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新婚生活.4

 変態モグラに制裁を加え無理矢理話を聞き出し終わった佐太郎は納得いかない顔で王宮の廊下を歩いていた。


――夜の営みが無いご婦人っつーのは、ライマのことか?


 勿論モグラはその事実には気付いていなかったが、佐太郎はピンときた。 ライマの「わからないこと」がそれであると。


――もう3ヶ月だぞ? 若い男が、そんな、ありえねぇ。 理由はやっぱ、あれか?


 佐太郎は腕組みをしてしばし考えた。

 そして懐から科学魔法の札を取りだし壁に貼り付け、空間をライマ達の家へと繋ぐ。

 扉と化した札をノックすると、ラフォラエルが扉を開けた。


「佐太郎さんですか。 どうしました?」

「いや、ちょっとどうしてるのかなと思ってさ」


 佐太郎はそんな事を言いながら部屋に入る。 ラフォラエルは佐太郎をソファーに案内してから慣れた手つきでお茶を入れて戻ってきた。


「紅茶ですが」

「かまわねぇよ。 ……で、ときに、お前さんが戻ってきて3ヶ月。 何か困ったこととか不便な事とかないか? 何しろ俺にとっても初めての例だからな、お前さんは」

「俺個人では特に無いですね。 でも、ライマの事とか色々協力して頂いて本当に助かってます」


 ラフォラエルは礼儀正しく頭を下げる。


「いやいや、礼なんていいんだ。 お前さんが死んだ時のライマの悲しみっぷりは本当に可哀想だったからなぁ。 俺はライマが幸せならそれでいいってことさ」

 佐太郎はあえて「ライマが幸せ」の所だけ強調した。


「それは俺も一緒です。 ライマが幸せなら、俺はもう何もいらない」

 ラフォラエルは怖じけることなくはっきり告げる。

「ライマを愛してますから、あいつの事を一番に考えたい」


「おお~。 言うなぁ」

 佐太郎は嬉しそうに笑い、しかしほんの少し不安そうに彼を見た。


「なぁ、何か甘いモンはないか?」

「甘いものですか? ありますよ。 ライマが甘党だから。 ちょっと待って下さいね」


 ラフォラエルは立ち上がり炊事場へ向かうと、佐太郎は袖口から小さな包みを取りだし、その中の紫色の粉をラフォラエルのカップに注ぎ入れた。

 ラフォラエルは何も気付かずに戻ってきた。


「栗入り羊羹ですけど」

「お、おう。 貰う貰う」


 佐太郎は頷き、何食わぬ顔をして座り直す。


「美味いな。 これもお前が作ったのか?」

「いえ、これは城下町のかまどやで買ったんですよ」

「ってことはお前、出歩いてるのか?」

「はい。 髪も伸びたから俺を俺と分かる人もいないだろうし……。 食事の買い物とかしなきゃならないですしね」

「そりゃ、そうだなぁ」


 完璧に主夫だな、と口に出さずに佐太郎が羊羹を口に運んでいると、ラフォラエルは、粉が入ったカップの紅茶をごくりと一口、そして続けて3口飲んだ。


――よしよし。


 それを確認した佐太郎は満足そうに小さく頷く。


「んじゃ、俺はまた行くな。 何かあったら言えや」

「はい」

「ガンバレよ」


 そう告げる佐太郎は再び科学魔法の札を使って王宮の廊下に戻ると、薬の入っていた紙包みを取りだしてニヤッと笑った。


「特製の精力増強剤。 90のジジイでも元気になる俺様の力作っと」


 そして証拠を消すかのように紙包みを握りつぶしてポケットに入れると、今度はラムールの事務室に向かう。

 事務室ではラムールがてきぱきと書類を整理していた。


「あっ、佐太郎。 さっきはありがとう。 助かったよ」


 佐太郎が部屋に入ってくるとラムールは顔を上げて微笑んだ。 なんだかとってもスッキリしている。


「お、……おう」

 あまりに生き生きしているのにドキマギしながらも、仕掛けは終了のためにはあと一息。


「なぁ、ライマ。 今日は何の日か知ってるか?」

「今日?」

「今日はな、昔からの言い伝えで、この日に結ばれた男女は永遠の愛が続く、っつー日だ」


 その言葉にラムールは動きを止め、ほんの少し頬を赤く染めた。


――どんなに男のフリしても、こーゆう時はちゃんと女の顔をするようになったんだなぁ……


 佐太郎は感心した。

 当然、昔からの言い伝えとは口からデマカセであるが。

 しかし、これでライマが積極的になってくれれば、結果的には幸せが待っている。




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