Bullet03
ソラの手を借りたいとして頼りに来たシンクの話を聞くために場所を変えて話を進めようとするソラ。
話を聞くためにとソラが連れられたのは少し古い外観の喫茶店だった。
店内に入ると昔ながらの内装にアンティーク家具が揃えられたオシャレな風景が迎え、シンクはソラを連れて奥に進もうとする。
「いらっしゃいませ……これはシンク様、本日は?」
「奥の部屋を借りたい。コーヒー2つと……ミルクを小皿に2つ、それと胡桃があれば小皿に入れて一緒に持ってきてくれるか?」
「承知しました」
奥に進もうとするシンクのもとへ店員の男性が声を掛けるも彼を見るなり親しい関係にあるらしく接し方が変わり、男性にいくつか用件を伝えるとシンクはソラを引き連れ奥へ進む。
シンクの用件を承諾した男性は一礼した後去っていき、ソラを連れるシンクは店の奥まで来るとそこにある扉を開けて中へと入っていく。シンクに続くように中へ入るソラ、彼がシンクに続いて中に入ったそこは喫茶店にはないような高級感のあるテーブルや椅子の並べられた個室となっていた。
「ここは……」
「表向きは昔ながらのナポリタンがイチオシの喫茶店だが、その実態は《八神》の人間が運営する店……でここはオレがオマエらと今回みたいな話をする際に使える場所として用意させた特別スペースだ」
「よく分からねぇが、要するにここは《八神》のテリトリーって事か?」
「厳密に言うと少し違うが簡単にまとめるならそうなるかもな。まぁ、運営が《八神》ってだけでそれ以上の意味も何も無い……家の名を出しても飾りにもならないって話だ」
「ふん、飾りか。本当にそうならいいけどな」
「そう疑ってくれるな。まぁ、ひとまず座ってくれソラ。話は……揃ってからでもいいだろうからな」
テーブルを挟んで対面する形で席に着くソラとシンク。席に着いて暫くすると先程の男性がコーヒーを2人分、それからシンクに頼まれていたミルクが少し注がれた小皿2つと胡桃が盛られた小皿1つを運んできてテーブルへと並べる。
ソラとシンクの前にコーヒーを置き、胡桃とミルクがそれぞれ入れられた小皿を2人の間に置いた後に軽く頭を下げて男性は下がり、小皿がテーブルに置かれるとソラの肩に乗っていたリスのナッツは嬉しそうに胡桃が盛られた小皿に駆け寄っていき、ソラは制服のポケットからキャロとシャロを優しく出すとミルクが入った小皿の前へと2匹の子猫を並ばせる。
胡桃が嬉しいのかナッツは尻尾を振りながら胡桃を食べ、キャロとシャロもお腹が空いていたのかミルクを舐め始める。
3匹の小動物の精霊がそれぞれおやつの時間に入った所でシンクはソラに声を掛け彼の手を借りたいと話していた件について説明を始めようとした。
「オレがソラに頼ろうと声を掛けたのは他でもない、オマエにとって無関係ではいられないだろうと思ったからだ」
「いきなり話を始めるのか?」
「前置きなんて無くても話があるのは既に理解してくれてるだろ?なら問題無いはずだ」
「まぁ、話を聞くためにここに来たわけだからな。それで?オレには無関係じゃないってのは何の事だ?」
相手から何かしら重要な話がある事をソラは理解している、その上で前置きなく話を進めようとするシンクはまず自身が切り出したソラにとって無関係ではいられない点について語り始めた。
「まず確認だがソラ、オマエはヒロムの味方で間違いないな?」
「は?今更聞く事か?オレはアイツが進むと決めた道を進むし戦うと決めたら一緒に戦う、アイツが苦しみの中で足掻いてるのを見たからこそオレはそうすると決めた」
「あぁ、そうだな」
「で、こんな事を確認したかったのか?何のためだ?」
「言ったろ、『確認 』だ。《十神》の当主……十神アルトが全ての元凶だった事も把握してるはずだ」
「《十家》とやらの3分の2を悪意で蝕み支配した挙句、ヒロムを陥れ潰そうと《八神》を利用するために現当主のあのバカを傀儡に変えて操っていた……が、悪事を暴かれ倒された。あの男の誤算は《十家》でありながら権力を保持しようとせずオレたちに手を貸してくれた《七瀬》と長期に渡って《十家》の制度を壊して日本を変えようと秘密裏に動いていた《一条》の2つの名家の存在を甘く見ていた事だろうな」
「あぁ、そうだ。《十家騒乱事件》などと呼ばれているあの戦いの後、《一条》の当主は自分たちを中心に日本再興を実行しようと考えまず《七瀬》に声を掛け、傀儡という悪意の呪縛を解かれたトウマが当主を務める《八神》に罪滅ぼしてしての参加を要請……そして、あの戦いを終結させる活躍を見せたヒロムを有する一族の《姫神》を加えた4名家が中心となって再興のために今も会議を重ねている」
「ヒロムはその席につかなかった。というか当主にすらならなかったせいでアイツの母親が当主代理って形で参加してんだったな」
「概ね合っている。ヒロムが当主にならなかったと言うよりはトウマが《八神》の当主だからこそ世間から妙な誤解を招かない為という《一条》の配慮もある。血縁上は身内になるアイツらが揃いも揃って上に立ってるなんて捻くれたやつからしたら身内びいきみたく思われかねないからな」
「あのバカはともかく、アイツをそんな風に見るやついるか?大袈裟に名前付けられてるあの戦いで十神を倒した張本人なんだぞ?」
「だからだ。世間の目は甘くない、功績1つで認める人間もいればその功績1つから粗を見つけ騒動に繋げる輩も少なからずいる。そういう輩が下手に動かないよう順当に物事を進めたいってのが《一条》の考えなんだろう」
確認としてソラの言う『アイツ』……姫神ヒロムについてシンクはソラが彼の味方どうかを尋ね、当然の事として味方だと返したソラにシンクは続けてヒロムと共に戦い抜いた《十家騒乱事件》という事件について触れながら現在の状況を話した。
ソラからすれば既に知っている事を今更聞かされているような状態、だがそう思いながら聞いているとシンクは彼が思ってもいなかった事を明かした。
「……で、本題に入るが十神アルトの関係者がまだ逃げてると言えばオマエはどう思う?それも十神アルトの血縁者、つまりは《十神》の人間がいるとしたら、だ」
「あの男の……血縁者が!?」
質問という形で明かされた驚きの内容。それを聞かされたソラは当然自身の耳を疑わざるを得なかった。
十神アルトの血縁者、その言葉が指す意味は……