中編
☆☆☆冒険者ギルド
勇者出現の報を聞きつけやって来たのは、冒険者たちだ。
市場の目の前にギルドがある。
冒険者、この国のこの時代の冒険者はサムソンを筆頭に、ならず者たちがなる職業に成り下がっていた。
「緊急クエスト!勇者が出たぞ!」
「性別は女、勇者パーティは、娘ッ子二人、爺さん・・・サムソンがいます!あの勇者殺しのサムソンが捕まっています!」
「何だと。サムソンがだと!ええい。一人1日金貨3枚(30万円)出すぞ!」
この国の冒険者ギルドのトップ、ギルドマスターは、困惑をする。
・・・意味が分らない。あのサムソンが捕まっているだと!
いや、前から、胡散臭い男だとは思っていた。
なら、好機!私が、名実共に冒険者のトップになれる。
いくら、勇者とは言え。大人数での攻撃に晒せば倒せるのは実証済み。
相手は、少女だと言うではないか?
「とにかく、様子を見る!案内しろ」
「ヘイ」
冒険者ギルドの扉をあけ。
ギルマスが、外に出た瞬間。
バン!と音とともに、
ギルマスの額に穴が空き。後頭部がスイカのように飛び散った。
「「「ヒィ、何だ!」」」
ギルマスは思考途中で意識を永遠に失うことになった。
ドタン!
「ギルマスが、魔道具でやられた!」
「三百メートル以上、離れてやがるぜ!」
「おい、どうする!」
真相は、この国では存在しない銃により。7.62ミリ弾がギルマスの額に着弾したのだ。
勇者、女神様の御使い。王の命令の下、民を、魔族や匪賊から守り。魔王軍を打ち破る者。
しかし、この国の者は全て知っている。
その勇者を、15年前に弑してしまったことを、
☆勇者視点
勇者が手にしている魔道具は、
日本では、64式7.62ミリ自動小銃と呼ばれるものだ。
最大、毎分500発、一秒に8発撃てる性能である。
彼女は、膝撃ちで冒険者ギルドに向かって、構えている。
立ち撃ちよりも、200メートル以上の敵を正確に狙える。
ただし、弱点もある。
照門をのぞき、照星に会わせて、射撃をする。
故に、視野は狭くなるのだ。
だから、勇者は、信頼出来る者に警戒させていた。
「勇者様、左右、異常なしでございます」
「ジィ、有難う・・・」
・・・息を、止める。吸う、吐く。撃つ
バン!
老人は警戒しながら、フランクの先見の明を讃える。
「さすが、王都の大親分殿、サムソンを生かせておいたら、冒険者の奴ら、向かってきませんね。申訳ありません。しばらく、その縄を持っていて下さい」
「ヒィ、そんな理由で言ったんじゃないよ!」
・・・ちきしょう。勇者様に加担しているみたいじゃないか?
いや、している。
それでいい。15年前の借りを返すぜ。
「野郎ども、人払いをしろ!ここは戦場になるぜ」
「「「ガッテンだ」」」
俺は、配下のゴロツキ、と言っても皆、元冒険者たちだ。王都市民の避難を命じた。
俺の勘が正しければ、この娘は、勇者の子・・
この先は、避難民に混ぜて、逃げてもらおう。
勇者一人と、爺さんと少女だけの勇者パーティ、
いくら、強力な魔道具を持っていても・・・この王国の軍隊には、勝てないだろうな。
王都内でも一万の戦闘員はいる。
勇者は立ち上がった。
武道で言う前屈立ちの姿勢を取り。
銃を負いヒモでつり。左手で、銃を上から押さえ。右手で、銃尾を腰で固定し、引き金に指をかける。
前からの衝撃に備える撃ち方だ。
そして、
64式7.62ミリ小銃の切替え軸部を、連射の「レ」に合わせた。
「フフフフ~~ン。64(ロクヨン)のレは、鏖レッツゴーの「レ」~~」
ババババババババババババババババン!
わずか3秒未満で20発入りの弾倉が空になった。
ひたすら、撃つ。
「勇者様!弾倉です!」
もう一人の少女が弾倉を手渡す。
「ベッキー、戦闘補助有難う・・・あれ、もう、冒険者はいなくなったわね」
俺は、この空白の時間を狙って、爺さんに話した。
「俺は、フランク、15年前に、聖女サユリ様に治療をしてもらった冒険者です!恩を返したい!
