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Dear my friend  作者: 万寿実
第五章 lose color
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20限目 告白

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。


 Dear my friend.

 Didn't you know that I've been in love with you for a long time?




 *****



 秋元と吉田、ふたりだけのバンド──colorのライブが終了した。没頭させるほどの音の世界をみせたふたりは、暖かく惜しみのない拍手に包まれる。


 そしてライブが終わったあと、秋元と吉田は何人かの観客に声をかけられていた。どうやら吉田の病棟のスタッフや秋元の知り合いが少し来ているようだった。

 私は吉田のお母さんと少し話をして過ごしていた。


 吉田のお母さんは明るくて優しく、初めて話すのに緊張はするが話してやすくて前から知っていた間柄のように感じるところがあった。



「斎藤」



 呼ばれて振り向くと、秋元と吉田が私を手招きする。吉田のお母さんに挨拶をし、2人の元に行く。


「どうやった?」


 妙に自信満々な空気の秋元が率直に感想を聞いてくる。吉田も少し恥ずかしそうにしながらも、真っ直ぐとこちらを見つめており、改めて今日のライブを行うにあたりの二人の覚悟を垣間見た気がする。



「めっちゃ凄かったし、めっちゃ楽しかった」



 引き込まれ、その世界へと没入し、こんな音楽に出会うことなんて予想だにしていなかった。秋元の奏でる音が世界を作り出し、吉田の声がそこに命を吹き込むような……本当になんて言葉にしたらいいのか分からない音楽に出会えた。


 もっと自分の言葉で二人の音の世界を伝えたいのに、今ふたりにどんな言葉を言ったらいいのか分からないし、適切な表現が思い浮かばない。



 ただただ、凄かったし楽しかった。



 それだけしか伝えられない自分にもどかしさを感じる。



「「良かったわ」」



 秋元と吉田がハモってそう言い、嬉しそうに笑っていた。


 それから他愛のない雑談に花が咲く。吉田の病室で過ごしていたときも、こうして話していて楽しくて学校にいる時みたいだった。


 いま、吉田も制服を着ているか本当に放課後の教室にでもいるかのように思えてならなかった。

 秋元とあの選択Bの教室で会わなかったら、たぶん過ごすことなどなかったこの放課後のような時間と瞬間が、なによりも楽しくて仕方がない。


「俊明ー」


 誰かに名前を呼ばれ吉田は振り向く。そこには吉田のお兄さんの姿があり、カメラを片手に持ってこちらに手を振っていた。吉田のお姉さんもその隣でスマホを構えている。


「姉ちゃん、あとで俺にも送ってー」


 自然と3人で並び写真を撮ってもらい、秋元は吉田のお姉さんにそう言う。


 改めて見ると、秋元は吉田一家の一員かと思うほど溶け込んでいるし、吉田一家もそれを受け入れて当たり前のように接している。普通の友達というのとは少し違う関係性のように思え、いかに秋元が今まで吉田と吉田の家族の近くにいたのかを感じとることができる。


 雑談と写真撮影を終え、会場は片付けに入る。片付けを少し手伝い始めたころ秋元に呼び止められる。



「斎藤ええで。今日は俺らが招いたからな」



 笑いながらそう言い、吉田を呼ぶ。



「トシー、お前も。はよ病棟戻りや」



 吉田はまだ闘病中であり、今回も無理を通してここにいる。検査データや全身状態が良いとはいえ、治療により何かしらの病原体の感染に気をつけなければならないのは変わらない。


「ほんなら後は頼むわ、秋元と兄ちゃんら」


 吉田はあっさり頷き、私を手招きして部屋の外に出る。改めて吉田の家族に挨拶をして私は上着を着て吉田を追って部屋の外へ出ると、吉田が待ってくれていた。


 そのまま他愛のない話をしながら歩き、病院の出入口へと向かう。

 こうして手の届く距離にいて歩くのが少し新鮮で、不思議な気がした。放送委員をしていた時はこの距離にいるのが当たり前で、行事ごとのたびに一緒に色んな所へ行って手伝いや仕事をしていた。


 2年生になり、お互いにクラスも違えば放送委員でもなく、ましてや吉田は病気のため休学している。この距離にお互いがいることが少し不思議で、どこか懐かしい。


 病院の出入口にたどり着き、吉田に別れを告げようと立ち止まる。


 けれど、吉田は自然な手つきで私の手を取り歩き出し病院の外へと出る。


「吉田?!」


「すぐそこまでな」


 少しいたずらっぽく笑い、吉田は病院の外の世界を歩く。掴まれた手は暖かく、痩せて骨ばった吉田の手の形を初めて自分の手で感じ取る。知っているようで、私は吉田のことをそこまで知らない。


 意外としっかりと暖かい手のぬくもりも、歩く速度が実は少し速いことも、手の力が思ったよりも強いことも……。


 病院の敷地を出て右へと曲がり、歩き続ける。


 私と吉田の間になぜか言葉はなかった。

 本来なら吉田にすぐに病院に戻るように言わなければなかったし、無理にでも帰さないといけない。


 でも、何故だかこの時間を──瞬間を手放したくなかった。



「斎藤」



 歩き続けていた吉田が歩みを止める。目の前には信号があり、ここまでなのだろう。


「吉田」


 今日のお礼と早く戻るように言わなければと、吉田の名前を呼び口を開く。

 掴まれていた手の温もりが消え、その代わりその温もりはもっと近くになった。


 吉田は私の手を離し、そして今度は私を抱きしめていた。息遣いと存在をすぐそこに感じられる。



「俺、斎藤のこと好きや」



 心臓の鼓動が跳ね上がり、息の仕方を一瞬忘れる。


 吉田はそれだけを告げると私から離れ、「気ぃつけてな」と言って踵を返して病院へと戻っていく。


 突然の出来事に私は身動きが取れず、吉田の顔すら見れなかった。聞き間違いかと、何かの間違いかと思うけれど……痛いほどの胸の鼓動と吉田の温もりの残り香が、今のこの状況が現実なのだと証明するかのようだった。




訳:知らなかったかな、君のことずっと前から好きだったんだ。


この物語はフィクションです、なので入院患者が病院職員の許可なく勝手に病院外に出ることは絶対ダメです!

ほんまダメです!


なので物語上の演出と思って暖かい目で読んでやってください。


作者は医療関係の仕事なので、これやられるとほんと困る!自分で書いといてなんですが、何やっとんじゃ!って感じですね(笑)

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