25限目 日々
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
Dear my friend.
Isn't every day without you a monochrome world? What meaning does this world have?
*****
数日ぶりに学校へと登校する。いつまでも休んでいる訳には行かないし、休んだからといって何かが変わる訳でもない。
通学バスのざわつき、学校の騒がしさに日常へと戻ってきた実感が湧く。
「おはよー」
教室に入り、咲希に挨拶する。
「おは……、安芸?!」
いつも通りの友達のいつもではない反応に、私は苦笑いをするしかなかった。
学校を休んでいるあいだ、特に何をするわけでもなかった。でも、ひとつだけしたことがあった。
髪を切った。
元々セミロングくらいだったのを、肩上までばっさりといった。
「え、どうしたん?大丈夫……?」
いつもは何かを察してもそこまで踏み込んでこない咲希が思わずそう口にしてしまうほど、私の変化は驚きだったよう。
遥香や早織も驚いたように私のもとへとやってきたし、周囲のクラスメイトの視線も集まっていた。
「失恋」
驚く咲希に私は少し笑いながら、さらっと端的にその言葉を口にした。自分でも驚くほど気持ちの動揺がなく、髪とともにわだかまりとか重々しい気持ちもなくしたかのようだった。
私自らの言葉によって、噂は広がった。
秋元と破局したのだと。
元々、遥香たちには付き合っていると思われていたし、冬休み以降は別れたんじゃなかろうかと噂もされていた。
でも、この前の秋元が教室に来たことや私が数日休んだこと、そして失恋が故の髪を切ったことなどから、正式に別れたのだという噂がすぐに広まっていった。
別に付き合ってなかったし、秋元のことは恋愛感情での好きという気持ちはない。
けど、もう私の想う相手がいないなか何かを否定するのも面倒で放っておいた。秋元に多少の迷惑はかかるだろうが、たぶんあの人は気にしない。それに秋元ほどの人柄や人望があれば、彼女だってすぐ出来るだろうし、私との噂がそれを阻むとも到底思えなかった。
何人かには直接噂を確かめられたこともあったけど、言葉を濁してはぐらかしていた。
秋元は学年でも有名人だが、誰かと付き合うといった話は今まで一切出てこなかった。たぶん影ながらに秋元のことを好きな人は多いんだろう、だから真実を知りたいというひとが何人かはいる。
学校や学年の中でも全く目立たず、クラスが一緒にならない多くの同級生のなかには私のことなんか知らない人も多い。けれど秋元と接点を持つことで、その他大勢という枠組みから出てしまっていた。
しばらくはそういう噂で周りがとやかく言っていたが、時間とともに噂は少しずつ興味を失われる。無闇に否定して騒ぎ立てるより、波風を立たないようそっとしている方が早く周りが関心をなくしていく。
そうして、騒がしくざわつきながらも私の日常は戻ってきた。
どこかこの空気感に安心感を覚えながらも、もう埋まることの無い空白はぽっかりと空いたままだった。虚しくなるとか、悲しくなるとかではなく……ただ吉田がこの世界のどこにもいないということに実感がわかない。
元々、同じクラスだったわけでも、毎日会うほど仲が良い関係性だった訳でもない。限られた時間の限られた場所ですごしていた
本当に吉田との思い出とか、過ごした時間なんて少ししか無かった。自分でも驚くほど少なかったのに、なによりも大切で無くてはならない思い出と時間だった。
もっと早くこのことに気づいていたら、何かが違っていたのだろうか。
考えても仕方の無いことを時々考えながら、私の日常は続いていくのだろう。
約:君のいない毎日なんてモノクロの世界じゃないか。こんな世界になんの意味があるんだろう。
良くも悪くも噂というものは勝手に広がりますね。
いやほんと、ほっといてあげてよ……って思う時もあります。
悪意がなくても不用意な言葉でも人を傷つけることはあるので、自分も気をつけなければ……と思います。