いくら、強力な魔道具があったとしても不利だ。この国の軍隊に勝てない」
・・・15年前、王命で勇者討伐命令が出された。
万を越える軍隊が勇者パーティに襲い掛かり。一振りで、数人は斬る剣聖、爆裂魔法を詠唱無しで撃てる賢者、そして、雷神魔法を使える勇者ケンジ様とエリアヒールを使える聖女サユリ様、
果敢に戦ったが、精鋭部隊3000人の戦死と引き換えに、勇者パーティは全滅した。
「今、部下たちを、王都に配置している!どさくさに紛れて、お逃げなさい。力を貸しますぜ!」
「フフフ、フランクさん。もう、一人、忘れてはいませんか?勇者パーティのハンス、ポーターのハンスですよ」
何?
☆15年前、王都前平原、
魔王討伐を成し遂げた勇者パーティを出迎えたのは、この王国の騎士団と魔道師団でした。
重武装の騎兵と、魔道師団の大規模魔法が襲いました。
『ハンスさん。この子をお願い!』
『そうだ。お孫さん。生まれたのだろう?一緒に育ててくれないか?』
『フン、もう、力がない。最後、穴開けるよ!並のポーターじゃ抜けられない穴だよ!さっさと準備しなさいね!』
『ハンス殿、貴殿しか出来ないお役目だ』
私は涙をのんで、突破口を、赤子だった勇者様を抱いて、逃げ出しました。
今、勇者様の戦闘補助をしているのが、孫のベッキーです。
・・・・・・
「そうじゃない!現実を見ろ!裏を返せば、勇者は、軍隊で討伐出来る。いくら、その子が、魔道具を召喚出来るかって言っても、いくら、身体強化が出来ても、一万の軍隊を相手にはできない!
魔法が使えなくなってから、魔道具しか使えなくなった。だから、強力な魔道軍が出来たんだよ!」
しかし、爺さんは笑い出した。
「アハハハハハ、申訳ございません。何故、魔王軍は、軍隊で勇者を迎撃しなかったのでしょうか?おかしいですね。迎撃も魔王軍の幹部の小部隊だ。まるで、紳士条約があるみたいですね。
しかし、今世の勇者様を見て、納得しました
勇者の国には進化と言う概念があります。意味はとても深いのですが、一般用語で言えば、対処出来る能力が身につく。とでも言いましょうか?」
「じいさん。思わせぶりは無しだぜ。俺はあんたたちに生きてもらいたい!あのキラキラしたケンジ様と、サユリ様が大好きだったんだよ!」
「今世の勇者様、アキ様は、進化なさいました。かの国の軍隊を引き寄せることが出来ます。軍隊に対抗出来る力をお持ちだ。
魔王軍は分っていたのです。軍隊で討伐すれば、次は、もっと、強力なナニカがやってくると・・・勇者と魔王の首取りゲームにした方が、得なのです」
今世の勇者様は、アキ様と言うのか。俺の名など興味ないだろうと思っていたが、まるで、そんな心を見透かしたように、彼女は名乗りを上げた。
「フランクさん。私はアキ・ニッタ、母様がつけてくれた名前に、父様の家門名をもらった・・」
「ああ、分った」
急に、あの狂気じみた話方が変わったが・・
[凡人召喚!陸上自衛隊、本部管理中隊1コ、普通科中隊3コ、重迫撃砲中隊一コぉ、レンジャー小隊、一コォ、施設科中隊一コ、配置完了まで!]
な、何だ。聞いたことの無い言語だ。
魔法陣、ここ15年見たことのない。鈍い青色の光を帯びた召喚獣が地面から生えてくる・・・これが、爺さんがいっていたかの地の軍隊か?
服は、まだら模様、鉄ツブテの持ってやがる。
市場中に、浮かび上がってやがる。
人払いをして良かったが・・・これでも、数百、千もいまい。
指揮官か?壮年の男が、少女に近づき。まるで、上官に対するように、帽子のつばに触れるような礼をしてやがる。
[戦闘団長!編成完結式省略!配置まで完了!]
少女が礼を返し、
また、大声で発する。
[めいれぇえかぁた~~~つ(命令下達)!敵情、不明、我、一個戦闘団、王は捕獲、以後、状況終了まで、敬礼省略!ハーグ陸戦条約適用除外!地点指示、ここを起点にして二時の方向の著名な石の塔群が王城!]
[敵情不明、王の捕獲、ハーグ陸戦条約適用除外!王城確認!了解]
[事後の行動にかかれ。別れ!]
何だ。意味は分らないが、軍隊のようだ。
まるで、杉の木のような、ものを建ててやがる。
この世界の者には分らない。
簡易アンテナを立てている。ここを指揮所にするようだ。
カン!カン!カン!
組み立て式の陣地、鋼矢板を鉄のカスガイで、止める。
銃の陣地や、鋼鉄のビニールハウスのような建物を建てる。
[情報小隊!偵察ドローンをあげます]
ブ~~~~~~ン
ドローンの発展により。現地の部隊レベルで、航空写真が可能になった。