソラはこの奥の手の考案者の名前を出すように効果があった事を伝え、彼がそれを伝えた相手がダウトだとこの瞬間に知る事となった竜堂アマトは当然のように驚愕させられる。
そして……ソラの再燃再起に一役買い、竜堂アマトに一泡吹かせる結果に繋げる成果を残した立役者のダウトは竜堂アマトに強い視線を向けながら語り始める。
「アナタの目的……計画の一端を聞かされなければこんな大胆な事を相馬ソラに提案する事も無かった。ただ、私たちを抹殺させるために新しく生み出した強化能力者を仕向けた事……いや、そこで留めずに私たちを利用してジャルゴに全てを集約させる真相を明かしたあの時にこの奥の手を考えた」
『ありえない……ありえるわけがない。あの時点でこんな……』
「確かにありえないと思うだろう。私も最初は相馬ソラの魔人の炎である紅蓮の炎を目にして情報として新たに得た経緯がなければその力の性質と短所を彼から説明してもらい万が一の時の方法として私たちが彼の短所から来る弱点を処理するこの奥の手を伝えて終わる予定だった。だが……姫神ヒロムがあの場にいた事が私の背を押してくれた」
「ダウトからこれを聞かされた時、オレもネーナたちもどうせ使われない奥の手として聞く他なかった。けど、オレたちがあそこに駆けつけた時、オマエを相手にしてるヒロムが簡単に倒せないような状況を前にした事で全員の中で共通の認識が生まれた」
「アナタは姫神ヒロムに匹敵する力を持つ、全力を出した時の強さが姫神ヒロムを軽く凌駕するならばこの奥の手を使う必要がある……そう考えた私たちは相馬ソラがアナタに集中する事でネーナとアイディッシュの動きを最低限に抑えるパターンでの動きを取ることになったんです」
『だとしても……だ!!キミの提案したというその奥の手、仮に熱処理の力が上手く機能しなかったら失敗……
「わざわざ色んなとこに移動させてくれるから……移動中、車の中で軽く試せたからやれると確信してたんだよ。高熱処理が不可能だろうとそれを上回る冷気で補う術も揃っていたからな」
『氷堂シンクの、存在が……!!だとしても!!私がそれに気づいて阻止したらどうするつもりだったのです!?』
「アナタは自分の目的に必要な対象には目をかけるが不要となれば容易く使い捨てる……武器を生成可能な力を与えられた彼をもっと大切に扱うように振る舞えば、アナタの思考を読まれずに済んだはずです」
『ヴェイカーを倒したあの時から……既に……!?ありえない……ありえ、ない……!?』
奥の手に考えが到達した理由、奥の手が切り札として有効だと確信した理由……その全て?自身の行いの招いたものだとダウトにより気付かされる竜堂アマトは未だにこの現実を受け入れられないらしくひどく狼狽えていた。
敵が狼狽えていようと関係ない……
ソラは紅蓮の爆炎を滾り燃やすと《ヒート・マグナム》の引き金を引いて爆炎から成る炎弾を撃ち放つと炎弾を追いかけるように走り出し、ひどく狼狽えていながらも防御する力は機能するらしく竜堂アマトは炎弾をどうにか防いでみせる。が、直後……
「こっちがお留守だぜ!!」
紅蓮の爆炎を纏い敵へ迫ったソラは素早く回転して勢いを生み出し蹴りを放ち、放たれた蹴りは何かに止められる事も無く竜堂アマトの顔に叩き込まれる。
『っ……!?』
「いつまでもオマエの思い通りになると思うなよ?こっからは……オレのターンだ!!」




