Bullet05
そして……現在、
氷堂シンクとの取引を経て依頼を引き受けたソラは人殺しの依頼の実行のために港湾倉庫で無数の人間への攻撃を実行。
標的とされる人間を全て始末したソラは戦闘終了の旨を伝えた後、所定のポイントで待機していた車にてある場所に移動を終えていた。
場所は港湾倉庫から約10km程離れた場所に位置する集落の一角にある小屋。
車を下車したソラが小屋の中へ入るとそこにはシンクがいた。
そして、シンクの他にももう1人いた。
赤い髪、赤と青のオッドアイの青年。シンクと共にソラを待つようにそこに居たその青年はソラの顔を見るなり意外そうな反応を見せた。
「氷堂シンク、オマエが手配した人間は相馬ソラだったのか?」
「意外だったか?」
「いや、今回の炙り出しには最適解ではあるがこの男は仮にもオマエが支持する姫神ヒロムの傘下の能力者。何よりオマエが監視を引き受けている八神トウマの事をもっとも憎んでいてもおかしくない人間だぞ」
「引き受けるわけないと思ってたのか」
「そう考えるのが自然だ。どんな弱みを握って引き受けさせた?」
「弱み握ったなんて失礼だな。オレはソラの精霊のおチビたちの保護を前払い、後払いとしてトウマの半殺しを提示されて快諾して取引を成立させて加担させている」
「……カズキが聞いたら怒るぞ」
「そうならないよう上手く口裏合わせろ」
ソラがシンクの協力者だとして話を進める青年とシンク。話の内容からして今回の件をソラが引き受けるのは意外な事だったらしく、入るなり自分の事をとやかく話されるソラは不愉快に思う他なかった。
何より、彼からしたら青年がここに居る事が意外……いや、不満しか無かった。
「おい、シンク。何でオマエとの合流地点に《一条》の人間……それもよりによって《一条》のNo.3の双座アリスがいやがる?居るなら居るで事前に教えろ」
「すまないなソラ。これについては話せば長くなる」
「あ?ふざけ……
「落ち着け相馬ソラ。《十家騒乱事件》より以前に色々指南してやった恩を忘れたのか?」
「あ?《十家》を潰すための戦力に育てるっていう口実でオマエら《一条》が企画したアレを言ってんなら恩着せがましいな。オマエらが勝手にやった、オレはその程度の認識しかしてねぇから黙ってろ」
「……分かった、その件は黙ってやる。ただし、今回の件については話させろ」
「あ?今回の件?」
青年の存在……双座アリスがこの場にいる事が気に食わない様子のソラ。彼の立場と自身との関係性からか明確な拒否反応を見せ辛辣な言葉でしか語ろうとしないソラ。そんなソラを落ち着かせようと過去の云々は何も言わないとしてアリスは今するべき話を進めようとした。
『今回の件』とアリスに挙げられたそれが何を指すのか気になったのかソラは散々な物言いを止めると話を聞こうとし、ソラが落ち着きを見せるとアリスは自身が口にした『今回の件』に関する話を始めた。
「今回の件にオマエが手を貸してくれているのは予想外だったが事が解決するなら上には取り成してやるが……状況説明しよう。まず相馬ソラ、今さっきオマエが始末したやつらの事はどんな風に聞いている?」
「始末したやつら?アレは末端の使い捨てなんだろ?アレを始末して上にいる悪党を炙り出し仕留める算段って聞いてるが?」
「概ね合っているが間違えてもいる」
「は?どういう意味だ?てか、シンク。オマエ、オレに何か隠してんのか?」
「バカ言うな。オマエの手を借りるとなった段階で把握してる事は話している。そうでもなきゃ、隠してる事があると分かったらオマエはオレを許さないだろ?」
「当然だ。オマエに頼まれて派手に動いてんだから何もかも話されなきゃ困る。その上で聞くが、そいつが言ってるのはどういう意味なんだよ?」
「そいつが言ってるのは身分的な事だ。ソラが知らないところを質問してるんだよ」
「だから末端の使い捨てだろ?それ以上の情報があるってのか?」
「詳しく話せばあるが、その辺は《一条》の目的に関する内容だからな。話すかどうかは双座アリス次第だな」
「どういう意味だ?」
「オマエが始末してくれたのは今回氷堂シンクと《八神》が負っている標的から使い捨てにされるべく雇われた取るに足らんやつらだ。が、その末端の使い捨てがどこから雇われたかが問題なんだよ」
「単なる使い捨てと認識されんのなら大した事ねぇんじゃねぇのか?」
「まぁ、使い捨てにされる程度の身分としての認識なら大した事はない。が、こちらとしてはそれで済ませられない面倒な問題があってな……ややこしくなるが、話だけは聞くよな相馬ソラ?」
「……こうなりゃ聞く他ないだろ。さっさと教えろ」
何か裏がある、そんな事は容易に理解出来てしまえるソラは話を聞く以外に進展はしないと思ったらしくアリスからシンクから聞かされていないであろう内容を聞き出そうとした。
話を聞く気はあるらしいソラが偉そうに説明を求めると彼の態度など気にする様子もないアリスは彼に情報を提供するために語り始めた。
「今回氷堂シンクが《八神》として追いかけているのは《八神》の現当主を務めている八神トウマの傀儡化に際する洗脳に手を貸していたとされる《十神》の関係者だと考えられる人間だ。そして、今回オレが《一条》として追いかけているのはその人間に手を貸していたとされる組織だ」
「つまり、《八神》を悪意に加担させるきっかけを作った人間とその人間に手を貸したであろう組織をオマエらが別々に追いかけてるって事か?」
「そういう事だ。そして、オマエが派手に始末してくれた末端の使い捨ての人間ってのはその組織の下っ端って事になる」
「つまりオレは他人の敷地の問題を荒らしたって事なのか?」
「……そこを話すとさらに拗れるんだがな。簡潔に言うとオマエの介入は助かった反面悪手とも言える。つまり、どっちつかずって事だ」
「どういう意味だ?何を言いたい……!!」
話を聞こうにもかまりにも進展が見られないアリスの物言いに少しの苛立ちを抱き始めるソラ。果たしてアリスは彼に何を言いたいのか……