Last Bullet
翌週……
どこかの港……
完全には完治していないらしく腕に包帯を巻くシンクは誰かを待っているらしく静かに立ち海を眺めていた。
風が吹き抜ける。吹き抜ける風に乗せるように複数の足音が聞こえて来るとシンクは静かに軽く息を吐くと足音の来る方へと体を向ける。
シンクが足音の方へと体を向けると足音をさせる者たちは彼の前で止まると横一列に並ぶ。
彼の前に立ったのは……ダウト、ネーナ、メイリン、アイディッシュの4人だった。
どういう訳か4人は右耳にインカムを装着し、軍服を想起させる黒い装束に身を包んでいた。ダウトたちのその姿を目にしたシンクは咳払いすると彼らに向け話し始める。
「時間通りに揃ったな。初任務となる今回はオレの指揮下で動いてもらう」
「今回『は』という事は他の人間が上になる事もあるという事かな氷堂シンク」
「そうだ、ダウト。オレが担当出来ない場合はトウマ、もしくは双座アリスの指示に従ってもらう事になっている」
「え!?当主様が現地で!?」
「恐らくは無線による指揮担当という意味でだと思うわよメイリン」
「当主様が現地に来たら私らの仕事が増えるからやめてほしいわね」
「アイディッシュ、言葉に気をつけて。私たちはもうこの間までとは違うのよ」
「ネーナの言う通りだ。オマエたちはヒロムの提案によって《八神》と《一条》の共同で進められている問題があるとして検挙・破壊の対象とされている研究施設の制圧及び人身売買に関与する収納施設から被害者の救出、密入国者が出入りする不法地帯となった地域の掃除を遂行する仕事を担ってもらう。不要な殺しはせず、全員生きて捕らえる事はもちろん、被験者にされ苦しむ被害者は冷静に説得して治療を受けさせるために《姫神》及び《七瀬》の管轄の病院への搬送手配など……やる事は多いから覚悟しておけ」
「私たちが人助け……」
「世のため人のため、か。少し前の私なら吐き気がしてたわね」
「週休何日なのかな〜?」
「……任務前だ。一応、無駄な私語は控えてくれ」
これからのダウトたちがどう活動するのか、シンクがそれを説明するとネーナ、アイディッシュ、メイリンは各々感じた事を呟き、それを聞かされるシンクは呆れたのか溜息をついてしまう。
そんなシンクに向けて、ダウトは尋ねる。
「氷堂シンク、これが……誰かのために動く事が今の私の生きる理由だという事だな?」
「そんなに重く捉えるなダウト。オマエたちが任されるのはこの国……いや、この世界の巨悪の撒いた種を焼き払う事でしか無い。討つべき巨悪はヒロムや一条カズキが担うだろうが……とにかく今は与えられた任務をこなして元の平和な日常に戻れる未来のためにと考えてくれ」
「あぁ、了解した」
「よし……っ、なら行くぞ。任務の詳細は移動中に伝える」
ダウトの質問に少しだけ訂正したシンクは目的地へ向かうべく先陣を切るように移動を始め、ネーナ、メイリン、アイディッシュは彼の後を追って歩き始める。
ダウトも彼らを追いかけようとするが、ふと空を見上げると優しく微笑み言葉を紡ぐ。
「……ありがとう相馬ソラ。仕組まれていた出会いだったとしても、私はキミと出会えて生きる価値を知れた。そして……ありがとう、私たちの呪縛を断ち切ってくれて。直接伝えたかったが……それは何れ伝えさせてもらう」
(私もキミのこれからを信じ続ける。だからキミも……)
ソラへの感謝の言葉を紡いだダウトは先を進むシンクたちの方を見ると進み始める。
自らの命に終わりを告げさせる事を他者に望んだ彼だったが、今は違う。
生きたいと真に願い、それを実現出来る未知を進み始めた。
たとえ、恩人と出会えずとも……
******
その頃……
ソラやヒロムたちの通う姫城学園の屋上、久しぶりに登校したソラはそこで青空を見上げていた。
誰かと過ごしている訳でもなく、1人でただ青空を見上げるソラ。彼に用があるであろうヒロムがやって来ると近づいてくるなり話し始める。
