Bullet21
時を同じく……いや、場所を本来語るべき場所へと戻す。
《王略》のダウト、自らの名を明かしたダウトが自らに秘匿していた情報を開示されたソラは怒りを抑えられず感情を剥き出しにしていた。
「オマエは……オマエは!!」
怒りが彼の冷静さを奪う。故に次に言おうとする言葉を思考の中で選定して発しようにも彼の怒りを占める思考の中では言葉など選定出来ず怒りそのものをぶつける方にしか物事が進められずにいた。
そんな彼の感情を把握しているのか、自らが《覇王竜》の試験体たる事を明かしたダウトはこれまで彼に自身の事を話さなかった理由を明かした。
『私がこの事をキミに最初に話さなかったのは私からキミに情報を与えられていなかったのが大きな要因であり、私が情報を早々に明かさなかったのはキミの真意を把握するためだった』
「真意?下手な言い訳してもオレは納得する気は無いぞ」
『言い訳などしない。これから話す事はキミのこの先の行動の指針に関わる事……私の他の《覇王竜》についてだ』
「……は?他の《覇王竜》だと?」
ダウトが事実を秘匿にした理由、それが下手な言い訳なら容赦はしないと念押した彼に明かされた驚きの内容、まるで《覇王竜》という存在が複数いるかのような話し方をしたダウトの言葉にソラは自らの耳を疑う他なかった。
いや、信じろと言われて信じられるはずが無い。何故なら……
「待て。それが嘘でないとしてもおかしい事に変わりない。そもそも……というか冷静に考えたら既にヒロムが《覇王竜》の宿主であるゼアルを殺した時点であの力は消滅したのも同義のはずだ。現にあの力が残ってるとなれば多くの人間があの力を手に入れようと必死になるし、あれの価値を分かるクソ野郎なら新たな器を用意して再起させるなりするはずだ」
『キミの言う通り、《覇王竜》の力が持つその意味と畏怖される理由を理解出来るものは利用するか処分するかの2択のうちの利用する方を選ぶだろう。だが事実としてその力が日の目を見る事は起きていない。その理由は明確、単純に《覇王竜》の力は《竜騎会》の壊滅の際に死亡したゼアルと共にその力の存在そのものを消滅させたのだからね』
「なら話が成り立たない。オマエの言う通りってんなら消えたはずの《覇王竜》の力を利用するのは不可能……というより、オマエが名乗った《王略》とか言うのも眉唾物でしかない。いや、オマエの場合はプロトタイプだから畑違いなのか?」
『思考を働かせてくれて申し訳ないが、私はプロトタイプだろうとキミの親友の姫神ヒロムの遺伝子情報転用を前提にした強化運用を目的に生み出された忌むべき存在だ。私の延長線上に《覇王竜》の力がある。たとえ大元が消えようと私がいれば途絶えた線を繋ぎ直す事は可能なのだよ』
「オマエ程度ではゼアルにも及ばねぇだろ。つうか、結論を早く言いたいんなら他の《覇王竜》がどういう意味なのかを教えろ。これ以上の問答が無意味ってんなら答えられんだろ?」
『……そうだね、これについては先に話しても構わないだろうね。単刀直入に言うならキミの知る消滅した《覇王竜》は能力者としての覚醒の可能性の渦中にある姫神ヒロムそのものを実現する過程で生まれた力、私の言う「他の」というのは複数の力が束なる事で完成体となる新型の《覇王竜》なのだ。そして、その新型の《覇王竜》は王の名を冠する力を宿した者となる』
「オマエの《王略》ってのがその例か……って、待てよ。束なる事で完成体になるって、もしかしてだが……」
ダウトの言葉、自身が先程口にした『他の《覇王竜》』というワードの中に含まれる意味について知らされる過程で何かに気づかされるソラ。その何かに気づいたソラの『何か』が何を指すのか察しのついているダウトは彼に代わって『他の《覇王竜》』にまつわる真実を明かし伝えた。
『この新型の《覇王竜》はいくつかに分かたれた力とそれを宿す強化能力者が培い蓄える経験と実績を糧に単独部品としての素早い完成を実現させ、それはを1つにまとめ結合させる事により姫神ヒロムが倒した《覇王竜》の力を遥かに超える力……神と成りうる力の実現こそが私に力を与えた者の計画なのだよ』
「神と成りうる力……」
『その一角を担うのが私という事だ』
「……なるほど、クソみたいな話だが理解は出来た。オレは今、ヒロムを苦しめたあのクソ野郎と同じ力に成る可能性を秘めてる存在に道案内されながらオマエのお友達を殺し回ってその完成を阻止しろって事なんだろ?」
『概ね合っている』
「ちっ……こんなもん、正解しても嬉しかねぇよ。で、オマエがオレにとっては敵の側面が強い厄介者って知られた今も案内役を続けるつもりか?」
『その辺は続けさせてもらう。私の案内はキミに私を殺させる所までだと思っているからね』
「クソみたいな契約だな……まぁ、この状況でオマエ以上に利用出来そうなものがない以上、受け入れるしかねぇのも事実だ。仕方ねぇから継続してやる。ただし……今後は全ての情報を隠さず随時話せ、いいな?」
『もちろん。では、そうと決まれば……顔合わせに入ろう』
「……仕切んなよ、死に急ぎ野郎が」
和解というには程遠い形式上の事態の把握と関係性の容認。仲間になってなどいない、これは互いの目的のために利用する関係、利害の上で成り立つ契約関係だ。
ひとまずはこの場を後にして先に行こうとするソラ。まずはダウトの尊顔を拝むべく彼の居る場所に向かおうとするソラだったが、そんな彼の事を何かが……




