17限目 日常
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
Dear my friend.
You don't care about rumors. I hope it doesn't hurt you or make you sad.
*****
冬本番の寒さで毎日凍えている。
肌を刺すような風、体の芯から冷えてしまうそうなほどの空気に毎日うんざりする。
「体育の持久走、ほんまもう無理やってー」
お昼休みのお弁当を食べながら遥香のテンションは低空飛行だった。分厚い雲が空を多い、ひたすらに寒い真冬の今日、午後の授業で持久走がある。寒い、つらい、しんどいの三拍子に運動部の遥香でさえそう口にしていた。
「明日、実力テストやしな」
咲希の一言にさらにみんなのやる気が無くなる。
「遥香のトドメ、刺したな」
笑いながら早織は机に突っ伏してしまった友達を指さす。もうすぐ冬休みになるが、その前に実力テストや模試が立て続けにある。どんよりとした曇り空と同じくらい、気分も沈んでしまう。
突っ伏したまま遥香は口を開く。
「安芸、最近どうなん?」
くぐもった友達の言葉に私は何を言ってるのか分からず「なにが?」と返す。
「秋元やん。付き合ってるんやろ?」
机に頭を置いたまま遥香はにやりと笑ってこちらを見る。周りを見ると早織は興味深げに、咲希は何とも言えなさそうな表情で私を見ていた。
度々、秋元とは一緒に帰ったり行動することがあり遥香たちに何度か見られたこともあった。それに特に咲希に関しては一緒に帰ったり遊ぶことも頻度としては減っており、明らかに私の行動が以前とは違うことは実感しているようだった。
ただ、咲希から何か聞かれたり探られたりすることもなく当たり障りのない毎日が続いていた。
「付き合ってへんよ」
自分で言うのもなんだが、確かに急に秋元とやたらめったら会ったり行動しているのだから怪しまれてもおかしくはない。交友関係も基本的にクラス内でおさめている閉鎖的な私の行動とは、秋元という存在はかなりかけ離れている。
「うっそー。あんだけ一緒におるんやし、仲ええやん。なあ、咲希」
起き上がり食い気味に遥香は咲希に同意を求める。
「仲がええことと、付き合ってるかは別やろ。安芸が違うって言うんやったら、違うんやろ」
平然と咲希はそう言い、何も無かったかのようにお弁当を食べ進める。
「まあ、そうか。じゃあ、好きなん?」
咲希の言葉に素直に納得しながらも、遥香はなおも私に質問を重ねる。
「人としてはな」
質問の意図を分かりながら、私は言葉を選んで返事をする。秋元は面白くて、優しくて、強い人で⋯一言で言うなら「ええやつ」だと思う。裏表がなく、いつも笑っていて、誰に対してもそういう態度だから皆が秋元のことを気に入って、周りに人がいるのだろう。
「ほんまにー?安芸らの仲の良さって、なーんかありそうやねんけどなぁ」
食いついてくる遥香の言葉に少しドキッとしてしまう。吉田のことがあるからこそ、私たちは今の関係にある。何も話していないのに見透かされたかのような言葉に息を飲みそうになる。
「「「遥香、暇なんやろ?」」」
気持ちを押し殺し口を開くと、偶然にも咲希も早織も私も全く同じことを口にしていた。
授業でも楽しくないことが続き、他にもきっと特に楽しい話題もないのだろう。だから人の話が気になるのかもしれない。
「誰かおもろい話ないん?」
私たちの言葉を否定することなく遥香は堂々としている。
確かに他人の色恋沙汰は聞いていて楽しいし、聞いている方もドキドキワクワクする蜜の味だというのは分からなくもない。
「数学の波多野先生、結婚するらしいで」
飢えた遥香に早織が最近聞いたという教師の話を持ち込み、遥香はすぐにそれに食いついていた。
私と秋元の関係は単なる同級生であり、友達としか言いようがない。けれど、はたから見ればたぶん少し怪しいのだろう。
だけど、たぶん私も秋元もお互いを「友達」という言葉以外では表すことは出来ないし、それ以上なにかを言うこともできない。
噂がひとり歩きした所で、それは単なる噂でしかないと私たちは思っている。くだらない噂が流れることに何も思うことは無いけれど、これが吉田の耳に入ることがなくて良かったと少しだけ思う。
訳:君は噂話なんて気にもしないね。それで君が傷ついたり、悲しまなければ良いんだけど。
恋愛話は人の分を聞いている分は楽しいけど、自分のことを話すのは恥ずかしいと思ってしまいます。
咲希は1番近くで安芸と過ごしている分、きっと思うところや感じることは多いけど、安芸が何も言わないならそれを受け入れて過ごしているんだろうなと思います。




