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BAD TRIGGER  作者: hygirl
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Bullet09


 シンクとアリスと分かれて単独での行動を名乗り出たソラは左右の分岐通路の右側を単身で進んでいた。

 

 先程まで3人で行動していた際に進んで来た通路と似たような感じで壁やら床やらは経年劣化の損傷を受けていた。

 

 ただ分岐して二手に分かれた程度で3人の時と特に変わり映えしない通路を歩き進むソラ。

 

 そんな彼は暫く進んだ所で何故か足を止め立ち止まってしまう。

 

 何かあるのか?そう思うしかない行動を取るソラ。そんな彼は身体は動かさずただ視線だけを動かすようにして周囲を確認すると唐突に語り始めた。

 

「……一応誘いに乗ってやったんだ。そろそろ出てこいよ」

 

 唐突に語り始めたソラ。傍から見れば急に独り言を話し始めたようにしか見えない。が、彼が独り言のように話して暫くすると彼の前にこれまでの道中には見られなかった強い光が天井から照らされ、強い光が照らされるとそこに何やら映像らしきものが投影される。


 映像、と言うよりは正確な言い方をするならば人の形をした立体映像と言うべきだろう。


 が、人の形をしたとは言ったものの映像が鮮明ではないのか顔などはハッキリせず、どちらかと言えば人と認識可能なシルエットの立体映像と言うべきだろう。

 

 人と認識可能なシルエットの立体映像が現れると強い光が静かに消えていくが、強い光が消えても尚立体映像はソラの前に残り続けていた。

 

「オマエか。オレを呼び寄せるためにオレだけに分かるようにさっきの分岐点での点滅する灯りを仕掛けたのはオマエだろ?」

『……流石、と言うべきかな相馬ソラさん。私のシグナルに気づいてくれたのは嬉しい限りだ』

 

「最初の入口の扉もオマエって事でいいよな。つうか、何であんな仕掛けを?」

『キミは炎の能力者として覚醒に至る境地にいる。そんなキミならば灯りの温度変化による熱信号に気づけると思ってね』

 

「熱信号……が何なのか知らねぇが前にウチのバカが教えてくれたんだよ。照明が重宝される環境下で情報を扱う情報屋は同業者間で簡易的な暗号を送る方法があるってな。『右』『左』『上』『下』『前』『後ろ』『進め』『止まれ』『待て』……あとは数字に加えて何か細かいのがあるみたいなのを聞かされたが、1番重要だったのは『右』の暗号の直後に『1』という暗号が読み取れたことだ」

『流石私が頼りたいと思った能力者だ。キミの言うそれは日照時間の短い夜の深い地域で炎熱系統の能力者が用いる暗号通信の1種で先程言った『熱信号』に該当するのだよ』

 

「ふーん……そういうのは別にいい。それより、オレだけに分かるように暗号を送った理由を話せ。ついでにオマエの素性も明かせ」

 

 ソラがシンクとアリスに分かれ道で誰よりも先に組み合わせを提示し自らが単独行動する流れにしたのか、その真相は分岐点となったT字の通路にあった点滅する灯りにあったという事が判明した。シンクとアリスには気づけなかったとされる炎の能力者ならば気づけるとされる暗号が灯りの点滅を用いて行われていた事が立体映像の人物との会話で明らかになった。

 

 それはさておいて、ソラは相手の暗号を読み取った上でその誘いに乗り、そして相手の望むがままに1人でここまで来た。

 

 怪しさしかない立体映像越しに会話する事になる相手の事を特に警戒する様子もないソラ。いや、最低限の警戒はしてるのだろう。

 

 相手が謎しかない未知数の存在、この研究施設で対峙するという事は敵の可能性しかない。が、それを理解しながらもソラは協力関係にある2人の人間に無断でこうなるように動いている。だからこそ、相手に怖気付く事無く強気に相手の素性を探ろうとしている。


 そして相手もそんなソラの狙いを読んでいる。


『私の事は簡易的な呼び名として《ダウト》とでも呼ぶといい。今の私とキミの関係性だと適切と思わないかな?』

「要するに真名は明かさないってか?」

『ふっ、真名とはカッコイイ言い回しだね。私の心が刺激されるよ』


「生憎だが喜ばせる気はない。それよりも答えろ。オレをここへ呼び寄せた訳を」

『気になるかい? 』


「話す気が無いならオレは来た道引き返すだけだ」

『ん?話さないんじゃないよ?キミの反応を試したのさ』


「……つまらん。なら話せ」

『キミの万が一の際の冗談よりは面白いと思うのだけれど……ダメかい?』


「何だ?煽ってんのか?」

『冗談だよ。キミとは何だか話が通じそうで安心したよ』


「どこで安心してんだよ……」

『さて、本題なのだけれど……キミは赤の他人から人殺しを頼まれた際、引き受けるのかな?』


 唐突な相手からの質問、それはソラの存在を探る目的のものではなくソラの本質的な部分を探るようなものであり、その内容は他人から人殺しを依頼されれば引き受けるのかという予想外のものだった。


 内容が内容、かなりおかしな質問をされたソラだが、質問の意図などを気にする様子もなく彼は相手の質問されたことに対して多少の思考を行った後でその答えを返した。


「殺しに対する対価の有無による。赤の他人からなら尚更そこは重視する。オマエがオレに殺しを依頼するにしても、だがな」

『なるほど、単純明快でいいね。ならば取引だ。対価はキミとキミの仲間の未来の発展……そして、悪意の芽を消せるという結果だ。そして依頼は……私を殺して欲しい』


「……何?」


 立体映像の相手からの依頼、殺しの対価は未来への結果だと前置きした相手は自らを殺して欲しいとソラに依頼する。


全容の掴めぬその依頼内容に耳を疑う他ないソラ。敵か味方か分からぬ立体映像を駆使する、自らの名を『ダウト』と呼称するこの人物の目的とその正体は……?

 

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