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君と見たい流れ星

作者: 波触雪帆

 山の上の神社へと続く石畳の階段を俺は今走っている。大雨が振った後の階段は濡れていて気を抜くと滑ってしまいそうになる。先程まではぁはぁと鳴いていた俺の喉は、今はゼェゼエと吠えている。下を見ると、暗い階段の先を灯篭の炎が茜色に照らしている。上を見れば空に浮かぶ満天の星々が俺を見ている。まだ、階段の尾は見えない。肺が熱い。痛い。苦しい。今すぐにも止まってしまいたいという願望が脳の奥から湧き上がってくる。きっと向こうも来ていない。少しくらい歩いたって構わないじゃないか。俺の中の俺がそうやって誘惑する度に俺は必死に頭を振って追い払う。いないわけがないじゃないか。俺はそう言い切る。

 「君と一緒に星を見たいな」

 彼女がそう呟いた声が頭の中を反響している。いつも通りの気丈さに、いつもは見せない切なさを滲ませた彼女の声を。一度言ったことは決して曲げない彼女は俺のことを待っていると言ったのだ。彼女の願いを叶えられるのは数千年に一度の巡り合わせの流れ星でも、彦星と織姫を結ぶ鵲でもなく、他でもない俺ただ一人なのである。俺は逃げそうになった。必ず彼女の横にいると誓ったのに。なんて薄情な男だろう。もう俺は逃げるわけには行かない。彼女は待っている、俺が現れることを。

 本当はわかっているのだ。俺は行くべきでないと。行かないほうがお互いのためだと。きっと彼女の人生に俺は必要ないし、俺の人生は彼女にとって不釣り合いだと。きっと、今までの毎日がただの夢で、それがただ覚めただけだと諦めるほうが正解で、利口で、賢い生き方だと。それでも俺は走り続けた。これは俺の、俺たちのエゴの暴走であり、俺たちにとって最初で最後であろう世界への反発だった。使い回されて重みも消えた言葉かもしれないけれど、世界が敵に回ろうとも、俺だけは彼女の味方でいなくちゃいけないのだ。きっと俺が生まれてきたのは、彼女のためなのだと、根拠がなくとも簡単に信じられた。

 既に口の中には血の味が広がっている。あぁ、自分の力不足が恨めしい。階段の尾はもう切れている。止まるな、止まるな。走れ、走れ。

 階段を抜けた先の見晴らしの良い展望台に、浴衣に身を包んだ彼女の見知った背中があった。星々浮かぶ天の川に白く細い線が走り出す。息を整えながら。彼女との距離を詰めていく。少なくともこの時の俺の世界には、俺と彼女の二人しかいなかった。他の何も、要らなかった。

 どうも、波触雪帆です。「君と見たい流れ星」お読みいただき誠にありがとうございました。この作品は2つのキーワードを組み合わせて生み出す千文字以内のショートショートの第二作です。今回のテーマは「現れる」と「約束」でした。

 第一作のあとがきには「目指せ毎日投稿!!」とか書いたと思うんですが、既にこんなに時間が過ぎておりまして…笑。大学のオーキャンに行ったりしておりましてちょっと多忙だったんですが、受験のモチベーションがやっぱり上がりますよね。頑張りたいと思います。

 この作品は大学入試の練習を兼ねております。より多くの方から批評をいただき、実力を向上させたいと思っております。どんな些細なものでも構いませんのでぜひ感想を書いていってくださると幸いです。

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