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Dear my friend  作者: 万寿実
第4章 colorful
23/34

18限目 ライブ

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 Dear my friend.

 I want you to enjoy yourself to the fullest today. We may have met today for this day.




 *****



 二学期のテストがすべて終わり、朝晩は吐息が白くなるほどに毎日が寒い。毎日マフラーや防寒具が手放せなくなり、元々行動的では無い私の出不精はさらに加速する。


 吉田と秋元は病院でのライブを行うための準備に勤しみ、私は変わらない毎日を送っていた。吉田の検査結果が悪く面会できない日々が続き、ライブ予定日まで検査結果が改善するのか、ライブが決行出来るのか分からない日々が続いていた。


 そんな中でも秋元は楽しそうに準備のことなどを話してくれ、人が心の底から笑う表情を初めてこんなにも見た気がした。秋元は裏表のない性格で、今までも本当によく笑っていたが、今見せてくれる表情はそれらとは別の意味で輝いていた。今まで毎日見てた秋元が嘘偽りでは無いが、今現在の秋元の表情や声色が本来の秋元のものなのだろう。


 そして、ライブが出来るか否か分からないギリギリのなかであったが吉田の検査結果が改善しライブの許可がおりた。

 予定通り、12月24日の二学期の終業式後の午後開催となる。


 人数制限はあるが、院内にもポスターを貼り感染対策を徹底した上での2人のライブが執り行われることとなった。

 面会制限もあり私はライブ案が決まった時から殆ど吉田に会えずに、ライブ当日を迎えた。



 終業式後、いつものメンバーで遊びに行かないかと誘われたが予定があると断り1人で吉田の病院へと向かった。秋元は準備があるから先に行き、あとで来るようにと言われていた。


 吉田の病院までの道のりはいつも秋元が一緒だったので、ひとりで進んでいくことに少し緊張するところがある。今まで何度も通った道なのに、友達がいないだけで随分と寂しい気持ちになる。午後からなので少し時間があり、病院近くのカフェで軽くサンドイッチを食べて時間を潰した。


 咲希といつもよくNIKKUのライブへ行くから、同級生バンドのライブというものは見慣れているのに、吉田と秋元のライブに行くのは何故かとても緊張して、そしてワクワクが止まらない。



 時間となり、私はライブの場所である市民病院の多目的室へと向かう。いつも病室へと向かうのとは違う道筋に緊張しながらも、目的地にはあっさりとたどり着く。


「斎藤、待ってたで」


 いつもと変わらない秋元が多目的室の入口で私を待ってくれていた。中を軽く覗くと、入口から1番遠い奥にギターやマイクが設置されステージが出来上がっていた。そこから少し距離を離して椅子が並べられており、三十人ほどが座れるようになっていた。


 秋元に促され中に入る。入口すぐに受付があり女の人がマスク着用やアルコール消毒などを説明してくれ、パンフレットをくれた。会場内には既に何人かいており、座っている人もいた。


「おばちゃん」


 秋元は1人の女の人に声をかける。


「秋本くん、どうしたん?」


 顔見知りなのか、女の人は慣れた様子で秋元と言葉を交わす。優しそうな雰囲気で私の親とそう変わらない歳であろうその人は私に気づく。


「前にってた同級生の斎藤。いっちゃんええとこ座らせたって」


 紹介され、私も自己紹介をする──と言っても単なる同級生でしかないので名前を名乗ることくらいしかできなかった。


「俊明の母です。お見舞いにも来てくれてたんやってね、ありがとうね」


 優しく話しかけてくれる吉田のお母さんに対し、私は「いえ、そんな」と気の利いた事も言えず答えるしかできなかった。


「もー、秋元くん。俊明も秋元くんも名字でしか話してへんかったから、おばちゃんてっきり男の子かと思ってたわ」


「そうやったっけ?」


 秋元は楽しそうに軽く吉田のお母さんと談笑し、私を連れて会場を出る。その際、会場内にいて案内をしていた男の人と受付をしていた女の人が、吉田のお兄さんとお姉さんであることを知る。吉田が三兄弟の末っ子であったことや吉田の家族について初めて知った。


 多目的室の隣の部屋に案内される。そこは多目的室よりも少し小さい部屋で、長机や椅子が並べられていた。電気はついているが人がいない分、随分と寂しげに見える。


「斎藤」


 聞きなれた声に呼ばれ、そちらを向く。



「え?吉田…?」



 見慣れたはずの吉田の姿を探し、そこには少し見慣れないけど見慣れていた姿の吉田がいた。変わらず治療の影響でやせ細ってはいるが、その姿は見慣れた吉田だった。制服を着て、見慣れた髪型の吉田がいた。


「俺の父さんが学校行くようになったりしたらいるやろって」


 吉田は笑ってそういい、自分の髪の毛をそのまま取ってみせる。


「もうちょいイカしたズラあったやろー。モヒカンとか」


「それはお前の方が絶対似合うわ」


 一度取ったカツラをセットし直しながら、吉田と秋元は当たり前のいつものやり取りをする。その姿にここが病院じゃないのではないかと思えてしまうほど、不思議と校舎の一角にいるような気分になる。


 再会してからは私服か病院着ばかりだったため、制服姿の吉田が懐かしい。私はブレザー、秋元はワイシャツを袖まくりし、吉田はセーターを着用している。



「斎藤、ありがとう」



 吉田は笑ってそう言い、私は静かに頷く。


「期待しとけよ、斎藤」


 吉田の肩に腕を回し、秋元はにやりと笑みを浮かべる。その揺るぎない自信に少し圧倒されながら頷くが、吉田は「ハードルあげんなよ」と自信なさげに呟いていた。


 軽く話したあと、私は会場に戻る。秋元の根回しのおかげで1番前の真ん中に座ることができ、時間まで妙にソワソワしながら過ごす。



訳:今日は目いっぱい楽しんで欲しいな。僕らは今日この日のために出会ったのかもしれない。


私もなぜかドキドキしながら書いてました。

個人的にトシのお母さんが「もー、秋元くん。」って言ってるシーン、結構すきです。

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