「シンクから連絡があった。例の4人で編成した部隊の初任務が始まるらしい 」
「そうかよ。それは何よりだ」
まるで興味が無いかのような返事をヒロムに返したソラは青空を見上げるのをやめて顔を下ろすとため息をつき、ため息をついたソラは少し間を置くとヒロムの方を向くなり自らの抱いた疑問をハッキリさせようとした。
「どうしてダウトたちを助けようと自分の立場を危険に晒す真似をした?何かに縛られるずに戦える立場と権限を得たオマエがそれを放棄してでもお偉いさんたちからアイツらを守ろうとした理由は何なんだ?」
「あ?」
「あ?じゃねぇよ。トウマから全部聞かされたから知ってるし、敢えて聞く必要も無いと思ったけど、そうやって報告してくるくらいだから多少なりとも何かあるのかと思って聞いたんだよ」
「……簡単な話だ。命を賭けて戦った人間の未来を無責任な大人の身勝手で壊されるくらいならそんな大人たちを守るためだけの面倒くさい立場を放棄したかっただけだ。そんな立場を得て自由な権利を持てたとしてもオレは何も満足しねぇからな」
「んだよ、それ。なんつうか……オマエらしいっちゃオマエらしいけどさ」
「まぁ……1番の理由はオレにとっての負の因縁を断ち切ってくれた感謝を表す方法がそれしか思いつかなかったからなんだけどな」
「……《覇王竜》の事か?」
「誰かを助けても侮蔑されるだけだったあの時の事を思い出させるような敵をわざわざオマエと倒してくれたんだからな」
「アイツらはオレの我儘に付き合わされただけだ」
「ほんとうにそうだとして、面倒に感じてたなら逃げてただろうからそうでもないだろ」
「はぁ……バカらし。ヒロムとこんな話すると頭が痛くなる」
「奇遇だな。オレもだ」
ダウトたちを助ける発言をしたその意図を尋ねたソラの問いに対して未来を閉ざさせないための選択であり、.自分なりの感謝の方法であると返したヒロムはそこから彼と何気無い会話を繰り広げるも2人揃ってどこか気恥しい感覚になり早々に会話を終わらせようとした。
会話を終わらせようとする中、ヒロムは咳払いをするとソラのもとに来た自らの目的である話題を出し彼に伝えた。
「……この話をしに来たのに言い忘れてた。今回のソラの活躍のおかげでオレの管轄下での活動って形で《天獄》の自由行動と独断での戦闘行為が認可された」
「それって……」
「能力者に対しての規制・法改正が進められる中でもオレたちは気にせず敵を武力で倒せるって事だ。オマエのおかげだ」
「……喜べねぇだろ。厄介事を自分で処理出来るってだけだろ」
「何かに縛られるよりかはマシだろ。つうわけで伝える事は伝えたから戻るわ。オマエも特にやることないなら戻れよ」
「うるせぇよ」
「はっ、じゃあな」
用は済んだとばかりにヒロムは足早に屋上から立ち去ろうと歩き出し、用が済んで足早に去って行く彼の後ろ姿を見ながらソラはため息をつき、ため息をついたソラは遠くを見るように視線を空へと向けると仲間として共に戦っていたダウトたちへの思いを呟いた。
「じゃあな、オマエら……オレも、オレにやれることをやってこの世界に抗ってやる。だから……いつか会える時までお互いに頑張ろう」
届くはずが無い、そんな事は分かりながらも言葉を紡いだソラは屋上を後にしたヒロムを追うように歩きこの場を後にしようとした……
それぞれが未来に向けて新たな道を進み始めた。
その道がいつ交わるのか、そもそも交わる事無くすれ違うかもしれない。だとしても彼らは信じて進み続ける……
自らの進む先には確かな未来があるのだと……
fin……
ご愛読ありがとうございました。
今作をもちまして『レディアント・ロード』シリーズは打ち切りという形ではありますが全終了とさせて頂きます。
長きに渡る連載、応援ありがとうございました。




